「どう言えば相手を傷付けずに断れるか 6年生向け」Rev.0 

「どう言えば相手を傷付けずに断れるか 6年生向け」Rev.0 
                          作者:中島 征一郎

「もう、また忘れたの!?帰って来たらすぐ出しなさい、って言ってるじゃない!!」

A:主人公「主張、共感、同調」
B:主人公の友達、おっとりしている「共感」
C:クラスのボス的存在、Aの幼馴染、「主張、同調」
D:Cの自称子分、Aを嫌っている、お調子者「共感、同調」

「Aくん!今日も帰ったら一緒にやろうよ!」

授業終わってからも今日のゲームについて考えていたら、Bが笑顔で話しかけていきた。

「え、あ、うん。」

Bの陽気な声に苦しい気持ちになって、視線をそらして机の上の教科書を片付けながら、とりあえず返事をした。
オレが勧めたオンラインゲームにBもハマってくれたのは、嬉しい。
でも、今日は一緒にはやれない。

「Bみたいな下手なヤツと一緒にやるわけないだろ、Aは今日オレ達とやるんだからさ、ね、Cくん。」

ヘラヘラしてDが割って入ってきた。そばにいたCが面倒くさそうに黙ったままうなずいた。Dは口が悪くてムカつくんだけど、でも今日は否定する事ができない。だって、CとDと一緒にやる予定だから。

元々はオレとCで始めて、後からDが入って、それ以来3人でずっとやっている。
このゲームは3人1チームで、他の人達とプレイする事もあるけれど、本気でやる時にはこの3人でやっている。

「あ、でも下手なヤツは下手同士でやった方がいいんじゃないの?なあ、A?」
「うっせーよ、それならD、お前の方が他のヤツとやった方がいいんじゃないの?」
「なに!限定スキン持ってないやつが偉そうに言うなよな!」
「あのな、いくら課金してレアなスキン持ってたって、上手くはなれないんだぜ?なあ、D?」

やっぱりDの事は嫌いだ。なんでかオレに突っかかってくるし、下手ではないんだけど口ばっかりだし、ムカつく事を言わなければ悪いヤツではないのだけど。

「ねー!二人で楽しそうに話してないで、Aくん今日どうするのさ!」

いや、楽しく話してないし。思わずDと一緒にBの事を見てしまった。
Bはほっぺたを膨らませて、腰に手を当てて、まるでマンガのキャラのように怒っているアピールをしている。
こういった空気を読まないところがBらしいのだけど、わかっていてもたまにビックリする時がある。

さて、なんて言ってこの場を逃げきればいいのか。

「どうする?オレはどっちでもいいぜ?」

Cのいつもより低い声にドキッとした。Cがイライラしている時のクセだ。
やばい、逃げ道がなくなってきた。

「先生が来た!」

誰かの声で、教室がざわつきながら誰もが自分の席へと向かっていった。
助かった。普段は嫌な言葉だけど、今日は救われた。

でも、救われてはいない。
顔を上げてクラスを見渡すと、笑顔のBとヘラヘラしたDと無言で睨んでいるようなCとが見えた。
慌てて視線を机に向けた。
やばい、どうしよう。

よし、まずは状況を整理しよう。
今日はCとガチなプレイを楽しむつもりだったから、Bの誘いは断りたい。
でも、親友のBの誘いは、受けたくは無いけど傷付けずに断る方法はないだろうか。
あれだけ楽しみにしているBの気持ちを大事にしたいけど、でも、今日はガチなプレイを楽しみたい。

・・・ダメだ、どうにもならない。
これはもう、素直に言うしかないか。

「あのさ、今日の事だけど。」

昼休み、Bに話しかけた。

「うん、あれから練習したからもっと上手くなってるし、楽しみだね!」

う、Bの笑顔がまぶし過ぎる。
でも、ここではっきりと伝えなければダメだ。

「あのさ、今日はC達とゲームやりたいんだよね。本当はBとやりたいんだけど、Bはまだ下手だし、本気で勝ちに行くにはBは足手まといになるから、C達とやらないとダメなんだよ。」
「言い方!」

え?Bの事を考えながら本当の事を言ったんだけど、何が悪かったのかな?

「えーと、C達と先に約束していたから、Bとは明日一緒にやる・・・で、どう?」
「うん!いいよ!」

恐る恐るBの顔を見ると、変わらずに笑顔だった。

「先約束なら仕方ないし、Aくんが本気でやりたいのも知ってるからね。明日が楽しみだよ!」

そうか、Bはオレの事をわかってくれてたんだ。
それに、先約束は理由になるのか。
自分で勝手に悩んでいたけど、もっとBの事を信じなくちゃいけないな。

ちょうどCが見えたので、今日よろしくな、と声をかけた。

「え?もうEに声かけたから、また今度な。」

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