娘のノートパソコン【エッセイ】
来月6歳になる娘からノートパソコンが欲しいとせがまれた。流石に年齢的に早すぎるだろうという事で「もうちょっと大きくなってからね」と定番のフレーズで逃げていたら、ダンボールを持ち出してきて勝手に工作をし始めた。
子供の頃の私にそっくりだ。親にたしなめられた程度で動きを止めるようなタマではないのである。将来が心配だ。
そして一時間後には即席のダンボールパソコンが出来上がっていた。なんだろう、このスピード感。
娘が誇らしげにパソコンを自慢してくる。
「私のパソコンだけど、パパも少しだけなら触っていいわよ。」といっぱしな台詞をはいてきた。
『何を生意気な』と思ったが、ところが現物を見るととてもそれっぽく見えたのだ。こんなダンボール紙の作り物が。これはスマホやタブレット文化の影響なのかもしれない。薄くても動くものが世の中には存在する。
それほどまでにいま我々は薄いデザインのモノを瞬時に心に受け入れてしまう。
『むしろ動くんじゃないか、これ?』とさえ思った。試しにキーボードを指で打ってみた。もちろん動かなかったが。
これでは親バカではなく、ただのバカである。
ちょっと観察してみた。
五十音表がそのままキーとして配列されている。QWERTY配列なんて娘の世界の中では存在しないのだろう。
テンキーが縦一列に並んでいる。
なかなか斬新なデザインだ。
私は娘に声をかける。「マウスも作ったんだね。よく出来てるぞ。」
娘は答えた。「マウス?これ雫(しずく)と違うの?」
驚いたことに娘はマウスのことをどうやら今まで雫(しずく)だと思っていたらしい。このカチカチするモノを勝手に『しずく』と命名していた。
自分の知らないモノを何かに見立てて名付ける。ふと、これは忘れていた心だなと思い到った。
きっとマウスと名付けた人も開発した製品がネズミっぽい形をしていたからマウスと名付けたんだろうし、なんだったら雫と見立てていたのなら『ドロップ』という名前になっていたかもしれない。そんな取り留めもないことを考えた。
ところでディスプレイの背面はどうなっているのだろう。
手にとり裏を覗いてみると、そこにはお花の絵が描かれていた。
こどもっていいな。
ここのコメントを目にしてくれてるってことは最後まで読んでくれたってことですよね、きっと。 とっても嬉しいし ありがたいことだなー