【書評】『cineres』真中朋久歌集
来し方も行く末もあるはおそろしく泡だちて寄せる水を見てゐつ
過去も未来もあることが怖いという。
主体は何に怯えているのだろうか。
過去がたくさんあるということは、歳を重ねて責任など重いものを
抱えて生きていくということにもなるだろう。
未来はどうか。行く末があることは明るいことのように思える。
でも、この先どうなるかなどわからない。
わからないのが恐ろしいのかもしれない。
泡立って寄せる水は、海かもしれないし、もっと小さな流れかもしれない。
ただそれをじっと見つめている主体