【書評】『やさしいぴあの』嶋田さくらこ歌集
瑞々しく、時にちょっと意地悪。
無敵のようであり、とても弱々しい瞬間もある。
そんな相聞歌で、この歌集は軽やかに幕を開ける。
くちびるに押し込むチョコの一粒がくれる甘さで生き延びている
日曜のまひるあなたを思うとき洗濯ものもたためなくなる
暗闇でわたしに触れた人の眼に卵を孵す静けさがある
かきつばたすみれやまふじれんげそう 夏が始まる前に触れたい
チョコの一粒は恋の味である。
甘くてビターで小さく愛らしい。
その一粒を口に押し込み、その甘さで今日を生き延びるという。