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麻の葉Book倶楽部への参加感想

*ライター*
岡本 聡子
大学卒業後、戦略系コンサルティング会社に勤務。MBA留学後、株式会社アルクより「上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔」を上梓。得意分野はビジネス、法律、社会、中国、防災。 これまでに外国機関広報誌など執筆多数。 NPO団体「赤ちゃんとママの防災講座」代表、5歳児ママ。中国・広州に駐在帯同しているが、日本に一時退避帰国。中国の教育事情やコロナ経緯を「HanakoママWeb」に連載中。

麻の葉Book倶楽部 〜本を読んでこなくてもいいオンライン読書会〜第1回に参加して

*対象図書*
『中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)』
國分功一郎 (著)

1.思い込みを取り去ってくれた読書会
私には読書会に対する思い込みがふたつあり、社会人になってから参加を躊躇していました。
その1、「そこそこの理解でOKですよ」という参加条件でも、しっかり読んでいかないとついていけない、恥ずかしい思いをするんじゃないかということ。
その2、読書会に何を求めるかに関する問題。趣味の世界、マニアックな解釈の話、浮世離れした議論(それはそれで楽しいんだけど……)が続いて、後で「とはいうものの日常は続いていく」と現実に引き戻される感覚が嫌だったりします。

しかし、今回の読書会は上記2点の先入観を払拭するものでした。
まず、主催者が優しい(笑)。「本を読んでこなくていい読書会」ということで、レジュメが非常によく作りこまれていました。そして参加者の質問を受けながら丁寧に解説してくれたので、確実に理解が進みました。グラウンドルールを共有することで、否定や批判を恐れず、前向きなムードに支えられて全員が楽しんで議論できました。また、該当する書籍を持っていたのは参加者5人中1人だけ。まさに「読まずに参加できる」読書会です。
何のために学び、議論するのか問題については、「コロナとの生活」に活かす気満々の組み立てでした。読書会の途中から「この時間は、不安や悩みへの向き合い方を変えるためにあるのでは」という気になりました。事実、心の持ちようがすこし変わり、明るい気持ちで終えられました。

2.テーマは「中動態」
今回のテーマは、「中動態」。能動態と受動態の間。古典ギリシア語には存在したが、現在は駆逐された態。うーん難解。今回の解説や議論では、「本当はやりたいわけじゃないけど、やっちゃった(例:自粛、カツアゲにあい支払う)、他から動きを受けてやる(例:アイディアが下りてきた、ひらめいた)、始まりを所有していない(生かされている?)などが挙げられました。なぜ中動態に注目するかというと、「能動態と受動態」しかない世界はゼロサムワールドで、ある意味攻撃的、断定的。著者の「言葉が思考を規定する」という考えからすると、この世界がキリキリした雰囲気になり余裕がないのは、中動態的なありようが薄れているからでは、と私は理解しました。
欲をいえば、大学の一般教養レベルの知識があると理解しやすいかもしれません。でも、参加者全員、最初は疑問だらけでしたので、なくても大丈夫です。

3.どう日常に活かすのか
中動態への理解はここまでにして、要は、「望んだわけじゃないけどこうなっちゃった、しちゃった」という状況に対して、どう行動するか、が肝なわけです。状況は変えられないけど、行動は変えられます。今のコロナによる制限生活などがその好事例です。

主催者は「コロナでステイホーム=>行動としては、家族とけんか。甘いものを食べすぎる。ランニングする。読書会を開催する・・・」でお悩み中。この中で、本人にとってより良い、納得できる選択ができたら、いいね、という話になりました。参加者同士は「ハワイに行きたいが、コロナで渡航禁止=>密航、ハワイアンをきく、ロコモコ丼を作る、面倒なら出前を頼む!」というお題で盛り上がりました。
制限下で、もがいて、そして考え抜いて、納得かつプラスになる行動をなんとか選びたい。自分の責任ではなく、外部からの力でこういう状況になっているのだから、他人を頼って、自分を労わってもいいんじゃない?という声がきかれました。
私の場合、「コロナとは共生。自然災害みたいなもの。台風は去る。でも、また来る。ならば、できる備えをして、後は腹をくくってかまえよう」という気持ちになりました。

4.読書会後
一冊の本、共通のテーマをもって話し合うと、一気に参加者同士の距離が縮まります。初対面でも、皆さんの人生や悩みに触れられて「ずいぶん深い話ができたな~」という気持ちになりました。

難しいテーマを一応は理解し、議論したという達成感。そして、一人では絶対読み切れない本を、90分で一通り終えたというお得感。日常生活を前向きに送るための智恵を得た自信。時期が時期だけに、心が救われる読書会でした。

ZOOM読書会は初めてという方がほとんどだと思われますので、ご心配の方にアドバイスを。私も、オンライン読書会初心者です。特に読書会は、会議や講義と違って発言順が決められていないので、うまく間合いをはかれるか心配でした。私たちは普段、表情、呼吸のタイミングなど非言語的な情報をとおして、世間話をし自由な会話を行っています。確かに、オンラインだとこの点が対面の読書会よりも難しく感じました。対策としては、「お互い、リアクションを大きめに」。すぐ慣れます。

オンライン読書会自体はまだ始まったばかりです。試行錯誤もありますが、この段階から関われるというのは面白い経験です。そして、地域や移動の制限を超えて、読書や議論を楽しめるようになれれば、私たちはまたひとつ自由になれます。これは、コロナと生きる世界で私たちが自ら獲得する、新しい自由です。ままならないことも多いですが、コロナも悪いことばかりではないですね。

麻の葉Book倶楽部 〜本を読んでこなくてもいいオンライン読書会〜の
詳細と参加お申込みはPeatixから!
https://asanohabookclub.peatix.com

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