【小説】「アズーロの消失」第3話
その夜やってきたのは、しかしその医師ではなかった。そもそも医者ですらなかった。落ち着かない様子で腰掛ける両親を背にロミは窓から通りを窺っていたのだが、細い路地の向こうに現れたのは奇妙な出で立ちの女だった。
釣りランタンを持っているが顔の上半分はヴェールで覆われて全く見えない。ふわりとした幅広のズボンを履いていた。女でズボンを履くのはメルヴァでは小さな子供ぐらいである。何より眼を惹くのは肩に乗せている大きな鳥だ。鉤のように曲がった嘴をしている。ロミは家族の方を振り返った。