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Christmas full of hugs

自分に子どもが産まれたら、クリスマスツリーを買おうと決めていた。ずっと憧れていた。素敵なツリーと、家族全員で過ごす完璧なクリスマス。

0歳、1歳……
ツリーを倒してしまったり、小物を口にいれるのではないかと心配して、購入をあきらめる。

2歳……
家族全員でコロナに感染して、気がつけば年が明けていた。

3歳……
念願のツリーを迎え入れた!

はりきって11月末から飾り付け。息子は喜んで、毎日ツリーに明かりを灯す。

我が家のクリスマスパーティーは12月23日の土曜日にして、サンタさんからのプレゼントは24日にフライング配達されることになった。

料理の手伝いが大好きな息子のために、ケーキは既製品のスポンジに生クリームといちご、チョコペンでデコレーションをすることに。大喜びする顔が目に浮かぶ。

プレゼントも早めに用意して、準備は万端。何もかも、完璧だった。


けれども、息子が熱を出した。


高熱が4~5日続くというアデノウィルスと診断される。いやだいやだマンは解熱剤を飲んでくれず、39℃の高熱のまま23日を迎えた。

39℃あっても「パーティーしたい」と訴えてくるので、家族3人だけのパーティーを開催することに……

楽しみにしていたケーキ作りでは、とても楽しそうな息子が見れた。けれども、食欲がないようで「食べない」とそっぽを向く。

夜になるにつれて高熱が体力を奪い、しんどさから抱っこを求めてきた。今日だけで「ママがいい」を100回は聞いた気がする。こうなると子煩悩の夫も「ママじゃなきゃ」と、あきらめモードに入ってしまう。この日のために買っておいた赤ワインを一人でぐびぐび始める始末だ。

私が抱っこしているのに「ママがいい」「ママが良かった」とうなされるように繰り返す。大きくなった息子の体を抱える腕はとっくに感覚を失っていた。

ケーキを作ったあとは、部屋の明かりを消して、ろうそくを灯して、みんなでふーっとする予定だった。

クリスマスツリーの前で、トナカイのカチューシャをつけて、おどけて写真を撮るはずだった。

深夜にやってくるはずのサンタさんとトナカイさんのために、ビスケットと牛乳を机の上に用意して、それからお布団に入るはずだった。

「だった」がたくさん積もっていく。
完璧なクリスマスの予定が、息子の熱でなくなっていく気がして。そして、そんなことを考える自分に悲しくなった。

そんな時に、腕の中で息子がつぶやいた。


「ママ、大好きだよ」


熱で火照った小さな身体。りんごのように染まったほっぺ。こんなにも愛しい存在が、弱ったときに求めるのは、この私なんだと思い知らされる。

「ママも、ママも大好きだよ」


私の言葉を聞いて、熱でうるんだ目をすうっと細め、息子は眠りについた。

完璧なクリスマスなんていらなかったのだ。息子がいて、抱きしめて、眠りにつければそれで良かったのだ。

隣の部屋からは、夫が食器を片付ける音が聞こえてくる。「ママがいい」と拒絶されたのに、自分にできることをしてくれる優しい夫だ(赤ワインは飲み干されたけど。)

この出来事を、急いで言葉にしなきゃと、眠る息子を抱きしめた形のまま、スマホでnoteを書いている。

熱が出てしまったけれど、これも家族で過ごす、ひとつのクリスマスの形。

明日は熱が下がっていますように。サンタさんからのプレゼントに大喜びする姿が見れますように。

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