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歌集評・一首評・その他書評

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歌集評や同人誌などの一首評、小説の書評です。
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2023年8月の記事一覧

【書評】『クララとお日さま』カズオ・イシグロ(小説)

(作品の内容を含みますので、少しでもネタバレしたくない方は ぜひ作品を読んでからお越しください) 裕福な家の子供は、AFと呼ばれるアンドロイドの親友を持つ近未来の社会。 AFのクララは店頭でジョジーという女の子に気に入られ、 ジョジー一家と共に暮らすことになる。 「向上処置」のせいで体調の悪いジョジーがもし亡くなったら、 クララをその代わりにしようと心の底で考えるジョジーの母親。 観察眼に優れたクララの目線で語られる物語である。 カズオ・イシグロの作品はいつも衝撃的で示唆

【書評】『一号線を北上せよ』沢木耕太郎(紀行文)

いきなり話が逸れるのだけれど、先日、沢木耕太郎さんの講演を聴く機会があった。 姫路で行われた「第25回司馬遼太郎メモリアル・デー」における講演で、タイトルは「紀行の方法―司馬遼太郎を中心として」というもの。 司馬遼太郎さんの『街道をゆく』を引き合いに出しつつの、ユーモア溢れるお話だった。 その中で、司馬遼太郎の紀行文のすごいところは、「ただ、今、旅をしている」ということだけで書くのではなく、 歴史の知識など、4つぐらいの層を縦横無尽に行き来しながら文章を書かれているところ、と