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RightTouchのLLM活用のこれまでとこれから

はじめに

株式会社RightTouchテックリードの齋藤です。

ChatGPTのリリースから約1年半が経過し、LLMはモデル・アプリケーションの両面で大きな進化を遂げてきました。弊社でも、プロダクトのさまざまな部分でLLMの活用を進めてきました。
本記事では、RightTouchにおけるこれまでのLLM活用について振り返るとともに、我々がLLMをどのように用いて、何を目指しているかについてご紹介します。

まず初めに、RightTouchについて簡単にご紹介します。
RightTouchでは、「あらゆる人を負の体験から解放することで、人と企業の可能性を引き出す」というミッションで、下記3つのカスタマーサポート向けプロダクトを提供しています。

  • RightSupport by KARTE: webサイト上でのユーザー行動からユーザーのつまずきを検出し、最適なFAQや問い合わせチャネルへ誘導する

  • RightConnect by KARTE: webサイト経由で企業に電話をかけるユーザーの行動情報や事前ヒアリング情報を電話オペレータにリアルタイムに提示し、高品質・高効率な電話応対を実現する

  • KARTE Talk: webサイト上での有人チャットを行う

RightTouchが提供するWebサポートプラットフォーム

どのプロダクトも、お客様のWebサイトの拡張・強化を軸に、Web上/Web経由での最適なカスタマーサポートの実現を目指しています。
これらのプロダクトは、個々で独立して使うことも可能ですが、Web行動データやナレッジデータなどに関しては、共通のデータ基盤の上に成り立っています。

RightTouchにおけるこれまでのLLM活用

RightTouchでは、これまで試行錯誤しつつ、LLMを活用した機能をいくつかリリースしてきました。

一例として、RightSupport by KARTEでは、サポートシナリオの自動生成機能を開発しました。これは、ユーザーのWeb行動から蓄積された統計情報をもとに、特定のページでユーザーに提示すべきFAQ選択肢や、そこに誘導するためのヒアリング項目をLLMを用いて自動生成するものです。

サポートシナリオの自動生成

また、KARTE Talkでは、有人チャットのオペレータ向けに、問い合わせ内容に合ったFAQの自動サジェスト機能や、これを利用した返信文の自動生成機能をリリースしました。
どちらの機能も、我々が持つデータアセットに対してLLMを適用し、業務効率化を実現するソリューションとなっています


これまでのLLM活用の実例

これらの機能は、主に既存プロダクトの利用課題の分析や営業観点でのニーズ分析を行った上で、LLMの得意領域と交差する領域を探索的に見つけ出す形で開発してきました。結果として、リリース後は反響を頂くことができ、狙っていたプロダクト課題の解決にも貢献できました。
開発を通じて、LLMの得手不得手や、我々のプロダクトドメインとの相性に関して知見をためられたことも非常に大きな収穫でした。

これからのLLM活用

これからも、短期的にLLMでユーザー課題を解きにいく活動は続けていきますが、中長期的には、我々の目指すビジョンの中でLLMがどう位置付けられるか?が重要であると考えています。

代表の長崎の記事でも述べられていますが、RightTouchはカスタマーサポート領域におけるコンパウンドスタートアップとして、業界のインフラとなることを目指しています。
コンパウンドにプロダクトを展開していくにあたり、大きな軸の一つがデータです。あるデータを抑えると、そのデータを活用できる別のワークフローに進出でき、そこからまた新たなデータが抑えられ…という過程の繰り返しにより、プロダクトは拡大していきます。

しかし、現状、カスタマーサポートにおけるデータは、業界全体で見ても、整理・活用されているケースは多いとは言えません。
RightTouchが得意とするweb領域は、比較的構造化されたデータが得られやすい領域ではありますが、それでも大半のデータは眠ったままです。web領域以外でも、コールセンターには、テキストデータを中心に未活用の構造化・非構造化データは大量に存在します。

こういったデータにRightTouchがアプローチしていくにあたり、LLMはデータ取得/加工/活用の各プロセスにおいて強力な武器となります。

1.データの取得・加工
カスタマーサポートにおいて、データの活用が進みづらい一因が、取得・加工されたデータの質そのものにあるケースも多いと我々は考えています。
例えば、エンドユーザーが問い合わせを行う際、自分の困りごとをうまく言語化できなければ、結果として得られる問い合わせデータの質は下がってしまいます。また、オペレータの応対においても、個々のオペレータが独自のポリシーで回答をしている場合や、ログ残しの基準にばらつきがある場合、その後のデータ分析はしづらくなります。
LLMを用いれば、エンドユーザーに対する困りごとの特定の補助や、オペレータに対する同一基準でのログ残し補助ができます。これらは、主にUXや生産性向上の文脈で語られることが多いですが、うまく使えば、取得・加工されるデータの質の向上にも大きく寄与できます。

2.データの活用
大量に溜まったデータを業務に還元するのにもLLMは強力な武器となります。
例えばLLMによるembeddingを利用すると、行動データ/問い合わせデータといった曖昧性のあるデータを、精度良く検索することができます。RAG等を組み込んだ検索により、オペレータやコンタクトセンターの管理者が、必要なナレッジや関連情報を瞬時に取得することができ、状況に応じた適切な応対の実現や、データの知見を生かした施策やナレッジの作成の自動化が行えます。

1と2は、車の両輪のようなものです。データの活用に目が行きがちですが、きちんと意味付けられ、整理されたデータがなければ、その活用は難しくなります。RightTouchとしては、両者をバランス意識していくことが重要だと考えています。
まずはお客様の課題に合わせて、2でデータの直接的な利用価値を増やし、結果としてお客様との共創が増えて1が進み、それにより2の新しいチャンスが生まれる、という循環を回していければ理想です。

RightTouchが目指すLLM活用

ただ、当然LLMには、ハルシネーションのリスク、高いコストや厳しいレートリミットといった問題もあり、それだけでカバーできる範囲はまだ十分広くはありません。
これらをクリアするためには、LLM・人・ルールをうまく組み合わせるUXの設計、適切なユースケース設定、キャッシュやデータストアの設計など、アプリケーションづくりの総力戦が必要となります。
例えば、カスタマーサポート向けSaaSにおいてエンドユーザー向けに提供する機能では、正確性の観点から、LLMの生成結果をそのまま提示することは難しく、一定バリデーション等を挟み、型を絞った形でのアウトプットが求められるケースが多くなります。オペレータ向けの機能であっても、「LLMの出力に対してどこで人のチェックを挟むか?」をしっかり検討しなければ、業務効率化と蓄積されるデータの質の担保の両立は難しくなります。
また、そもそもデータをセキュアに保存するインフラ基盤がなければ、良いプロダクトを作ったとしても結局お客様には使っていただけません。

データを軸としたプロダクト展開において、LLMは強力な武器ではありますが、UXを考え抜くこと、良いアプリ設計をすることなど、プロダクトづくりの基礎に徹底的にこだわるスタンスは変わらず重視していきます。

さいごに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
RightTouchでのLLM活用、エンジニアリングやプロダクトづくりに興味を持っていただけたら嬉しいです。
もし、より詳細が気になる方がいらっしゃれば、ぜひカジュアルにお話ししましょう!


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