NHKスペシャル「新型コロナウイルス 瀬戸際の攻防」を見て

昨日のNHKスペシャルは見応えがありました。どうやらすべての発端は、多少乱暴にまとめると「シンガポールや韓国と違って、過去に感染症対策で学習するチャンスが日本にはなかったこと」と結論づけられそうです。

(番組の内容は下記のページにわかりやすくまとめられていました)

番組によれば、シンガポール、韓国、台湾などでは、SARSや新型インフルエンザなど過去の経験からPCR検査などの体制が整えられていたことが読み取れます。押谷教授は「日本に住むすべての人を一斉にPCRをかけないといけないということになるので、それは到底できないこと」と言葉を選んで話していましたが、ポイントはすべての人を一斉に検査できる能力があるなしではなく、その発言の背後にはそれらの国より日本の体制が劣っている事実を把握していたということがあったのではないかと推測しました。SARS流行の際にWHOで対策現場にいたという押谷教授には、日本の現状はおそらく痛いほどわかっていたはずなのではないかと。

とにかく所与の検査リソースが限られている中で、できる戦略としてはクラスター追跡を組み合わせた封じ込めしかなかったのでしょう。第1波はそれでなんとか凌げましたが、海外帰国組にもたらされた第2波では、クラスター対策班のリソースの方が限界に来ていました。それで最後の手段として、接触率を極端に下げる自粛のお願いしかなく、ある意味万策尽きた最後の賭けということがよくわかりました。

これまで「8割接触削減」はあまりに極端で経済を破壊する提言だと思っていましたが、医療崩壊を防ぐためだけでなく、経済的にも痛みを長く続かせないためにも、可能な限り一時的かつ一度の施策で済ませたい意図があるということもわかりました。集団免疫が自然に獲得できるか、ワクチン開発による獲得(どのみち時間がかかる)のいずれにしろ長期戦になるのですから、あとはどれだけマシにコントロールできるか、というレベルの戦術しか残されていないということを理解しました。

本当に瀬戸際の攻防なのだと感じました。

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