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ナカさんの寄席日記 40 圓朝座

8月11日は三遊亭圓朝の命日。今年は120回忌です。お墓は台東区谷中にある全生庵。千駄木駅から三崎坂をちょっとのぼった所です。一般の落語ファンも法要に参列出来るんですよ、普通なら。でも今年はコロナの影響で落語協会幹部中心に少人数で執り行ったそうです。去年は私も法要にも参列しておりました。奉納落語は橘家圓太郎師匠の化け物使い。法要後に扇子のお焚き上げがあります。噺家の皆さん、浴衣姿が粋で素敵でした。

今年は法要には参加できませんでしたが、午後に行われる落語会を予約してみました。鈴々舎馬桜師匠の会です。圓朝ネタをやる会で馬桜師匠は緑林門松竹という噺。お目当ては春風亭一朝師匠の鰍沢。

会場につくとコロナ対策万全で手洗い後消毒検温、間隔広く並べられた椅子。仲入りで窓開け換気。裏っ手が墓地なので蚊に刺されたら痒み止め薬もありますから、と念の入れよう。「もしこの会が終わってから発熱などした場合は必ず私に連絡してください」と馬桜師匠。噺家自身がこんなに細かな気配りをしてくださるとは驚きました。さすがベテラン師匠。もちろん予約している時点で全てのお客の連絡先は把握済みですしね。ぬかりないです。

前座で三遊亭ごはんつぶさん。圓朝の直系にあたります。が、今日は新作落語で。馬桜師匠が「新作やっていいよ!」と仰ったそう。寄席だと前座さんは新作出来ないから、こういう会で勉強させてもらうんでしょうね。

緑林門松竹は初めて聴く噺でした。たぶんあんまりやる人いないのかな。録音で有名なのは圓生と正蔵(彦六)があります。今の噺家だと林家正雀師匠とか蜃気楼龍玉師匠か。女占者に騙され手下の悪党が出てきてその先のが気になるけど、次は来年2月の会で続きをやるとのこと。本当なら講談みたいに連続で聴けたら良いんでしょうけどね。なかなかこういう笑いの無い噺は落語好きの中でも限られた愛好家にしか好まれないから難しいのかも。今まで馬桜師匠といえば寄席で「歯ンデレラ」(林家きく麿師匠の新作)くらいしか聴いたことなかったから、機会あれば圓朝ものも聴いてみたいです。

仲入りで空気の入れ替えして、一朝師匠の登場です。マクラで「鰍沢なんて40年前くらいにやったっきりですよ」とのこと。やっぱりそうですよねぇ。。一朝師匠の鰍沢ってイメージわかないもんなぁ。。いつも楽し気な江戸っ子が出てくる噺のことが多いから。どんな鰍沢が聴けるんだろう。
新助から「吉原の花魁では?」と聞かれてお熊が「はいっ!」っとフツーにこたえてたのが他の噺家さんと全然違うなーと思いました。昔の客と再会してちょっと嬉しそうでもありました。権太楼師匠とか雲助師匠とかのお熊なら凍り付くような冷たい調子で「はい。。」と、私の過去の事なんて触れないでおくれという雰囲気だし、正雀師匠のお熊も影のある女風ですし。一朝師匠のお熊は優しいし親切なおかみさんでした。卵酒作って飲ませてあげてましたけど、そのあとに大事件が起きそうな雰囲気はなかったです。こういう鰍沢も面白いですね。これから一朝師匠は鰍沢、寄席でもおやりになるかしら。そういえば先日の芝居噺の会のトークの時、林家正雀師匠が思い出話で「圓生師匠に比べると彦六師匠のお熊は優しかった」と仰っていました。一朝師匠は彦六師匠に教わったそうですので、なるほどと思いました。それにしても厳しい残暑、蝉のジージー鳴く中で聴く鰍沢というのも面白いものです。

2020/8/11 全生庵
第九次第三回 圓朝座
ごはんつぶ 爪切りの噺
馬桜 緑林門松竹
一朝 鰍澤

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