スポーツにおける減速を考える(急激な速度の変化は、多くの場合、最小限の距離と時間で発生し、敵の動作や境界線などの外的刺激への反応である)
競技と減速
様々な競技において、停止あるいは方向転換に先行して急速な減速がみられます。
このような急激な速度の変化は、多くの場合、最小限の距離と時間で発生し、敵の動作や境界線などの外的刺激への反応であることが多く、これまでの研究では、ランニング中の減速に関する運動学と運動力学が数多く存在します。
多くの競技においては、身体の速度を素早く落とす活動(減速)が動作の成功にとってきわめて重要になります。
アジリティとは
アジリティとは一般に、バランスを失うことなく、筋力、パワー、神経筋系のコーディネーションを複合的に用いて、素早く身体を方向転換させる能力と定義されています。
素早い動作は、選手の動作の中でわずかな割合(約11%)を占めるに過ぎませんが、平均すると、1人の選手が1試合において約50回の方向転換を行っています。
素早い動作は試合の重要局面で発生することが多く、得失点の明暗を分けます。
サッカーにおいてアジリティは非常に重要であり、様々な動作を素早く生み出す能力が、サッカーのパフォーマンスに影響を及ぼすことが知られています。
Little&Williamsの調査によると、この能力は加速と最高スピードにも関連しているものの、それらは決定的な係数としては弱く、したがってアジリティに関しては、アジリティは独立したテストを行なうべきとされています。
傷害リスクにもかかわる減速
減速は、即座のあるいは段階的な停止や、方向転換(水平、側方、垂直)の前に身体速度を低下させることが要求される競技において行われ、減速時に身体に加わる力はきわめて大きなものになり、その力が吸収されるべき時間が短い場合は特に大きいものになります。
したがって傷害リスクを低下させるためだけではなく、バランスを制御し、蓄積された弾性エネルギーをその後の動作へと効率よく移行するためにも、適切なテクニックが欠かせません。
減速に使用される筋群
減速に使用される主な筋群は大腿四頭筋と腓腹筋になります。
しかし、加速局面の短縮性筋活動とは異なり、この2つの筋群は慣性による推進力が吸収され、分散されるようになり伸張性筋活動を通じて働きます。
推進力によって伸張された脚は、身体に対して作用する純粋な前方後方の力と結びついて、潜在的な危険な体勢となりますが、接地前に発生する大きな伸張性の力の吸収に役立ます(負の仕事=伸張性の力×COMの下方変位)。
減速局面中、身体の運動エネルギー(KE=1/2mv2)は減少します(推進力をもたらす短縮性局面の前に、下方へ向かう(負の)速度が0に近づくため)。
KEは失われるのではなく、弾性エネルギーへと移行し、直ちにその後の運動に利用されるか(方向転換、ジャンプなど)、完全な停止の場合は熱や音として消散します。
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