【書評】『風を待つ日の』野田かおり歌集
肌寒き春の空気を逃しつつレターパックに課題を詰める
コロナ禍の定時制高校。休校が続いている。
教員をしている主体が生徒たちの家へ課題を郵送するところだろう。
春の空気を逃す、という言い回しに、主体自身のやるせなさが滲むようだ。
この歌集は、コロナ禍の教員生活を明確に詠っている。
ほのほのと運ばれてゆく福祉科の春の準備のマネキン一体
ゆゆゆゆとひとの集まる職場ゆゑ在宅勤務選びて帰る
午後九時をはじまりとして円になり部員四名ラケットを振る
教員生活が描かれる歌を挙げたが