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紀行文

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何らかの形で皇室に関係がある土地巡りの記録。「皇室伝承」シリーズとの違いは、伝承ではなく近現代に皇室の方々が明確にお訪ねになった地や、直接お関わりではない地であること。
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【紀行文】輿休山勅養寺:御輿を止めて「勅使」が休養した寺(愛知県新城市)

 JR飯田線の東新町駅から北東に向かった地、愛知県新城市は矢部字矢畑に、輿休山勅養寺という曹洞宗の寺院がある。  仏教で「勅」というと、最初に思い浮かべるのはみ仏のご命令を意味する「仏勅」という言葉だが、この寺の名はそれに由来するものではない。寺号標、看板、屋根瓦――。当寺の境内では、さまざまなところで菊花の紋章がみられる。  菊花紋章といえば皇室の御紋章であるから「勅願寺」を連想するが、朝廷から指定を受けたという話も聞かない。ならばこの寺の「勅」とはいったい何に由来する

【紀行文】籰繰神社:東海三県で唯一、皇室への御守献上を許可された珍社(愛知県豊川市)

「籰繰神社」参拝記 愛知県豊川市の東上町権現に、籰繰神社というお社が鎮座している。  ここのご祭神は、特に安産の神様として知られる。安産にご利益があると謳う神社は日本全国津々浦々に存在しており、それ自体は別段珍しくもないけれども、この籰繰神社にはひとつ特筆すべきことがある。  それは、皇室に安産御守の御札を奉献することができるということだ。 「皇室御守奉献の歴史」  籰繰神社が皇室に御札献上を始めたのは、江戸時代末期の安政年間の頃とされているが、資料が残るのは大正十四