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熱に浮かされながらライティング講義【エッセイ】

咳が続く甥っ子を実家で抱いてあやしてた影響だろうか。帰宅から数日後、私が風邪をひいてしまった。38.4℃。熱があって寒気もするし、あちこち関節が痛い。寝転がることしかできない。暇である。

あまりにも暇なので普段とは違う何かをしようと思い立った。

そのような訳でこれからここで3分程度のライティング講義をします。ええ、今からです。熱に浮かされながらなのでおかしな事を言うかもしれません。でも責任は取りません。真実は貴方がご自身で見つけてください。私が今から話すことはちょっとしたコツの様なものです。

さて、英文和訳の様な調子でまくし立てたが、

まずは、Googleの検索に引っ掛かるようにSEO対策した文章と人から読んでもらえる文章はだいぶ違う。ここを押さえておいてほしい。

そして今から書くのは『人が人として読む文章』とはそもそもどういうものなのかってことだ。エッセイや小説、物語を含むものを中心にお話する。

読まれる文章というのは、『リズムが良い』且つ『映像が文字の上に浮かび上がる様な圧倒的な描写がある』、この二つを満たしている。

そして、思ったことをそのまま書くのではなく、なぜそう感じたのかを描写する。この3つ目があると小学生の作文の様な文章から抜け出せる。

では始めるね。

例えばベランダと煙草という素材があったとして、貴方は何を書きますか?どう描写しますか?

『ベランダで タバコ吸うのは ホタル族』こう書けばサラリーマン川柳の出来上がりだ。

『今日ベランダで煙草を吸いました。寒かったです。』これだと小学生の作文である。小学生で煙草を嗜む人はいないとは思うけど、ライティング能力的には小学生から一切成長していないという意味だ。

ではこうならどうだろう。
『雨にも関わらず、父が煙草をふかしにベランダへ出ていった。錆びた灰皿を手にしながら戻ってくると、いつもと変わらぬ様子で「さぶい」とだけ口にした。』
ここまで文字で描くと不思議なことが起こる。読む人に想像する為の余白が生まれるのだ。

禁煙できないひょうきんな親父を想像する人もいれば、父親との間の関係性を想像する人も出てくるだろう。例えばこの二人は何となく親子関係が上手くいってないのかもと感じたりする訳だ。

あとは回収すれば良い。

『大学生の娘は綿入れを父の肩に掛けてあげると「そりゃそうよ」と笑った。父の禁煙はまだまだ先のようだ。』と繋げても良いし。

『そんな父の言葉が聴こえなかったかのように娘は立ち上がると、居間から飛び出した。』としても良い。

とにかく繋げることによって伝えたい事を表現してゆくのである。エピソードを延々と並べるのではない、表現の幅をとにかく持たせるのである。薄皮をめくるように深堀りをかけることが重要だ。

そしてさらにその先の世界がある。
表現の幅を読者と共有すること。

このフェーズまで来ると煩わしい描写表現から開放される。極力言葉少なめで省略することが可能になってくるのだ。

もし、物語を進めていった先でこのようなフレーズがあったとしたらどうだろう。

『さぶいな。父が言った。』

すると、ベランダでの喫煙シーンが読者の脳裏に残っている限り、たった11文字であなたは読者をこちらの世界に引きずり込むことができるのである。煙草という言葉もベランダという言葉も決して使われてはいないけど、そこにあるものとして読者の心に残る。

だから書き手の最後の仕事は読み手を信じることで成り立つと言っても過言ではない。

むずかしいこと書いてたら熱が出てきたな。

では皆さま、良いお年を。


#ライティング #エッセイ #note

ここのコメントを目にしてくれてるってことは最後まで読んでくれたってことですよね、きっと。 とっても嬉しいし ありがたいことだなー