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2022 年間アルバムランキング(リイシュー編)

はじめに

ここでは2022年にリイシュー、および発掘されたアルバムで気に入ったものです。

昔から自分は新譜を熱心に追い掛ける聴き方をしてこなかった。
その理由を言葉にするのは難しいけど、萩原健太が60年代末のヒッピー、サイケ時代に、年寄り臭いルーツ・ミュージックを引っさげてシーンに現れたザ・バンドを語るときによく使う表現が腑に落ちる。

曰く
ザ・バンドは「新しい何か」より「変わらない何か」を求めていた…
と。

新しい、現在の物が一番価値があるわけじゃないぞ。
そんな時代に背を向け我が道を行く人たちのための作品。

ルール

・2022年にリイシューされた旧譜、及びこれまでオフィシャルで未発表だった所謂「発掘盤」であること

・自分がCDやヴァイナル等、フィジカルで入手したもの

・今回のリイシュー、発掘において自分が初めて聴く作品、初めて聴く曲を含むもの(これまでに聴いたことのある作品は除外)


というわけでそもそもの対象がかなり少ないです。

・順不同



Gil scott-heron and his midnight band /live 1978


ラジオオンエア用の音源のようだ。英文ライナーがギルの経歴のみなので詳細がわからない。ラジオ用ということを抜きにしても音が結構悪い。本作の2年前の名盤「it's your world」に比べシンセ系の音が増えている。その「it's your world」が生涯の1枚と言ってもいい自分にとって、ブライアン・ジャクソンとの連名のミッドナイト・バンド名義なら聴かざるを得ないのだが、いくつものライヴ盤を聴いてもやはり「it's your world」を超えるものは出てこないのう。

Shamek farrar & Norman person/live


1991年にカセットテープのみでリリースされていたというライヴ盤。「シャメク・ファラー」という名前から想像できる音そのままのスピリチュアルだったりアフロセントリックな音。「シャメク・ファラー」という名前を聴いて音を想像できる人がどれくらいいるのかは知らんけど。音質はまあこんなもんです。

Per husby septett/peacemaker


1976年のノルウェー・ジャズの自主製作盤。実に心地よいハード・バップやモーダル。ユーロ・ジャズは本国のジャズが忘れてしまった、捨ててしまった素晴らしい音を演ってくれるミュージシャンも多い。とはいえノルウェーは割と実験的なジャズが多い気はするけど。時代は違うけどブッゲ・ウェッセルトフトとかのせいかな。そういう意味では異端かも。

Seteve reid/odyssay of the oblong square


1977年の自主レーベルからの作品。スピリチュアル系作品の多いドラマーで「nova」や「rhythmatism」はソレ系のリストには必ず掲載される人。こういうスピリチュアル、フリー系の音楽はリズムがファンキーでないと聴くのがしんどいが、その点は素晴らしい。夜車を運転しながらボンヤリ聴くのがいい。そんな聴き方するのは自分だけかもしれんが。

Dennis coffey/finger lickin good


デトロイトのギタリストのウェストバウンドからのリリース作。ロック寄りでモータウンの作品にも参加しているのに「名ギタリスト」リストにはほぼ載ってこないひどい扱いを受けている。一見セクシーだがよく見ると安っぽいジャケがB級の臭いをまき散らす。

Dennis coffey trio/hair and thangs

こちらは1969年の自身名義のデビュー作。歪みまくるギターが実にロック的。世間的にはどんなジャンルで認識されているのか?少なくとも「ロック名盤」では見かけたことがないわ。こちらも品のないジャケに購買意欲を掻き立てられる人と削がれる人がいそう。

Machine/s.t.


レア・グルーヴが結構眠っていることで知られるオール・プラチナムからの1972年作。Whatnauts絡みのグループで彼らの激ブレイク「why can't people(be color too?)」のカヴァーを含む。演奏は実にイナタい。正にレア・グルーヴ。

Smoke/s.t.


スカイ・ハイ・プロダクションと並ぶ優良レーベル、アット・ホーム・プロダクションからの1976年作。時代柄やっすいディスコ、ブギーになりそうなのに、そちらには行かず軽快なファンクを聴かせてくれるのでとてもよろしい。「black smoke」表記の同アルバムあり、謎多き1枚。

Julius brockington/sophisticated funk


オルガンをブリブリ言わせている曲が好み。もっとジャズ・ファンク寄りのイメージだったけど割とロック寄りの歪んだ音が多かった。

Fatback band/let's do it again


なんだか艶めかしいジャケの1st。ニュー・ソウルやディスコなど時代の音を取り込んでビッグになっていく前のシンプルなファンク、メロウが聴ける好盤。後にビッグになったかといえばそうでもないが。

Descendants of mike and phoebe/spirit speaks


映画監督スパイク・リー(白人ではない方)の実父、ビル・リーのファミリー・グループがストラタ・イーストからリリースした1974年作。いかにもストラタ・イーストって感じ。しゅき。

Sphere/inside ourselves


ラリー・ノゼロ参加のグループのストラタからの1970年ライヴ。ノゼロのエレピが蠱惑的。後述のCJQ同様、これ系が好きじゃないと聴きとおすには根気が必要。スピリチュアル系やフリー系はとにかく理解しようと思って真面目に聴いてはいけない。BGM程度で聴いていると徐々にわかってくると思う。

Contemporary jazz quintet(CJQ)/black hole


ブルー・ノートからのリリースもあるCJQ。ケニー・コックス参加で自身のストラタから。当時は未リリース。長尺のインプロ4曲という事に加えド頭のギターとベースの絡みからブルーズ・ロック、ジャズ・ロック的展開に気持ちを折られそうになる。全体的にマイルズの「in a silent way」とかあの辺の影響を受けながらのフリーって感じ。真剣に向き合うには体力と精神力が要ります。

Donald byrd/live:cookin' with blue note at montreux


1973年のバードが悪いわけない。ミゼル(マイゼル)兄弟はもちろん、ネイサン・デイヴィス、ブラック・ジャズからのリリースでもおなじみヘンリー・フランクリンも参加。久しぶりにネイサン・デイヴィスの「if」を聴き直しました。

Charles stepney/step on step


一人多重録音で特に前半はリズム・ボックスがポコポコと鳴っている、と書けばああスライみたいなもんねと聴き始めた。「デビュー作」とかメディアは煽っていたけど曲の「素材」というかベーシックなもので、ここから足し引きをしていって「曲」になっていくものでありタイトル通り「ステップ・オン・ステップ」していくものであくまでデモ音源集。
ミックスのせいか、かなり現代的な音になっているので聴き易いし自称「音楽オタク」が絶賛しそうではあるが、安易に「宅録ポップス」みたいなジャンル分けというか、レッテルを貼られてしまうように仕上げてしまう手法はね…。今年リイシューのビートルズ「リヴォルヴァー」はじめ過去音源には必ず付き纏う話ではあるけど。本作は他人じゃなくて家族が関わっているから仕方ないのかな。

まとめ


今年も旧作リイシューがたくさんありました。以前は「リリース○○周年!」なんかのボックス物なんて高価で全部買うなんてとてもできなかったけど、サブスクのおかげでとても気軽に聴くことができる素晴らしい世の中に。ボックスは1,2回聴いてあとは保管されるのがほとんどだったので。デモ音源なんてそんな繰り返し聴かないよね、よっぽど好きなミュージシャンならともかく、結局コレクター的なものだし。
発掘音源はもうある程度掘り起こされた感がある。「名盤」と言えるほどのクオリティを持つ作品は出にくくなっている。

国内盤CDについては近年ウルトラ・ヴァイブの頑張りが目立つ。このご時世にガンガンCDリイシュー。サブスクにも積極的で、売れ残りは廉価にして再発。ライナーもほとんど日本人ライターが再発にあわせ書き下ろしている。以前他レーベルが出していたが、今は廃盤で入手が難しい作品もウルトラ・ヴァイブが再発してくれるという神対応。しっかり利益が出ているのか心配になるレベル。

ところで1,2年前にフィル・ラネリン等トライブの諸作をウルトラ・ヴァイブがCDリイシューしたが、今年何枚かをP-vineがリイシュー。もともとは2005年前後にP-vineからのリイシューだったのを近年ウルトラ・ヴァイブが発売。権利が移っているのかと思ったら短いスパンでのP-vineからの再発。何でこんなことが起こっているのか、だれかご存じの方がいれば教えてください。
そのP-viveはCDもヴァイナルも相変わらず強気の値段設定。紙ジャケとかそういうのではないんよ、求めているのは…とは思う。
それでもやはりオリ盤入手には法外な金額がかかり、CDでも聴けないものをリイシューしてくれるので偉大である。
ディスク・ユニオンもリイシュー・ワークは地味ながら変わらず仕事人っぷりを見せてくれました。個人情報流出で一時大変だったけど。


2022年雑感

今年は念願だったロードバイクを始めたので下半期から音楽を聴く時間が減少。だいぶ楽しいので2023年はリスニング時間がさらに減りそうだけどどうかな。
少し前までは「音楽最高!音楽は自分の体の・人生の一部!」とか思ってたけど、今はもっと気軽に音楽と向き合っている感じ。
以前は新譜も最低限は追いかけていたけど、今は自分の好きな音楽を自分のペースで聴けばいいやって。サブスク時代になり、それこそ無限にいろんな音楽が聴けるような環境になってきているけど時間もないし、何より「新譜聴かなきゃ!音楽好きならこれチェックしなきゃ!」みたいな強迫観念に追い回されて聴くのも疲れる。若い頃はそんなこと感じかなったけど、だんだん齢を取ってきたな。
今の音楽好きはたくさん作品を聴いて熱心にレビューしててすごいなって思います。

色々あったけど2022年も良い年でした。








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