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Fight The Power プロテスト・ソング-闘いの音楽

はじめに

ロシアによるウクライナへの「侵略」戦争開始から1年以上経ったが、激化の一途をたどり終結の予兆すら見いだせない。どころか世界中至る所で戦火の導火線に火がつきそうである。
わが国でもそういった状況を理由に防衛費の拡大が正当化され、社会保障費は切り捨てられる。
まったくもって不平等な分配が行われ、貧富の差は拡大し、少年少女は罪の意識もないまま金のために犯罪を犯す。
政治家を暗殺しようとする者が立て続けにあらわれ、便利なはずのインターネットやSNSが団結すべき民衆を分断する。

この荒れ果てた荒野が2023年なのか?

だのにポップ・ミュージックは何をしているだ。
世の不条理に、権力者たちの横暴に「NO!」を突き付けるのがポップ・ミュージックの使命ではないのか。
虐げられ切り捨てられる弱き者たちに寄り添い、民衆が声をあげる力をくれるのがポップ・ミュージックではないのかい。

アメリカが戦争するとすぐ文句を言うくせに今回はさほどの活動もせず、Spotifyに喧嘩売ってたミスター・ヤングさんよ。サザンマン以外もあんたの相手はもうしてくれないぜ。

ここでは斜に構えて皮肉めいた事を言ったり、「What's Going On」だの「The Answer Is Browin' In The Wind」だの甘っちょろい戯言など言わねえ「怒り」のプロテスト・ソングたちを紹介。

メジャーなミュージシャンでありつつ、あまり取り上げられない曲でまとめたつもりです。

画像は該当曲収録のアルバム。

怒っているので口調が荒い事をお許しください。


セレクション

Edwin Starr / War(1970)

「What's Going On」は反戦歌で社会的な曲なので、「モータウンのカラーにそぐわない」としてリリースを渋ったけど押し切って発売したマーヴィン・ゲイすごい!はあ?それより以前にこんな過激な反戦歌をモータウン(ゴーディ)がリリースしてんだよ。

-「戦争!なんかいいことあるのか?何一つないね!」


Rage Against The Machine / Bulls On Parade(1996)


「バンド活動は社会変革の手段に過ぎない」と言い切るこいつらは9.11の後のアメリカのイラク侵攻時に全曲放送禁止になったという過激で有名なグループ。ライヴのオープナーでもある本曲は武力でもって民衆を脅かす為政者を糾弾する。とは言え、ギターのトム・モレロはチェ・ゲバラがそうであったように、いいとこのエリート出身であることは忘れてはいけない。
これだけシリアスなバンドだが、日本では「ナゲット割って父ちゃん」とか「パン、パン、夜食のパン」等名空耳の宝庫でもある。

-「奴らはポケットを薬莢で膨らませてファミリーを包囲する」


Gil Scott-Heron / Revolution Will Not Televised(1971)


詩人、ギル・スコット-ヘロンのまだ若さ溢れるフライング・ダッチマンからの1枚。インターネットの発達により所謂「アラブの春」はテレビ中継されたけど、それを裏で操っていたのは誰だ?真実は常に密室で行われるのだ。

-「革命はテレビ放送されない。革命はお前が運転席に座って起こすものだ」


Clash / The Call Up(1980)

永遠のパンク・ヒーロー、レベル・アイコンのクラッシュ。溢れるアイデアをそのままぶち込んだ3枚組「Sandinista!」より。レゲエ風というかなんと言うかよくわからないが実にこのバンドらしい曲。ジョー・ストラマーは理想と現実の間で揺れ動く弱き等身大のヒーローだ。

-「招集に応じるかはお前次第だ。育てられたとおりに生きるべきではない」


John Legend & The Roots / I Can't Write Left Handed(2010)


全編に渡りアフリカン・アメリカンの闘いの曲をカヴァーしたアルバム「Wake Up!」より。オリジナルはビル・ウィザーズ。ベトナム戦争で右肩を負傷した青年の歌。歌詞は当時のニュー・ソウルらしく「怒り」というよりは悲しみややるせなさを綴っている内容だが、本カヴァーでは淡々とした前半から、後半のギター・ソロが行き場のない怒りを爆発させる。ブルース・スプリングスティーン「Born In The USA」、カーティス・メイフィールド「Back To The World」等のポピュラー音楽だけでなく、「フォレスト・ガンプ」「タクシー・ドライヴァー」などの映画で、ベトナム帰還兵の問題を扱った作品は枚挙に暇がない。こういった社会背景の下でパールマンは「ケースワークは死んだ」論文を発表している。ここ、社会福祉士の国試に出ます。


Wilco / War On War(2002)


アルバム自体は前年に完成していながら、レーベルとのトラブルでリリースが翌年になったことで9.11と関連付けられてしまうアルバム「Yankee Hotel Foxtrot」より。ジム・オルークらしいループの軽快なサウンドにのせて歌われるのは終わらない戦争。

-「お前は負けないといけない。死に様を学ばないといけない。生き続けたいと思うのなら」


Archie Shepp / Attica Blues(1972)


1971年のアッティカ刑務所における、劣悪な環境の改善を求めて起こった暴動を題材とした作品。うねるジャズ・ファンクの上をヒステリックなヴォーカルがマグマのような怒りを放出する。


Special AKA / War Crime(1984)


スペシャルズから分裂したグループの当時らしいオリエンタルなサウンドによる権力者への抵抗。「Nelson Mandela」が有名だが同アルバム「InThe Studio」より、中近東的なメロディの1曲。

-「数字が変わったところで、行われていることが戦争犯罪であることに変わりない」


Antibalas / Who Is This America Dem Speak Of Today?(2004)

2000年代は世界各地から、フェラ・クティのアフロ・ビートを受け継ぐグループが続々と現れた。NYの大所帯バンドの本作はかなりフェラ・クティ色が強く、ヴォーカルまでフェラのピジン(ブロークン・イングリッシュ)風なので、内容はよくわからないが多人種グループで、「Immigrant」という言葉がコーラスされたりタイトルから察するに、一部の白人によって動かされる「アメリカ」という国家に対する挑発と思われる。


Style Council / Internatiolists(1985) 


怒れるモッド、ポール・ウェラーが、労働者階級を切り捨てる政策を続けるサッチャーへ宣戦布告したアルバム「Our Favorite Shop」より。「(Walls Come) Tumbling Down」も最高。ただ見た目こ洒落た格好で気取ってた当時のウェラーの本意がどこまでワーキング・クラスの人たちに届いていたのかは不明。

-「自由とは最も尊いものだろ。立ち上がって宣言しろよ、お前がインターナショナリストだってことを」


Max Roach / All Africa(1961)


奴隷解放宣言100周年のために制作したというアルバム「We Insist!」より。100年経っても変わらない差別への怒りと、マーティ・ルーサー・キングJrのような指導者たちへの希望が入り混じる。アルバム通して聴く作品ではあるがこの1曲をピック・アップしたのはパーカスとチャントが絡み合う一番アフロ色が強いから。そう、個人的な好みです。


System Of A Down / B.Y.O.B.(2005)


アルメニア系アメリカ人によるバンドのアルバム「Mezmerize」より。スラッシュ・パートとオリエンタル・パートを行き来する反戦歌は「Bring Your Own Bomb」の意。

-「いつも貧しい奴らを戦地に送って、どうして大統領自ら戦争を戦わないんだよ?」


Charles Mingus / Fables Of Faubus(1961)


怒れるミンガス。1957年、リトル・ロックでのフォーバス知事のアフリカン・アメリカンの学生への差別を痛烈に批判した1曲。その過激さ故に一度はヴォーカル抜きのヴァージョンが発表され、後にキャンディドからオリジナル・ヴァージョンとして世に放たれた。


Pogues / Streets Of Sorrow/Birmingham Six(1988)


テリー・ウッズが切々と歌う前半から一転、当時イングランドでIRAによる爆破テロが頻発していた事に絡むアイルランド人の不当逮捕を激しく糾弾する。

-「出世のために正義を切り売りする警察と司法官どもめ。お前らが地獄で腐っていくときには裁く者が裁かれる者になるんだぜ」


Fela Kuti / Kalakuta Show(1976)

アンティバラスを入れたので本家は入れないでおこうと思ったけどやはり締めにはこの闘士は不可欠だろう。「ITT」「Coffin For Head Of State」「Gentleman」「He Miss Road」「Ikoyi Blindness」「Expensive Shit」「Zombie」等々そのディスコグラフィの大半を占める戦いの記録。警察によって自身のシュラインである「カラクタ」が襲撃されたことを作品とした本作は怒りと、権力の横暴に決して屈しないという魂が宿る。


Sun Ra Amd His Outer Aerksra/Nu Clear War(1982)

ボーナス・トラックとして本作を。
ポップ・グループで知られるYレコードよりリリース。この土星人だか火星人だかについては迂闊に語るとマニアからすぐにツッコまれそうなのだが本作は1979年のスリーマイル島の原発事故への怒りを爆発させている。淡々と進行する演奏をバックに繰り返されるコーレスは教会の説法のようでもあり、「マザファカー」という言葉も織り交ぜながら徐々に熱を帯びては来るのだが爆発せずに終わる。これが彼流のプロテストなのだろう。ちなみに本作は後に自身のレーベルからEPとして一部の曲をリリースしたりしているのでややこしい。


まとめ

「怒り」は負の感情。「話し合えばきっとわかりあえる」
そんな甘っちょろい戯言では世の中は代えられない。
そう、るろうにでは愛する人を守れないのだよ、抜刀斎。

でも怒りの根底には「愛」がある。
そんな不動明王や愛染明王のような曲たちを聴いて、貴方も世界平和を目指そう!

怪しい宗教よりも。極端に振れる右、左思想よりも。ポップ・ミュージックに頼ろう!そうすればあなたも私もみんな幸せ!(怪しい

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