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「羊と鋼の森」【おすすめ映画147】

2018年公開

音を出すためのハンマーの表面は、フェルトで出来ています。このフェルトは、たくさん弾き込まれることにより、弦による凹み(弦溝)が発生します。凹みの部分は大変堅く音色が安定しませんので、弦に接する面の形状に丸みを持たせるとともに、凹みを取り除き、安定した音色が出るように調整します。この作業をファイリングといいます。 しかしながら、この作業を続けていくと、フェルトの厚みが徐々に無くなり、本来の音を出すための弾力、音量が失われてしまいます。このような状態になった場合は、ハンマー交換が必要です。
出所:https://www.kawai.jp/support/service/piano/menu/seion/
沙漠の花
原民喜


 堀辰雄氏から「牧歌」といふ署名入りの美しい本を送つて頂いた。私は堀さんを遠くから敬愛するばかりで、まだ一度もお目にかかつたことはないのだが、これは荒涼としたなかに咲いてゐる花のやうにおもはれた。この小作品集を読んでゐると、ふと文体について私は考へさせられた。
 明るく静かに澄んで懐しい文体、少しは甘えてゐるやうでありながら、きびしく深いものを湛へてゐる文体、夢のやうに美しいが現実のやうにたしかな文体……私はこんな文体に憧れてゐる。だが結局、文体はそれをつくりだす心の反映でしかないのだらう。
 私には四、五人の読者があればいゝと考えてゐる。だが、はたして私自身は私の読者なのだらうか、さう思ひながら、以前書いた作品を読み返してみた。心をこめて書いたものはやはり自分を感動させることができるやうだつた。私は自分で自分に感動できる人間になりたい。リルケは最後の「悲歌」を書上げたときかう云つてゐる。
「私はかくてこの物のために生き抜いて来たのです、すべてに堪へて。すべてに。そして必要だつたのは、これだつたのです。ただしこれだけだつたのです。でも、もうそれはあるのです。あるのですアーメン」
 かういふことがいへる日が来たら、どんなにいいだらうか。私も……。
 私は私の書きたいものだけ書き上げたら早くあの世に行きたい。と、こんなことを友人に話したところ、奥野信太郎さんから電話がかかつて来た。
「死んではいけませんよ、死んでは。元気を出しなさい」
 私が自殺でもするのかと気づかはれたのだが、私についてそんなに心配して頂けたのはうれしかつた。
「私はまるでどことも知れぬ所へゆく為に、無限の孤独のなかを横切つてゐる様な気がします。私自身が沙漠であり、同時に旅人であり、駱駝なのです」と、作品を書くことのほかに何も人生から期待してゐないフローベールの手紙は私の心を鞭打つ。
 昔から、逞しい作家や偉い作家なら、ありあまるほどゐるやうだ。だが、私にとつて、心惹かれる懐しい作家はだんだん少くなつて行くやうだ。私が流転のなかで持ち歩いてゐる「マルテの手記」の余白に、近頃かう書き込んでおいた。昭和廿四年秋、私の途は既に決定されてゐるのではあるまいか。荒涼に耐へて、一すぢ懐しいものを滲じますことができれば何も望むところはなささうだ。

出所:https://www.aozora.gr.jp/cards/000293/files/4773_6668.html

キャスト
外村直樹 - 山﨑賢人
柳伸二 - 鈴木亮平
佐倉和音 - 上白石萌音
佐倉由仁 - 上白石萌歌
北川みずき - 堀内敬子
濱野絵里 - 仲里依紗
上条真人 - 城田優
南隆志 - 森永悠希
外村雅樹 - 佐野勇斗
秋野匡史 - 光石研
外村キヨ - 吉行和子
板鳥宗一郎 - 三浦友和

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