【書評】『黒い光 二〇一五年パリ同時多発テロ事件・その後』松本実穂歌集
歌集の副題が示すとおり、本書は当時リヨンに在住していた著者が、
事件の渦中のフランス、そしてその後を見つめ、思索し、歌として形にした歌集である。
歌集と書いたが、本書は歌と共にモノクロ写真が多数掲載されている。
どちらが主でどちらが従というものではなく、相互に影響し合い読者を強く惹きこむ。
二つの表現方法を持つ著者ならではの、個性的な歌集だと思う。
自爆テロはいまkamikazeと呼ばれをり若く死にゆくことのみ似たる
劇場の惨状伝ふる中継の声に重なるイマジンの歌
シナゴ