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混迷?苦悩?あらゆる障害を乗り越えた傑作!

かれこれ20年以上聴き続けているGRAPEVINEですが、今回はその中でも異彩を放つアルバム「Circulator」について、自分の考察などを中心に書いていきたいと思います。


「Circulator」は2001年に発売された4枚目のアルバムで、リーダーでベースの西原誠がジストニアの症状を患い、アルバム製作に殆ど携われませんでした。

その為、レコーディングの大半はプロデューサーの根岸孝旨が担当し、ツアーのサポートメンバーとして金戸覚(現在はほぼ正式なメンバー)が参加。…と、GRAPEVINEにとっては危機的状況な時期でもありました。

そんな最中に製作されたアルバムは、前作までもそうですが、最新作から遡ってもかなり異質な存在のアルバムとなっています。

それでも自分はこのアルバムがかなり好きで聴いていました。恐らく、その理由として自分は負のエネルギーに満ちた作品を好きになる傾向にあるからです。


分かりやすい作品で言えば、Mr.Childrenの「深海」とTHE YELLOW MONKEYの「8」がトップクラスに好きでした。

迷いや悩みがありながらも前に進まなくてはいけないジレンマ。それを包み隠さず楽曲のなかで表現されている所に、トップアーティストでも人間らしい部分があるんだなと共感を覚えることが出来たのが、大きな理由でもあります。

例えば…

・深海に収録されている「シーラカンス」の歌詞で『メガやビットの海を泳いでたとしてもだ それが何だって言うのか 何の意味も何の価値もないさ』ではメガヒットを敢えて違う表現にしていると仮定すれば、頂点に昇り詰めても何もなかったと読み取れます。

・8に収録されている「メロメ」の歌詞で『猛毒の花びらの上で行きづまる天道虫は 背中の星剥がしながら街を出たのに』では自身のバンド、もしくは吉井本人を天道虫に比喩する事で、現状の苦悩を表現している様に思えます。(再結成後のシングル天道虫が見事なアンサーソングになっていて伏線回収していました)


では、このCirculatorでの混迷や苦悩とは一体どの部分から推察することが出来るのか。結果的にはほとんどの楽曲でそう読み取れるフレーズが存在します(もちろん個人的な解釈ですが…)。

中でも特にリーダー不在を嘆き、バンドの将来を不安視していると思われる楽曲はラストから1曲前の『B.D.S』です。

元々はTwitterにてこの楽曲は実はこんな意味が隠されているのではないか?と言う内容を見てハッとされられました。確かに歌詞はドライブや車の内容であるが、表現としては何か釈然としないな…とモヤモヤする様な詞である事は昔から感じていました。

タイトルは「ブレーキ・ダウン・シンドローム」の略で、意味を調べれば「機械や乗り物などの破損」と出てきます。しかし、その他にも意味があり、自分はそちらの意味(訳)の方がしっくり来ました。それは「交渉などの決裂や挫折」もその言葉には意味するそうです。

そうした意味で歌詞を仕上げているとして…


※「B.D.S」1番の歌詞



こちらが1番の歌詞になりますが、ここでは最初に提示した意味(乗り物の破損)で通じると思います。しかし、2番からは後から提示した「交渉などの決裂」について歌っていると考えるのが自然になってきます。

※「B.D.S」2番~ラストまでの歌詞

Aメロの冒頭から『「旅です」とか大袈裟に言え 生まれかわれるかもよ』と言っているのは推察すると、病気での休止をそう捉えて俺たちは待っていると伝えていると考える事も出来ます。

Bメロでも『根っからの逃避行』と言い最後には『おわかれだ』と捨て台詞の様な言い回しもしています。サビの最後の『ブレーキダウンはかんべんな』に込められている意味はきっと【脱退なんてするなよ!】と忠告している様でもあります。

ギターソロ後のラスサビでも『迷える脳は手に余る 今ブレーキダウンはノーなんだ 見ろよ疾走中』と歌い終えています。田中氏の脳内では【バンドを継続していきたい今、リーダーが脱退したらどうなるのか…もう分からん…】と、この歌詞の言い回しで嘆き、不安を吐露していると思います。

そしてこのタイトルを「ブレーキ・ダウン」にせず、敢えて「B.D.S」にした理由として、ジストニアの治療法に『D.B.S = Deep brain stimulation (脳深部刺激療法)』が存在するそうです。きっとこの曲、いや、GRAPEVINEのバンドサウンドがリーダーにとっての最高の治療法になって欲しいと願いを込めたのかも知れません。

この当時の若さでここまで深い意味を持たせたならば田中氏の作詞能力はもうこの頃から完成していた様に思います。…そう言えば、リーダーの最後のステージでのアンコールがこの「B.D.S」だったそうなので、この考察が全て当たっていたのならば涙腺崩壊ものですよね…。


さて、本当はもっと解説したい所ですが長くなるのであと2曲自分の考察を交えていきたいと思います。どちらもシングル曲で人気のある「風待ち」と「Our Song」です。

まず「Our Song」もタイトルからして『GRAPEVINE(私達)の歌』と直訳して考えると苦悩の状態が良く分かってきます。

この曲はサビで溢れる想いが爆発しています。実際にメロディーもシャウトしてとにかく届けたいと言わんばかりな歌い方だと思います(実際に作詞・作曲は田中作)。

1番では「ぼくらは ねぇ 何が見たくて 全てを欲しがってきたんだっけ」と【どうしてバンドをやっているの?トップアーティストになりたかったんじゃないの?】と自問自答している風に聞こえます。

そしてラスサビ直前の「君を失くすくらいなら 死んだほうがマシ」と消えそうな声で歌ってます。きっと【リーダーのいないバンドなんて解散した方がいいのかも…】と今までに見たことのない弱音を吐いている、そこまで思い詰めてしまっている心境だったのかなと思ってしまいます。

しかし、そんな想いもありつつ希望も「風待ち」でしっかりと残しています。

それはもう歌い出しから『季節はずれの雨が好きな あなたに悪いけど 晴れた日の空の下で わりとうまくやれてる』と【3人でも何とかやっていけてるよ】と優しく語りかけている感じですよね。

この解釈でいくと2番のサビはもうそのままな感じで『あれ?いつの間にこんなに疲れたのかなあ』で始まり『たまにはあなたの顔 見れないもんかなあ』で締めくくると【やっぱりリーダーが居ないと俺達はダメだなあ…】と頼れる存在を失くして喪失感に駆られている様子が浮かんできます。

そして名フレーズ『髪を少し短くした』は【決心した】の比喩表現と思っています。ここからGRAPEVINEは新しい道を進むぞ!と決意表明しているみたいに聞こえます。

なので、個人的見解としてタイトルの「風待ち」は恐らく【ヒットするのを待っている】と解釈すれば自然とタイトルと歌詞の繋がりが出来てくる気がしてきます。決意も新たに、後はヒット曲を出すだけだ!と。

そしてその直後にくる曲が「lamb」って所がまた憎いですよね。亀メロの王道と田中氏は絶賛した曲をヒット(風)待ちの後に挑戦状の様に叩きつけるこの潔さ。何か吹っ切れている様な雰囲気も感じれます。そして「Our Song」へと繋がり、それでもこの状態で本当にいいのか?と自分達に改めて問いかけている様な流れもあり、この「風待ち」~「Our Song」の曲順は偶然か必然か、と考えさせられてしまいましたね。


最後になりますが、アルバムタイトルも「Circulator = 循環器」の中でoの文字をInfinity(∞)に変換している所から、このバンド、このメンバーでずっとやっていく!の意思表示だとファンとしては受け取るべきかなと思いました。

この不安定な時期に様々な困難を乗り越え、リーダー不在でもGRAPEVINEを継続してきたからこそ、2021年にリリースされた「新しい果実」まで走ってこれたのだと思います。

見事、『循環』し続けたバンドGRAPEVINE。これからもずっと、いちファンとして楽しませてもらいたいと思います。文章力のない長文でとても読みにくかったでしょうけど、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

※次回は大大大好きな「Another sky」も考察したいと思いますので、反応が良ければ励みなりますので宜しくお願いします。

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