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M&Aとは?

長年、M&Aに携わってきた身として、M&Aについて書いてみました。
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今回記事の目的

  • M&Aは専門性が高く携わったことがない方にとっては非常に複雑でイメージがつきずらいため、少しでもM&Aに対するイメージを持ってもらう。

  • 紙面などを見ると華やかな部分しか見えないことも多く、M&Aのリスクやベネフィットなど理解を少しでも促進したい。

  • 会社を成長させていく上でM&A自身が絶対的な解ではなく、買い手が、はまれば大きな成長の一手になる可能性もある一方で、非常にリスクの高いものであるため、正しい理解を得た上で、実行することが望ましい。

  • 全ての企業が行うアクション(何かを開発する、何か売る、どこかの会社を買収するなど)にはリスクが全くないということはありえないが、どのようなリスクが発生するのかを事前に知っておいて、そのリスクに対するアクションや心構えをもっておくだけでは、出来る限りリスクの発生や発生した場合の影響をミニマイズできる。そのための理解の一助になれば、ありがたい。

  • 本を読めば分かるレベルの基本的なこともあるが、この点、幅広い層に理解を促したいとの目的なので、この点をご了承お願いしたい。

なぜM&Aなのか?

過去高度経済成長期において作れば、売れるという状況が当たり前だったが、日本マーケットの成熟化により、作っても売れない、イノベーションが起きないということが頻発してきた。そういった閉塞感を打開すべく日本企業のM&Aという選択肢が徐々に増えていっている状況。

会社として、M&Aを行う目的としては主に以下のベネフィットを得ることが目的としている。まとめると、経営資源を早期に獲得できることにより企業のアクションスピードのアップ、新たなイノベーションの創出にある。

  • 譲渡企業の経営資源により短時間かつ低リスクで新規事業を開始できる

  • 効率良く既存事業を強化・拡大できる

  • ハイレベルな人材やノウハウを獲得できる

M&A自身が必ず事業をグロースするための手段で最善の一手なのか?リスクはないのか?

M&Aはリスクだらけ。M&Aの成功確率は、36%( デロイトトーマツコンサルティング調べ) とのレポートあり。今までアドバイザーや事業会社でM&Aに携わってきた経験則では、実際は8割~9割失敗しているイメージ。

自分の経験からのラーニングは『きちんと買収対象先のリスクを把握した上で、M&Aをする、起こった場合の最悪シナリオを想定して、予め対処策を講じておく』です。

なぜM&Aはそこまで難しいのか?

紙面だけ見ると、華やかな世界ではあるが、実際は失敗している事例が多数。国内の買収でも難易度が高いのにも関わらず、海外の買収は難易度が数段階上がる。
なぜM&Aはそこまで難しいのかの要因は複数ある。

高値で買収してしてしまう。

  • 通常、死にかけている企業やキャッシュに余裕のない企業は優良アセットを売る必要性がない。どうしても人間の心理として完璧なものを買収したいという気持ちになりがちであるが、そのようなアセットを買収しようとすると高値の買収になりやすい。

  • 大企業あるあるだが、実績を残すための手段としてM&Aが位置付けられてことがある(あくまで結果的にであるが)これは出資者と経営者が異なることから生まれるエージェンシー問題の典型例であり、お金に糸目をつけずに買収するインセンティブが働く。

予想したシナジー効果が得らなかった。

  • M&Aは、プレミアムを上乗せして買収するのが通常。なぜプレミアムを乗せてでも買収したいのかというと、買収した事に伴い得られるシナジー効果を期待しているためである。買収前には、このシナジー効果を勘案・試算して買収を実行するのが通常。

  • しかしながら買収してみたところ、予想したどおりのシナジー効果を得られずにプレミアムを乗せて買収した分の価値を得られなかった場合、買収額が毀損することになる。

買収後の統合(PMI)の失敗

  • 買収後の統合にあたってはプロジェクトチームを組成してカルチャー統合、事業統合、バックオフィス統合などを行う。特に難しいのが、カルチャー統合であり、買収は結婚に似ている。新婚時はなかなか考え方の違いがあり喧嘩が絶えないケースも少なくないかと思う。

  • PMIが失敗することに足の引っ張り合いが起こり、思った以上に統合効果が期待できないケースが多い。特に海外企業の買収では言語や文化の壁があるので顕著となる。

予期しなかったリスクの顕在化

  • M&Aの際にはデューデリジェンスが行われるが、DDはインタビュー形式かつ短期間(2~3週間)で行われるため、全てのリスクを洗い出すことが難しい。特に粉飾など、会社側が組織的に隠している場合には、DDで発見することは難しい。

  • そういったリスクが顕在化した場合には表明保証などの契約書でリスクを低減させる、エスクローの設定、アーンアウト条項設定による買収資金の分割払い等の仕組みで軽減する必要がある。

  • プロダクトのM&Aの場合には、予期しなかった事象が生じて、プロダクト自身が使えなくなる可能性もある。

顧客、従業員の離反

  • 顧客リストを獲得するためのM&Aの場合には、買収によって顧客の離反が生じる可能性

  • 人的リソースを獲得するためのM&Aの場合には、買収によって買収先企業の従業員が離反してしまう可能性があり、当初想定していたベネフィットを得れない可能性。

M&Aを成功するためには

つらつらと書いてきたが、M&Aが必ず成功するための条件はない。ただ絶対に外してはいけないポイントがいくつかあるので、それを列挙する。

  • 高値で買収しない。

  • 買い急がない。あくまでM&Aは一つの手段であり、長期的な観点で買収先を選定する。

  • M&Aはリスクが非常に高い手法であるものであると認識する。その上で最悪の事態に陥った場合のアクションプランを想定しておく。

  • PMIは非常に重要で、買収前にきとんとPMIプランを綿密に練っておく必要がある。買収するのが目的ではなく、あくまで買収後の方が大変。

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