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タマちゃん (与太話)
早川いくを氏の著書『へんないきもの』のご紹介です(^^)
小学生の頃に読んでいました。
子供の頃は単純に「色んな面白い生き物がいるな~」
という感じで読んでいましたが、大人になって読むと面白さが10倍くらいになります。
様々な生き物を通して人間社会を皮肉るんですが、
そのさじ加減が絶妙なんですよね~笑
今回はアゴヒゲアザラシの「タマちゃん」に関する文章を引用します。
時間の流れが早いですが、今の子供達に「タマちゃん」って言っても伝わらないんでしょうね…。
やがて、このアザラシに注目する人たちの間から、
「タマちゃんの事を想う会」「タマちゃんを見守る会」
という2つの奇妙な団体が生まれる。
アザラシのことを想ったり見守ったりするのに何故徒党を組む必要があるのかという素朴な疑問をはさむ余地もあらばこそ、アザラシの新しい移住先、横浜西区の帷子川でこの2つの会は激突することになる。
「タマちゃんを想う会」はアザラシを海へ帰そうとダイバーを潜らせ、網を張って捕獲を試みるも、水中が専門のアザラシには対抗できるはずもなく、大がかりな作戦で捕まったのはコイ1匹であった。
「想う会」はその後も「食べ物に困らないように」とエサのホタテをばらまくなどして、抗議する「タマちゃんを見守る会」と川辺で衝突、警官まで出動する騒ぎとなる。
県の河川管理者が川にゴミを捨てないように注意すると、
ホタテをゴミとは何事かとホタテ業者が抗議に割って入り、騒ぎに華を添えた。
このアザラシの捕獲の顛末については、後に神奈川県知事まで出てきて遺憾の意を表明した。
![](https://assets.st-note.com/img/1691731072966-xyjpcUYIl0.jpg?width=800)
人々はかわいいものが大好きである。
だが大好きなあまり、かわいいものを見るとエゴイズムが丸出しになってしまうというあたりが、我が国独特の性質ともいえるかもしれない。
泣きや癒しを人々は腹の減った養殖鯉のごとく欲している。
いくら食っても食い足らぬ。
そんなところへ思いもかけず現れた1匹の愛らしいアザラシは、まさにツボど真ん中の絶好球、天からの贈り物だったかもしれない。
だが我が国にはヒト科の中でも際立った特徴がもう一つある。
その驚くべき飽きっぽさと冷めやすさだ。
~中略~
ところで多くの人はかのアザラシを覚えているのだろうか。
道行く人に訊いてみよう。
すいません。今タマちゃんはどうなってるか知ってますか?
「ああ、タマちゃん?最近聞かないけど・・・
海に帰ったか、もう死んじゃったんじゃないですか?」
追記 2004年5月にアザラシは姿を消し、その後は「消息不明」である。
『へんないきもの』というタイトルには
ヒト科ヒト属のホモ・サピエンスも含まれているのでしょう。
皮肉が利いた文章が面白い上に、
世界中の不思議な生き物たちを知ることもできるお得な一冊です(^^)
2023年8月11日(金) 西川智成
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