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自宅で淹れるコーヒーが一番

 私がコーヒーに目を付けたのにはいくつかきっかけがあります。ブラッド・ピット好きだったところから共演者が出ている映画も観るようになり、たまたま借りた映画「ホテルルワンダ」でルワンダで起きた虐殺のことを知り、その復興を支えた産業の一つにコーヒーがあったことも大きなきっかけの一つ。そしてもう一つに刑事時代の経験から「家族で一緒に過ごす時間が人を思いやる心を育むためにはとても大切ではないか」と思ったことがあります。

 私が取り調べを担当した人たちは年齢も千差万別でしたが共通していると感じることがありました。それは物心つくころに様々な理由で家族から大切にされたとは言い難い経験があるということです。私は当時を実際に見たわけではなく、本人たちの口から聞いたり、親族、知り合いなどから聞いた話を総合して判断しています。それでもすべての人にこれが当てはまりました。

 私たちは法治国家に暮らしているため、やったことに対して相応の受けるべきものが定められています。そして彼らはその判断をされる前段階として当時の私のような者の前にやってきたのです。がしかし、本来は当時の私のような存在の前に来るようなことを起こさないことが一番望ましいはずです。そしてそのためには「人を思いやる気持ち」があれば起こさなかったのではないかというケースはほとんどだと感じていました。

 当時の私はどうすればよいのかを考え「家族で一緒に過ごす」という一見当たり前のようなことですがこれこそがとても大切なのではないかと思うに至りました。さらに成人と未成年が同じものを飲んで話すことが効果的ではないかと思い「コーヒー」が最終的に残りました。私はもともとコーヒーを自分で淹れるという経験はほとんどなく、30歳を過ぎたところで道具を買って淹れ始めました。その頃の自分のコーヒーの味はよく覚えていません。近所に自家焙煎珈琲店を見つけてそこでコーヒー豆を買っては色々聞いていた記憶です。

 そしてそのころ小学校にも通っていなかった子どもたちと夕食後に私が淹れたコーヒーとお菓子で話をするようになりました。私は仕事がら帰宅が遅くなることは日常であり昼食はもちろん、朝食も夕食も家族そろって食べるということは一週間でもそれほどなかったように思います。正直なところ仕事の記憶の方が多く、家族と過ごした時間よりも職場の人と一緒にいる時間の方が長い生活を送っていました。

 家族とする会話の話題もあまりなく、コーヒーを淹れて飲むというのは私自身にとっても救いだったところはあるのかもしれません。

 だから今もコーヒーの淹れ方は自由でいいと思っています。「これが美味しい淹れ方だ」と言っている人もたくさんいますが私はそこにこだわりま持ちません。「どんな淹れ方をしても美味しくなるコーヒーを焙煎する」これが自分の経験から自宅でコーヒーを淹れて飲んでもらうことに大切だと思ったからです。

 淹れ方を守らなければ美味しくならないコーヒーではなく、もっと気楽に淹れてもらいたい。私にとっては「自宅でコーヒーを淹れて過ごす」ということがとても価値があるのです。だから焙煎に力を入れ、いまはコーヒー豆販売だけをしています。

 道具も同じものを長く愛用しています。

 お湯を注ぐドリップポットは初めて買ったホーローのものが今もあります。ドリッパーと呼ばれるものは消耗品なのですが現在自宅で使っているものは7年以上使用しています。かなりヘタってきていますが洗ったり磨いたりしながら使い続けています。

 仕事としてコーヒーに携わっているため新しく器具を購入することもありますが10年以上愛用している器具は少なくありません。子どもたちが大きくなったときに「お父さんまだあれ使ってる。あれ私がまだ幼稚園くらいの時から使ってるよね」と言ってくれたら嬉しいと思い、まだまだ長く使い続けるつもりでいます。

 私は現在コーヒー豆を販売したりコーヒーの焙煎を教えたりすることを仕事としています。だから新しいことも取り入れるし、技術も磨き続けていき
これからコーヒーを淹れる方や焙煎を仕事にする方にそれを伝えていきたいと思っています。仕事である以上事業の継続や家族の生活も考えます。しかしなによりコーヒー豆を買ってくれたり焙煎を学びに来てくれた人たち自身の笑顔のことを考えることが大切です。その方々が笑顔になり幸せになってくれると私たちの生活が成り立っていくのですから。

 そしてこれこそ望んでいた世界だと今思います。人の笑顔のためにがんばって、それが自分に返ってくる。コーヒーはなくても生きていけるものなので嗜好品と呼ばれています。しかしあることで心が豊かになると信じています。目の前のことに取り組んでいくといつかルワンダにも貢献できると信じています。

 「自宅で淹れるコーヒーが一番」

これをテーマにNAKAJIはこれからも技術を研鑽し、コーヒー豆を販売し、コーヒー豆を焙煎する技術を伝えていきます。

 

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