【書評】『初恋』染野太朗歌集
悲しみはひかりのやうに降りをれど会いたし夏を生きるあなたに
この歌集を最初に読んでからしばらくが経った。
そう、しばらくが経ったのだが、この歌集に溢れる恋心と夏のイメージが去らない。
むしろ、光は反射し、重なり、より強くなる。
帯の表に挙げられたこの歌に、そのエッセンスは凝縮されている。
「たったひとつの(過ぎた)恋」(いや、主体の中では完全には過ぎていない)、そのワンテーマが一冊を貫く。潔い歌集だと思う。
きみがまたその人を言ふとりかへしのつかないほどのやさしい声で