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役割と発達のシャドーとは?

連続でお届けしてきたインテグラル・ヨーロピアン・カンファレンス(IEC)キム・バルタとテリー・オフェロンによる「Harnessing the power oforganizational shadow(組織のシャドーの力を活用する)」について、最終回のレポートです。

キムとケリーは、彼らが実際にコンサルタントとして携わった、ある病院における組織開発事例を紹介してくれました。

それは、以前は優秀な病院として表彰を受けるレベルだったのですが、最近、表彰されなくなったため、CEOが組織改革に乗り出したという案件でした。

コンサルチームが行ったインタビューの中で、CEOのリーダーシップ、特に周囲の意見を取り入れ、対話を重視する姿勢は、高く評価されていました。

一方で、病院の人事部長に対して批判的な声が多く、人事部長が役割を超えた関与をして、組織を崩壊させている。
一刻も早く解雇するべきだという意見が噴出したのです。

ただ、コンサルチームが行った地域住民に対するインタビューでは、この人事部長を悪くいう人は一人もいなかったのです。
むしろ愛されている存在でした。
しかし、病院内で徹底的に嫌われていた彼女は、最終的に解雇されてしまったのでした。

「さて、このエピソードの中で、いくつのシャドーが見つかるでしょうか?」

キムとテリーの問いかけに、カンファレンス参加者からは様々な意見が出ましたが、ここで二人が着目したのは、「役割のシャドー」と「発達のシャドー」についてでした。

シャドーは、個人や集団に対してだけではなく、その役割に対しても発生する、というのが一つ目のポイントです。

この事例では、「人事部長」という役割に対して、周囲が様々なシャドーを持っていたと彼らは指摘します。

そして、CEOが本来やるべきだったのは、人事部長の役割定義を明確にして、それを組織全体に周知することでした。
しかし、CEOがそれを個人の能力と混同してしまったために、組織は必要のない後退を強いられたという洞察でした。

では、なぜこのCEOが役割のシャドーを見つけることができなかったのか。
これが、2点目の「発達のシャドー」に関係します。
キムとテリーは、CEOの発達段階に着目していました。

優秀な経営者であるCEOは、オレンジ(合理主義的段階)からグリーン(多元主義的段階)に移行したタイミングだったのではないかと彼らは見ていました。

そして、グリーン的な見方を組織に投影したことで、ある意味、合理主義的な考え方である、「役割定義の価値」を十分に扱うことができなかったのではないかと、分析したのです。

彼らによれば、ティール以前の発達段階では、発達段階ごとの微細な違いを捉えることができないこと、そして、自分が到達している発達段階以外の価値観を排除してしまう傾向があり、それが「発達のシャドー」として現れるということでした。

二人は実際に、このCEOに、自分たちの洞察をフィードバックしました。
するとCEOは、まず、役割定義を明確にすることに取り組み、そして解雇した人事部長を呼び戻し、彼女とともに再び組織変革を進めていったということでした。

このCEOのフィードバックに対するオープンさが素晴らしいと思うとともに、シャドーを扱うことのパワフルさを感じさせてくれた事例でした。

キーノートの最後に彼らは、「組織のシャドーチャート」を紹介してくれました。
それは、1.個人、2.個人の役割、3.集団、4.集団の役割、そして、5.発達という5つの因子を掛け合わせ、計25個のシャドーがマトリクスで整理されているものでした。

詳細の説明は割愛しますが、個人や組織の課題に取り組む上で、どんなシャドーがあるのかというアウェアネスを高めることが、より効果的な介入を可能にするのだと感じました。

                                
あらゆるシャドーを取り払った、本当の組織はどのようなものですか?    


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