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Art blakey and the afro- drum ensemble / the african beat とリズム探求シリーズを追いかける
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パーカッションはお好きですか?
大好きです。
今度は嘘じゃないっす。ミクスチャーロックとかドラゴンアッシュはそんなに好きじゃないです。
パーカッションの曲が好きだ。打楽器が乱舞する曲が大好きだ。いつかまとめて紹介したい。今日がその第一歩。
ブルー・ノートの、いやジャズのハートビート、アート・ブレイキー。
ナイアガラ瀑布
とも言われるそのド派手なドラミングは共演者から
「うるさすぎ」とか言われる始末。
「チュニジアの夜」でメンバーみんなカンカン叩いている映像。
「強要するなよ。パーカスやれなんて。お前と音楽やるの息苦しいよ」
とスラムダンク的な展開はなかっただろうが、ゴリには小暮君ことメガネ君、いやメガネ君こと小暮君という理解者がいたように、ブレイキーにも理解者兼共犯者のメガネ君がいてくれた。
リズム探求シリーズ
そんなブレイキーが「うるさいとか言われるからパーカスはパーカスで好きなようにやらしてもらうわ」と思ったのかどうかは知らないが、打楽器メインで制作したアルバムがある。
世に言う(言われない)
「リズム探求シリーズ」
またの名を
「リズム探求3部作」
ブレイキーを唆し、共犯者となったのはブルー・ノート創始者のメガネ君、
アルフレッド・ライオン
二人はホレス・シルヴァー・トリオ名義作(後にLPとして1520とナンバリング)にこっそりとサブーの名前を付け加え、「message from kenya」と「nothing but the soul」というパーカスのみの曲をブチ込む事に成功。(録音は1953年)
ライオンはこれに味をしめたのかケニー・バレルの、こともあろうに晴れのブルー・ノート・デビュー作(1523)にも「rhythmorama」というケニー・クラークとキャンディドのみのパーカスバトル曲を収録するという暴挙に出る。(録音は1956年)先生、バレル君がかわいそうだと思います。
ブレイキーはブレイキーでコロムビアに「drum suite」なる作品を吹き込み、こっそりとしかし、着々と実績を積み上げやがった二人が遂に1957年に「orgy in rhythm」(1554,1555)というタイトル通り「リズムの饗宴」アルバムを完成させる。
「orgy〜」は最初だけあってかなりプリミティヴなパーカス作品に。サブー・マルティネスの参加もありラテン色の強い作品になった。
その後はジャズ・メッセンジャーズとして有名な「moanin'」なんかを出しつつ、「もういっちょやったるか!」と「holiday for skins」(4004,4005)をやっちゃう。
3部作の中では一番ジャズっぽい。「mirage」なんかは80年代末の英国アシッド・ジャズ・ブームでは人気だったらしい。
この頃のアウトテイク集「drums around the corner」も後年発表している。
この辺も詳しく紹介したい。また別の機会に。これら作品は
「売れる気配すらなかった」
とライオンが語っている。当たり前だろ、1950年代に誰がパーカッションがガチャガチャ鳴ってるLPを買うんだよとツッコミを入れたくなる。
ジャズの、アフリカン・アメリカンの還る場所
プロデューサーとしても会社経営者としても完全に失格なライオンだが、社長権限でもう後にはひけねえ、もう1枚作ってしまえ!と作ってしまった。
やっちゃえ、ブルー・ノート
そして本作。
目指した先は母なる大地。マザーランド、アフリカ。
サブーを外し、ソロモン・イロリやアーマード・アブドゥル・マリク、ユセフ・ラティーフなどを補強。
カーティス・フラーをなぜかティンパニで招集するという謎采配
気分は一気にアフリカへ。
イロリのお祈り①から始まると、②でドラが鳴り響き、祭り開始告げる笛が。早くも多くのパーカスが複合的に絡まる。これが正真正銘、ほんとのポリリズム。
③は中近東的なメロディを奏でるフルートが怪しげな雰囲気を撒き散らす。
④はポリリズムの上でチャントのコールアンドレスポンス。時々ブレイキーのドラムが急にやかましく鳴り響く。
何だかご陽気な⑥に続けてラストはサム(親指)・ピアノからパーカスが唸りをあげる。
全編通して複数の打楽器によるポリリズムがとアフリカン・チャントが大迫力で迫りくる。正に
「リズムの饗宴」
まとめ
名盤揃いのブルー・ノート1500番台と4000番台の中で、ジャズでもなければ、一般受けもしないこんな作品を紛れ込ませたアート・ブレイキーとアルフレッド・ライオン。
本作に影響を受けた作品なんて聴いたこともないし、本作を聴いてドラムはじめました、なんて人も聞いたことはない。当然ジャズの名盤企画にも、ブルー・ノートの名盤企画にも出てこず、完全にイロモノ扱いを受けるリズム探求3部作。しかしながら
ジャズが、ブラック・ミュージックが、ひいてはポップ・ミュージックがどこから来たのか。どこへ還るのか。ブレイキーとライオンはよくわかっていたのである。
ワールド・ミュージック流行も、レア・グルーヴもまだ30年ぐらい先の話。
そんなことを予見していたわけではないだろが、こんな作品を50年代に作り出したと言う、それってすごいやん。
私はストレスが溜まった時にこのシリーズを聴く。するとどうだ。この原始的な響きに自身もしょせん動物だ、と不思議な活力が湧き、素っ裸で草原に駆け出したくなる。
人間疲れたときは落ち着いた自然音とか環境音を聴くと良いって言うけどそれは嘘だ。
この原始的な音こそが人間の本来の秘めたる力を本能的に呼び醒ましてくれる。
そしてテンション上がりすぎて眠れなくなって翌朝起きれない。
今度は嘘だったかも…やっぱり環境音のほうがいいです。
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