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歌集評・一首評・その他書評

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歌集評や同人誌などの一首評、小説の書評です。
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2022年6月の記事一覧

【書評】『イマジナシオン』toron*歌集

あちらこちらの評ですでに書かれていることと思うが、 一首の立ち姿が美しく完成されている歌が多く、 メモしていたらメモだらけになって、困っている。楽しい困惑。 真っ白いジグソーパズル落ちており ではなくすべて花びらだった 果てしない夜をきれいに閉じてゆく銀のファスナーとして終電 その喉に青いビー玉ひと粒を隠して瓶はきっと少年 その街のLoftの袋を提げたとき灯りのひとつになれた気がした 作者が「何かを何かに見立てる」とき、想像もしなかった情景が鮮やかに立ち上がる。 1

【書評】『音楽』岡野大嗣歌集

歌集全体を通して、明るさや楽しさを醸し出すのは、 辛さや怒りを醸し出すより難しい、と思う。 それをこの歌集は、鮮やかにおこなっている。 そして明るさや楽しさは、せつなさも伴ってくる。 なぜなら明るく楽しい時間は有限だとみんな知っていて、 みんな知っていることを作者は知っているから。 残念ながら次が最後の曲ですと残念をみんなで抱きしめる 持ってるしいつでも聴ける曲やのにラジオで流れるとうれしいね 大工さんたちが木陰でうなだれて大所帯バンドのジャケみたい 人はみなこころに