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成人発達段階の違いが生み出す多様性とは?-価値観の違いと発達段階の違い-

1.成人発達段階の違いが生み出す多様性とは?

◇その2 価値観の違いと発達段階の違い
前回の記事では、複雑性の高まりによる現代社会の根本的なジレンマとして「複雑性のど真ん中であればあるほど、協働は欠かせないものになるにも関わらず、複雑性のど真ん中であればあるほど、社会的複雑性が高くなっていき協働の難易度が高まり続けることになる」ということについてご紹介しました。

「多様性を認めることは鍛錬が必要」ともお伝えしましたが、同様に「価値観の違い」を認めることも、とても大変なことです。
例えば、とある家庭で「仕事よりも家庭を優先」、「家庭よりも仕事を優先」という意見の対立があったとします。
これらは価値観の違いに起因するものであり、折り合わせることはかなり難しい話題です。
しかし、それぞれの立場を明瞭に表明できれば何が分かり合えないのかという点を明確にすることができます。
「私たちは分かり合えないよね」ということを分かったうえで、お互いを尊重し、分かり合えるまで対話を続けるのか、もしくは、分かり合えないけれどお互いを尊重してそれぞれの道を行くのか、という選択ができるでしょう。
とはいえ、言うほど簡単なことではありません。
それでも「分かり合えないことが分かった」ということで自分の中で折り合いをつけることができます。

対して「発達段階の違い」の場合はさらに厄介です。
なぜなら発達段階の違いとは、認知や知覚などの内的システムの違いであり、現実認識が全く異なってしまうからです。
よく言われる例えとしては、高層ビルの低層階と高層階のそれぞれの景色の違いです。注意すべきは、高い方が良くて、低い方が悪いという優劣の話ではなく、単に見ている景色が全く違うということを示しているという点です。

発達段階の前期/後期の違いについて言うと、「後期の発達段階はは前期の段階を経ている」ことに可能性があり、また同時に制約もあります。
MBTIなどのタイプ論においては、自分のタイプとその他のタイプの特徴や差異を知ることで「自分とは違うタイプの人のことは全然わからない」という認識に立ちやすく、多様性を尊重することに繋がりやすくなります。
それに対して発達段階は辿ってきた道を己の過去の経験として知っている分、後期の発達段階である人からは、前期の段階の人が未熟であると見えやすくなります。
これらの発達段階の差は、実際にはコミュニケーション上の問題として現れやすくなります。
具体的には、相手より前期の発達段階である人は、自分よりも後期の発達段階の相手の言っていることが意味不明で分からない、という体験になるからです。「違いを違いとして認める」以前にそもそも話がわからない、もしくは、わかった気になって誤解するということが起こります。
逆に、相手より後期の発達段階である人は、自分よりも前期の発達段階にいる相手に対して、「この人は私が言っていることがわからないだろうな」という事が透けて見えてしまい、コミュニケーションを取ること自体を諦めやすくなります。

以上のことから、価値観の違いは「分かり合えない」ことに対して合意することが出来るところまで到達できる可能性があるのに対して、発達段階の違いは「通じ合える余地(土壌)がない」、「話し合える余地(土壌)がない」という感覚から為す術なく、分裂や、場合によっては対立に至りやすくなることである、と言えると考えています。
次で本テーマを締めくくると共に、発達段階の違いによって引き起こされることについて皆さんと考えてみたいと思います。
    
                   
あなたが直面している「違い」は何によって生み出されていますか?

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