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ラップスタア敗者復活に思うこと

今回のラップスタア誕生、面白いですね。

土曜日夜、必ず22時には家に帰ってきて、妻と二人でテレビの前を陣取るのがもはやルーティンとなってきました。

昨日はちょうど4th Stage最終回でしたね。

Fuji TaitoとSkaaiの二人の楽曲は圧巻で、二人とも甲乙付け難い素晴らしい内容。私も自分が審査員なら(自分の趣味で)Fuji Taitoにつけてしまいますが、Skaaiが勝っても全然文句がない、それぐらい競ったバトルだったと思います。

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が、敗者復活がCyber Ruiになったのは違和感しかありませんでした。
とても良い楽曲とバックステージの映像の後だったので余計に違和感が。

採点基準に「伸びしろ」を入れることの違和感


僕が今回のラップスタアを観ていて、当初から採点に対して気に入らなかった点が一つ。それは「将来こうなりそう」「こんな風に売れていく姿が見える」みたいなコメントをしている審査員が非常に多かったことです。

最終的に感覚がモノを言うエンタメ業界でこうした基準は間違っていないのかもしれないです。そもそもが「ラップスタア誕生」という将来のスター発掘番組なので、将来的にポテンシャルのある人を探そうという意味では、これでいいのか…。

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いや、良くないでしょ!!!

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コンペティションなんだから、各ステージのパフォーマンスで評価すべきで、「売れそう/売れなさそう」的なこと言いだしたらただの出来レース、やらせ番組じゃないか、と。


そもそも、「将来どうなるか」というのは今この瞬間、実は誰にもわからないんじゃないですか?
将来予測の裏には必ず仮説があるわけで。今のトレンドがこうだから、将来こういうのが流行ってこういう人が売れる、とか。実はそんなものは結果論でしかない。R指定がこんな売れ方をするのを、彼がシーンに出てきた2008-2009年時点で明確に描けていた人いますかね?いたとして、満場一致でしたか?絶対そんなことはないはずです。そんなんわかるなら、審査員は全員今すぐ裏方に回って新人発掘し続けたらいい。
実は、みんな今をみて、都合よく将来を予想しているだけなんですよ。今の延長線上に未来があると仮定して。

もう一つあるのは(審査員個人の)過去の経験です。こういう人が売れてったからこういう人が売れるはず、とか。自分の若かった時と似ているから、きっとこの子もこういう風に売れるはず、とか。性別や生い立ちが一緒だから、頑張ってほしい、とか。いわゆる「アンコンシャス・バイアス」ですよね。アンコンシャスバイアスは全否定されるものではないですが、やはり他人を評価するときは意識的に排除しないといけない。


わかりやすい例えが、企業の採用面接です。昨今の採用面接では「過去/現在の実績とパフォーマンスだけ」評価基準にします。実際に過去何を成し遂げたか、何ができるのかだけを評価対象にして、それ以外の評価基準は徹底的に排除します。仮説を基にした将来予想ではなく、「ファクトを見よ」ということです。

なので、採用面接で「こんな状況に陥った時にあなたはどうしますか?」みたいな仮定での質問をするのは原則御法度です。あるいは、「10年後どうなっていたいですか?」みたいな将来に関する質問も最近の面接ではしません。

そんなことより過去・現在に何をやったか、何ができるかを具体的に確認すべき、というわけです。それが一番確かな評価基準だからです。

ハッキリ言って、10年後に世の中で何が流行っているかなんて、誰にもわからない。空想上のシチュエーションを語らせたところで本当に実行できるかなんて語っている本人にすら分らないですよ。だからこそ、過去と現在の実力だけをみるようにします。人を評価するときは未来ではなくて過去を見る、というのがポイントです。

今回のラップスタアに関して言えば、「この先売れそう」「伸びしろのありそう」「始めてから1年でこの成長曲線なら将来こうなる」みたいなのは評価基準はハッキリ言ってセンスがないです。

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もちろん、売れる売れないは最終的にはマーケットが決めることです。ラップがうまくても売れない人は沢山いるし、ラップがうまくなくても、キャラクターやわかりやすさで売れることだってある。それぐらいは僕にもわかる。

ただ、今回はあくまで若者が参加するコンペティション。「将来売れる・売れない」まで判断に入れなくていいじゃないですか?だったら、コンペにする意味がない。言い方が不適切かもしれませんが、そうなってしまうとほとんどやらせ・出来レースですよね。
そんなんするぐらいなら、シンプルにその時良いラップをした方・良い楽曲を作った方を勝者にすればいい。そっちの方が観てる側も乗れます。

短期的に見て、Cyber Ruiという新しいスターが生まれたら業界としては盛り上がるかもしれません。ただ、透明性があまりにも欠ける組織は絶対長期的に繁栄できないのではと思います。

参加者だって、そんな組織・業界に人生をベットできないですよね…僕がSkaai君なら、日本語ラップシーン自体にリスクを感じます。ここで勝負しても、業界自体がこんなに歪んでいたら、不確実性が大きすぎて勝負したくない。さっさとアメリカ或いはアジアの別のマーケット行くか、大学への研究だったり、ビジネスの世界で勝負することを選びます。ただでさえ彼の場合、別の世界でも普通に戦えるんですから…好きだけで続けるのは限界がある。才能のある人に魅力的な業界にしていかないと、いい人が逃げて行ってしまう。

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というわけで、4th Stageで評価するなら誰が見てもSkaai一択です。
(個人的にはTokyo Galに復活してほしかったのは言うまでもなし)

どちらも低調な内容で消去法的な決着だったEastaとCyber Rui。ドローでもいいのでは?とまで言わせたSkaai。もし対戦形式じゃなくて順位付けなら、Eastaすら落ちてSkaaiは残っていますよね。

そういう意味でもやっぱり審査員にSEEDAとAnarchyは居てほしかったなぁ、、、あの二人はすごいフェアだったし、とてもピュアな評価をしていたので…

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