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【教育系毒親】韓国ドラマ『SKYキャッスル』と『ペントハウス』比較!!※ネタバレあり※

ナジです。

2024年7月25日よりテレ朝にてドラマ『スカイキャッスル』の放送が開始となりましたね。

こちら2018〜2019年に韓国で放送されたドラマ『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』が原作でして、韓国特有の壮絶すぎる受験戦争の描写や先の読めないスリリングな展開で人気を博しました。

私も元の韓国版をNETFLIXで鑑賞したのですが、もう、はちゃめちゃに面白いです。
前半はコメディタッチに展開しつつ、各登場人物の思惑が交錯し、状況が転げ落ちるように悪化しながら、次第にサスペンスへと移行。
物語は主に4つの家族をメインにして各家庭の事情が絡み合いながら語られるのですが、ラストには各家庭の問題がそれぞれ見事に収束していってくれるので、カタルシスを感じることができます。

そんなドラマが日本版として生まれ変わったということなので、どんな仕上がりになるか非常に楽しみです(同時に、観るのがちょっと怖い気持ちもあります…。リメイク作品の宿命ですね)。

ちなみにタイトルに入っている”SKY”という語ですが、これは韓国の難関3大学を総称して言う表現です。(ソウル大、延世大、高麗大の3つらしい)
物語の中では基本的に、各家庭がソウル大合格に命がけレベルで取り組みます。
リメイク版の邦題は『スカイキャッスル』とカタカナ表記に変更するのみとなっていますが、当然物語の舞台も日本になるので、もともと”スカイ”にそういった意味があることはわかりにくくなりますね。

数年前大流行したウェブ漫画発の韓ドラ『梨泰院(イテウォン)クラス』は、日本リメイクの際に『六本木クラス』というタイトルに変更されていました。
語感はさておき、梨泰院という街の特性に近い六本木に置き換えることで、作品の舞台の雰囲気をイメージしやすくなっていたと思います。

それに倣ってSKYを無理やり日本版に置き換えるなら…『旧帝大キャッスル』とかですか?……ダサすぎますね。七大学でなんか多すぎるし。



さて、前置きが随分長くなりましたが、今回書きたいテーマは、こんなことです。

『SKYキャッスル』と並び称される韓国ドラマ『ペントハウス』と比較して、それぞれのテーマを掘り下げよう


みなさん、『ペントハウス』という作品をご存知ですか?
2020〜2021年の韓国ドラマで、なんでもありのカオスな展開が話題となり、こちらも異次元の人気を獲得しています。

とにかく話が二転三転どころか二十転三十転しまくり&細かいことは気にしない大胆な展開で再生が止まらず、何晩も夜ふかししました。

『SKYキャッスル』と『ペントハウス』おのおの持ち味がありそれぞれに面白いのですが、ネットでレビューをみると、けっこうお互いに引き合いに出されて感想が述べられているみたいなんですよね。

言われてみれば確かに、どちらも「子どもの受験に全力すぎるお金持ち家庭の毒親」がテーマの1つとなっているので、お互いに彷彿とさせるのかもしれません。その一方でその切り口や作風はまったく異なるため、SKYキャッスル派とペントハウス派で好みが分かれるのもよくわかりますね。

まずはネタバレにならない程度に、いくつかの要素を比較してみましょう。

ソウル大・医学科合格を巡って争うSKYキャッスル
ソウル大・声楽科合格を巡って争うペントハウス

機微を描きじっくりと人間ドラマを魅せてくれる、リアル路線のSKYキャッスル
展開のクレイジーさで最大限にエンタメをしてくれる、”ある意味”ポップなペントハウス

最終的には、登場人物全員に愛おしさを感じさせてくれるSKYキャッスル
最終的にも、登場人物全員がアホほど狂っていたなとドン引きさせられるペントハウス

目力がすごすぎるハン・ソジン
目力がすごすぎるチョン・ソジン


とまあこんな感じでしょうか。
おおまかな設定は似た部分もありますが、風味としてはかなり対照的だった印象です。

さてこの先は、それぞれの物語の根幹に流れる哲学みたいなものに触れようと思います。


※※※ここから両作品のネタバレあり※※※


まず大きな違いとして、「親子関係の描き方」にあったと思います。

SKYキャッスルでは、「親の在り方が子どもに如実に反映される」ことが強調されています。
様々なできごとを通して段々と親たちの成長が見られるのですが、それと共鳴するかのように、子どもたちの価値観も変化します。
特に、ハン・ソジン一家ではその様が如実に現れたと思います。
クライマックスでの娘・イェソの決断には涙させられましたね。
子は親の鏡。親が成長すれば子も成長する、ということです。

一方『ペントハウス』のほうでは、親の在り方と子の生き様の連動性はさほど強調されていないように思いました。
むしろ、とんでもない親のもとに生まれたことで途中グレまくりはするものの、子は子自身で落とし前をつけてひとりの人間として未来を切り開いていく。そんな子どもの個の強さが見て取れます。

そして何より、物語のテーマ性が全く異なっていました。

SKYキャッスルは、人間愛といいますか、人間讃歌みたいなものが表現しているように思えました。
取り返しのつかないことをしてしまっても、しっかりとその絶望と向き合い、自身の在り方を顧みて改心することで別の未来を切り開くことができる。過ちをなかったことにはできないが、それでも幸せを目指す資格まで永久に失うわけではない。
そういったことが丁寧に描かれていた印象です。

一見、お受験バトルものに見えるドラマなだけに、背景に横たわるメッセージ性に私はやられました。
日本のリメイク版ではその要素がどこまで汲まれた脚本になっているか、ここが個人的に一番気になっているところです。

『SKYキャッスル』が”再生の物語”とするならば、『ペントハウス』は”因果応報の物語”と言えます。

シーズン2のラストで大人たちが軒並み懲役刑に処せられますが、チュ・ダンテやチョン・ソジン、ハ・ユンチョルはまっとうにその処罰を受けず、買収やら何やらでさっさと刑務所から出てきてしまいます。
オ・ユニは、シム・スリョンの計らいにより、殺人罪として本来受けるべき刑期よりも随分短い期間で出てくることになりました。
こうして、犯した罪に見合った罰を受けなかった者たちは、その後の物語で壮絶な最期を迎えます。

またシム・スリョンとローガン・リーはチュ・ダンテらに復讐をする立場ですが、手段はまったく選びません。正義の鉄槌を下しているように見えて、その内容はひどいものです。犯罪しまくりですし、彼女らの行動が本当の意味で子どもたちのためになっているかは甚だ疑問です。
そして、この二人も最終的には死を迎えることになります。

人は、過ちを犯したのであれば、それに見合った罰を受けなければならないということです。それがたとえ正義のためであっても。
この哲学が徹底されたことで、ただのマクチャンドラマに留まらない魅力ある脚本に仕上がったのだと思います。


みなさんはどちらの作品がより好みでしたか?

個人的には『SKYキャッスル』のほうがより好きです。人間愛を描くために各キャラの掘り下げに力が入っていたかと思います。また、コメディ要素は皮肉っぽかったりシュールだったりと、私好みでした。

『ペントハウス』は展開がかなり大味で時々置いてかれてしまう部分もあったとは思いますが(特に注射で体内に埋め込むGPSみたいなやつ)、やはり毎話引きが強かったですし、何よりチュ・ダンテのヴィランっぷりが最高に楽しめますね。

ここからはまったくの余談ですが、大学受験を切り口の一つとした韓国ドラマでは、『イルタ・スキャンダル‐恋は特訓コースで‐』という作品もけっこう面白かったです。
基本恋愛ものなので上記2作品とはまったく異なる内容ですが、もっと気軽なストーリーを楽しみたい方におすすめです。

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