【書評】『雪麻呂』小島ゆかり歌集
人、人でないもの、動物、昆虫。
沢山の登場人物がゆきかう歌集だが、騒がしいわけではない。
優しく、はかなく、温かい。
全編を通して、わかりやすいシンプルな表現の歌集。
その分、読者の胸にすっと入ってきて、
気づけば様々な感情を手渡されている。
ひかり濃くたまるまひるの薔薇園にひとつひとつの棘生きてをり
白鳥の池に雪ふりゆきのなかにやはらかく立つ天然の頸
三羽ゐて二羽きて五羽きて一羽発ちみな飛び立てる鳩のなりゆき
生くる蟻が死にたる蟻を通過する夏のいのちの無限数列
お