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水分抜きと重たい味

コーヒーの焙煎は肉を焼くことと同じで、誰でもできることであり、誰がやってもそれなりに楽しめます。でも肉を焼くのと同じく肉の部位や品質の違い、そして焼き手の技量が大きく違いを生むものでもあります。コーヒーは店主の価値観や企業の方針により表現される味は様々ですが、それだけではなくやはり技術によってその違いは間違いなくあるものなのです。今回はコーヒーの焙煎についてよく相談されたり聞いたりすることについて経験と焙煎の都度、仕上がりをチェックしている人向けを前提として書いていきます。

コーヒーの焙煎を仕事としている人たちと話していて結構よく聞く言葉があります。すぐ思いつく言葉を並べてみると「水分抜きがうまくいかない」「味が重たい」「アフター(後味)が短い」「酸が尖っている」というところでしょうか。どれも言葉は異なりますがその言葉が発せられる要因は共通しています。一番初めの「水分抜きがうまくいかない」です。

そもそもコーヒー豆は「生豆(なままめ)」と呼ばれる深いグリーン(精製方法や精製後の経時変化により色は変わります)色をしており、それを高温に温めた焙煎機の中に投入して「焙煎豆」と呼ばれる茶色(これも焙煎度合いによって濃淡があります)に仕上がります。

コーヒーの生豆が焙煎豆になる時に変わるのは色だけでありません。色以外にコーヒー豆自体に含まれる水分の量が変化します。もちろん増加するのではなく減少します。それが「水分抜きがうまくいかない」という言葉に繋がっていくのです。

この言葉を発する方も仕事としてコーヒーの焙煎をしている方たちなので焙煎機の操作方法は知っているわけですからいろいろ試行錯誤しているわけです。それでも出てくる「水分抜きがうまくいかない」なのです。

この言葉が出てこないようにする方法は相談を受ければお伝えしており、そのアドバイス通りにやってもらうことで「改善した」という声をいただいております。でも、具体的な焙煎機の操作方法を教えるだけではなく、悩んでいる人の中には改善まであと一歩というところまで来ている人もいると思います。そんな人にお伝えしたいのは水分抜きは区切りがあるものではなく焙煎中ずっと起こり続けているものであるということ。そして水分が勢いよく抜けていくタイミングがあるということ。コーヒー豆全体から万遍なく水分を飛ばしてあげること。です。

焙煎は「豆を焼く」という言葉を使う焙煎士が多いところに象徴されていると思うのですが「焼く」とイメージしている人が多いと思います。しかし実際に肉のように焼くと焦げの苦みが強く出たり、きつい酸味が出たり、またはバランスの崩れたアフターの短い味になりがちです。この「豆を焼く」という言葉を「豆を加熱乾燥させる」と捉えると少し考え方が変化するのではないでしょうか。

コーヒー豆は乾燥させることで水分が抜けていきます。そして加熱されることで褐色反応が起き、さらにカラメル反応が起きていきます。

この褐色反応(メイラード反応)が起きているときの豆の含水率がかなり重要となってきます。正確には豆の表面だけではなく内側も十分に水分を抜けていることが重要です。

この豆の「表面側」と「内側」という考え方を頭の中に入れると豆全体に熱を行きわたらせ水分を均等に近いペースで抜いていくことができるようになります。さらに火力のコントロールだけではなくダンパー操作をすることでそれがよりやりやすくなります。

ダンパーを閉じた状態で加熱した時の豆の変化、ダンパーを開けた状態で加熱した時の豆の変化を念頭に置いて操作をしていくとメイラード反応時の味の構成に大きく効果を奏していきます。

このように豆を加熱乾燥させていくというイメージで焙煎を進めていくと水分抜きが比較的うまく進んでいき、カラメル反応のときも厚みのある味わいを形成することが可能になっていきます。一度試してみてください。

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