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エリッククラプトン

お久しぶりです。
今日もまた私の怠惰と準備不足が招いた冒険をしてきたので聞いて欲しい。

クラプトンの来日がアナウンスされた時、真っ先に父を誘った。数ヶ月も先のコンサートで、土日の公演もある。私からの誘いに父は嬉しそうだった、ぜひ行こう!なんてびっくりマークを付けていた。むかし父が観ていたクラプトンのライブ映像を私も後ろで見ていた、ワンモアカーワンモアライダーの時だから20年くらい前だ。すでにクラプトンもじいさんだったが、その時から私の根底にはクラプトンがギターを鳴かせていた。そんな彼を父と観たかったが、一般受付開始時刻の10時に電話をかけ、チケット申込のボタンを押しつづけたが、5分後には完売となってしまった。土日のチケットはすべて売れてしまったと伝えると、父は残念そうにしていた。平日A席のチケットは全然売れていないが、平日は彼も働いているのだ。平日夜のコンサートのために仕事の融通を効かせるのはなかなか体力のいることであることを私はよく知っているつもりだ。

父がダメならと音楽好きの友人に声をかける。土日だったら、、チケット2万円は高い、、高知だったら、、。平日夜のコンサートという無茶振りに付き合ってくれそうな奴はそもそもチケットに2万円は出さないらしい。そりゃそうだ。

私の予想では、A席など比較的グレードの低い席は当日まで売り切れないと思っていた。なんとなくそんな経験がいくらかあったからだ。私も仕事があるので平日は様子を見たい。ご存知の通り、即対応した方がいい仕事を放っておきながら他のことに集中できない性格なのだ。コンサートがある日に、もし暇だったら行こう。そう思っていた。あれから2ヶ月。

そういえばクラプトンもう来てるんだっけ。山手線の大きな看板に記された日付とiPhoneのホーム画面を見比べる。昨晩客先から送られてきた無茶振りお願いメールに対応しないといけないと思いながら電車に乗り、あれやこれやと考えながら会社に向かう。忙しい時、この土日が邪魔だな、と一瞬思うがお休みは好きなのでそんなのは嘘に決まってる。けれど、無茶振りお願いメールのパズルを頭の中ではすでに解き始めている。そんな中、週末はキャンプに出かけた。それはそれで色々あったのでまた後日。

そういえば週明けの月曜日、クラプトンの最終日だなぁ。キャンプ帰りの車の中で、二日酔いの頭を揺らしながら考える。Twitterをひらけば、認証マークが消えただのなんだのに混じって、クラプトンのライブレポが流れている。無茶振りお願いメールの渦中にいるため、もう無理なんだと思っているためそれを読むと、インストから始まるだとか熟練の演奏が素晴らしいとかそんなようなことが書いてある。まぁそうなんだろうなと思いながらそっと閉じて、このままクラプトンが死んじゃったら一生後悔するんだろうなぁと思いながらいつの間にか寝てしまっていた。

18時32分。
無茶振りお願いメールに対する華麗なスケッチ案をメールで送信した。
上司との確認であと1日かかるかと見積もっていたが、しつこくチェックバックを繰り返しとりあえずこれで送って反応を見ようということになった!
開演は19時。
ローチケ、チケットぴあのクラプトンのページを見てみる。
予定枚数終了。
あー。
ウドー音楽事務所のページをみてみる。
当日券を若干数現地で販売します!17時から!
電話で聞くか?でもたぶんこういう場合、現地じゃないとわかりませんみたいな対応になる気がする。
18時35分。
とりあえず退勤ボタンを押してPCをシャットダウンする。勤怠のログのために必要不可欠なのだ。
トイレに行って後輩と二言三言話す。まぁ行っても無理だろうなと諦めかけている。
明日は自分で企画した部内のジョギング会があるのでその際使う予定のランステーションの下見に行く。登録とか要るんですか?レンタルの料金とか、、受付でお姉さんに聞きたいことを聞いてサッと出る。
18時41分。
武道館とうちの会社は近い。二駅の距離だ。
でもその路線の駅までが長い!
歩いても歩いてもつかない。遠い!なんなんだ、遠い!
18時51分、電車にのる。
その二駅の間に、さっき下見した内容をteamsに投稿する。後輩が素早く反応してくれる、「ありがとうございます!神すぎる笑」
神はこの世にクラプトンしかおらんねん。
18時56分九段下駅。
エスカレーターを駆け上る。開演は19時。チケットは持っていない。

地上に出て私は絶望した。
「チケット一枚ゆずってください」の画用紙を持ったおじさんが立っていたのだ。
あーこりゃ無理だ、当日券は売り切れたのだ、、。

それでも私は脚を止めない。最悪でも会場まで行ったけどチケットは無かったのエピソードを作りたい。この目で完売の文字を目の当たりにしたい。
ずんずんと坂を登り、ダフ屋のチケット余ってませんかぁの呼び声を尻目に門をくぐり、武道館にたどり着いた。

グッズ販売の掛け声、開演間近ですのアナウンス、入り口はこちらですの案内、写真はどうのこうのの注意喚起に溢れる中、当日券の文字をかすかに捉えた私は獲物を狩るようにそこに向かう。人だかりができている。あるのかないのかわからない当日券。でも人だかりができている!!
いろんな種類の紙チケットがちらほらとやり取りされている。どこに並べばいいのかわからないめちゃくちゃ不親切だ!だが一万円札を2枚あのお兄さんに渡すと紙のチケットがもらえるようだ。どれが列なんだ!お金ならあります!ポケットから一万円札を2枚取り出し、一枚ください!と大きい声を出すと、2階席ですがよろしいですか?と言うのでなんでもいいのでください!と言って千円札のお釣りと紙チケットをゲット。買えた!会える!やった!

入り口こちらですと案内されながらマジ呪文みたいな席番号が頭に入らないまま数々の関門にチケットをヒラヒラ見せながら会場にイン、したいのだが武道館は何せ回廊部分をめちゃくちゃ歩かせる!スーツ姿の若者に逐一チケットを見せてあちらですこちらですとやっている間に演奏は始まっている!あぁ最初の曲はインストだってライブレポで言ってたよね。聞こえるのに入れない、ぐるぐるぐるぐる武道館の外周を周って、やっとの事でイン!

いました。
エリッククラプトン。
超満員の武道館。
白いストラトキャスターぶらさげて落ち着いたトーンのギターを弾いていた。
呪文のような席番号が一体この広い会場のどこなのかさっぱり検討もつかないので、とりあえずその場でクラプトンを見た。
あー、いるんだなぁクラプトン。
ギター弾いてるわ。
気持ちいい音だなあ。

ずっとその場にいるわけにもいかないのは大人なのでわかるので、無理矢理でもスタッフ見つけて席を案内してもらう。思っていたよりずっと端っこの本当に端っこの端っこの末端より一個手前、みたいな席に案内されて、クラプトンの後頭部席みたいな所だったが、なんかおんなじ境遇のおじさんおばさんが次々と同じように案内されてきたので当日券用にこういうどうでもいい席を確保しておくんだなと納得してしまった。逆に無理に席を立って盛り上げようとしなくてもいい雰囲氣だったし、本当にリラックスしてみることができる席だった。

アンコール込みで1時間45分のステージ。
クラプトンの歌ってシャウトもあって意外と声も高いしもう御大だから無理せず短いくらいがちょうどいいくらいなのかも。あっという間に終わってしまった。
もうギターを弾くことが自然の成り行きが如く軽く弾くクラプトン。ピックを持とうが指で弦を撫でようが、音使いがクラプトンなんだなぁと納得。私はクラプトンが000-28EC(というアコースティックギター)を持ち出した時に、やべ、弾いてない!と思い出したように焦ってしまいました。
また、1弦と6弦間違えて覚えちゃった若手(40歳くらい?)の更に落ち着いたブルースギター、安定のリズム隊に震えつつ2人のキーボードがソロを弾きまくっていた。あのベースの人、ワンモアカーワンモアライダーの時からいるじゃん。

なんか旅人って感じの音楽でとても良かったなぁ。演奏はとにかく熟練のショーブルースって感じで何も言うことはない、こんなの当たり前じゃなさすぎる、このライブの音源そのまま欲しいしそのままギターでコピーしたい。そういう記念的な瞬間を今回いただくことができました。クラプトンはたくさんthank youと叫んでくれたけど、そのthank youも20年前と変わらなかった。職場が武道館の近くにあったから良かったし、父とは来れなかったけどフラッと来て生きているクラプトンを観れた。中学生の頃は、ジェフベックの凄さはよくわからなかった。ジミヘンドリクスも。この前なんてジェフベックのワイアードをレコードで聴いてぶったまげたし、たまたまストラトキャスターを弾いていて奇跡的にジェフベックみたいなトーンを出せた時に、え、これを常に出しているの?意図的に?って、え?って思ったりしたわけです。そんなジェフベックももう居ないわけで、クラプトンが元気に日本に来てギター弾いてお寿司食べてとかして生きていてくれるのは、今でさえそれは当たり前なのだけど、クラプトンが死んじゃったらポッカりしちゃうだろうなって帰りに吉野家しながら思ったなぁ。

前の席のひとが演奏中にも関わらずスマホいじってて眩しくて嫌だった。余程声を掛けようかと思ったけど、そのひと言でお互いにこの2時間を台無しにしてしまうことは確実なのでわたしはそういうことはしない。ちょこまかちょこまか何してるんだと思ってそのスマホの内容見たら、「コインロッカー 鍵閉めないまま」「ロッカー 鍵開けたまま放置」とか調べてんの。あんたそれ気になって集中できないなら鍵締めに行ったらー?と思いつつ、この人にはこの人なりの葛藤があるんだろうと整理をつけて、こっちはこっちでライブは楽しみました。
荷物が無事にロッカーにあったらいいね。

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