見出し画像

【共通テスト対策】 「情報関係基礎」と「試作問題」を比べてみた

こんにちは!ライフイズテックのサービス開発部でカリキュラム制作を担当しているないとうさおりです。

今回は、2025年度から大学入学共通テストで出題される「情報Ⅰ」の入試対策という文脈で、自分なりに整理したかったことを記事にしてみました。

「情報関係基礎」って何?

突然ですが、皆様ご存知ですか? 情報関係基礎
(知ってるよという方は読み飛ばしてください!)

情報関係基礎は、大学入学共通テストおよびその前身であるセンター試験の出題科目の一つです。
工業や商業などの専門教科を履修した受験生を主な対象として、数学②の枠の中で実施されています。

2023年度の受験者数は416名と決して大きい数ではないものの、情報教育界隈ではとても注目されています。

背景には、現行の学習指導要領で情報Ⅰが必履修科目となったこと、そして2025年度から情報Ⅰが共通テストの出題科目となることがあります。

当然ながら情報Ⅰの共通テストの過去問はどこにも存在しない中で、情報関係基礎は情報分野の出題パターンなどを知ることができる貴重な教材となっています。

共通テストの過去3年分の問題は、大学入試センターのWebサイトで公開されていますが、情報関係基礎については、なんと、情報処理学会のWebサイト1997〜2023年度のアーカイブが公開されています!
ありがたい限り。

また、各社から発行されている情報Ⅰの入試対策問題集の中にも、情報関係基礎の過去問を出題・解説しているものが複数ありますね。

ただし、前述したとおり情報関係基礎は情報Ⅰのカリキュラムに沿ったものではないので、その点については注意が必要です。

以下では、
・情報関係基礎と情報Ⅰの共通テストにはどんな違いがあるのか
・共通テスト対策に活用する際のポイント

を整理してみたいと思います!


「情報関係基礎」と「試作問題」を比べてみた

ここでは、2023年度「情報関係基礎」本試験の問題と、情報Ⅰの共通テストに向けて大学入試センターが公開している「試作問題『情報Ⅰ』」を主に比較しています。


出題範囲

【情報関係基礎】
専門教育を主とする「農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報及び福祉」に設定されている情報に関する基礎科目から出題
(「令和5年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト出題教科・科目の出題方法等及び問題作成方針」より)

【試作問題】
学習指導要領に示された「情報Ⅰ」の内容から出題
※ 具体的には、以下の4つの分野から満遍なく出題されています。
1. 情報社会の問題解決
2. コミュニケーションと情報デザイン
3. コンピュータとプログラミング
4. 情報通信ネットワークとデータの活用


試験時間と配点

いずれも試験時間は60分、100点満点


問題構成

【情報関係基礎】
第1問(30点)… 情報と情報技術の基礎(小問・中問)
第2問(35点)… 情報技術に必要な「ものの考え方」
第3問*(35点)… アルゴリズムとプログラミング
第4問*(35点)… 表計算ソフトウェアを利用した問題解決
※ 第3問と第4問のいずれか1問を選択

【試作問題】
第1問(20点)… 情報社会と人との関わりや情報技術の考察(小問) 
第2問(30点)… 情報や情報技術を活用した探究的な活動や問題解決
第3問(25点)… アルゴリズムとプログラミング
第4問(25点)… データの活用と分析
※ 全問必答


題材や場面設定の傾向

【情報関係基礎】
日常的な事象や、設問中でルールが説明されるゲーム、架空のストーリーなど、様々な設定の問題が出題されている

【試作問題】
⽇常的な事象や社会的な事象を扱った問題が重点的に出題されている

※ いずれも探究的な活動や問題解決のプロセスに沿った出題が意識されている


問題の傾向

【情報関係基礎】
第1問の半分程度は、基礎的な知識を問う問題や、読解要素を含まない計算問題になっている

【試作問題】
直接的に知識を問う問題や、読解要素を含まない計算問題は出題されていない


プログラミング問題の表記

【情報関係基礎】
共通テスト手順記述標準言語 (DNCL)

【試作問題】
共通テスト用プログラム表記
「令和7年度大学入学共通テスト 試作問題「情報」の概要」に例示あり)

※ いずれも、受験者が初見で理解できるように、日本語で表記されている
制御構造の表し方などに違いがあり、試作問題で用いられている「共通テスト用プログラム表記」の方が、Pythonなどの実際のプログラミング言語に近い表記になっている


共通テスト対策での活用ポイント

以上をふまえて、情報関係基礎の過去問を情報Ⅰの共通テスト対策として活用する際のポイントを考えてみました。

第1問:基礎知識や計算技能の確認

情報Ⅰの試作問題では、直接的に知識を問うタイプの問題は出題されていないと書きましたが、だからといって基礎的な知識や技能が重視されていないということではありません。

・学習指導要領に明記されている内容
・どの教科書でも共通して扱っている内容
・中学校までに学習した内容


これらの内容を前提知識として活用し、考察することが求められています。

情報関係基礎の第1問は、基礎的な知識や技能のポイントとなる部分の確認に活用できそうです。

その際は、できるだけ新しい年度の問題から解いていくことをおすすめします!
新しい問題ほど、情報Ⅰの学習内容と重なる部分が多いです。
例えば、「情報社会の問題解決」の分野で学ぶ知的財産権個人情報などの内容は、情報関係基礎では、2010〜2019年度の本試験では2度しか出題されていなかったのですが、2020年度以降の本試験では毎年出題されています。


第2問:論理的思考のトレーニング

情報関係基礎の中でも、特徴的な出題形式なのが第2問です。
どの専門科目を学んでいても有利・不利が生じないように工夫された形で、情報技術に必要な「ものの考え方」が問われます。

題材は「回文が大好きな小池ケイコさん」(2022年度本試験)や、「シャッフル王国の暗号」(2023年度本試験)など、クセの強い 読んでいるだけで楽しいものも多いです。

情報Ⅰの共通テストでは、全員が同じ科目を学んでいるという前提があるので、大問1つを丸々使って「考え方」そのものを問うような形式の出題がされる可能性は低そうです。

一方で、設問の中で示されたルールや仕組みを理解して適用する力は情報Ⅰの共通テストでも重要で、シミュレーションやプログラミングなどの問題を解く上で必要になってきます。

情報関係基礎の第2問は、できれば受験直前ではなく、比較的余裕のある時期にチャレンジして、論理的思考を鍛えるトレーニングとして活用することをおすすめしたいです。

また、情報関係基礎の第2問の中で登場するルールや仕組みは、すべてが題材独自のものというわけではなく、実際の情報技術を下地にしているものも多くあります。
例えば、2023年度の本試験では、暗号文の「おまけ」という表現で、パリティチェックの仕組みに触れています。

前述した情報処理学会のWebサイトで公開されているアーカイブでは、問題作成部会が各問題の出題意図を説明した資料も公開されているので、そちらもチェックしておくと、さらに知識を広げ、深めることができそうです。


第3問:プログラミングの総仕上げ

第3問はアルゴリズムとプログラミングの問題です。

情報関係基礎では、第3問と第4問が選択問題になっている分、大問あたりの所要時間は情報Ⅰの試作問題よりも5分程度長く想定されているはずです。
均等に割ると、情報関係基礎は大問1つあたり20分、試作問題は15分ですね。

設問から読み取る情報の量、アルゴリズムの複雑さ、プログラムの長さなどを比較すると、情報Ⅰの試作問題よりも難易度はやや高めに設定されているのではないでしょうか。

前述したように、プログラムの表記方法の違いや題材の傾向の違いなどはあるものの、情報関係基礎の第3問が難なく解けるのであれば、情報Ⅰの共通テストにもほぼ対応できるのではないかと思います。

裏を返せば、アルゴリズムとプログラミングの基本的な力が身についていない状態で、いきなり情報関係基礎の第3問に取り組んでみても、まったく歯が立たないかもしれません。

順次、分岐、繰り返しという基本的な構造を理解して、プログラムで表現することを段階的に身につけていき、最後の総仕上げとして情報関係基礎の第3問にもチャレンジするのがよいのではないかと思います。


第4問:表計算をしっかり学んでいれば力試しに?

最後の第4問は、データを活用して問題解決に取り組むという点では、試作問題の第4問と重なる部分があるものの、大問全体を通して表計算ソフトウェアの利用を前提としている点で、出題傾向はかなり異なります

情報Ⅰの授業や探究活動で表計算ソフトウェアの基礎をしっかり学んで活用しているのであれば、その力試しになりそうですが、共通テスト対策という文脈では、出題傾向にあわせた学習が別途必要になりそうです。

情報Ⅰの試作問題では、データ分析の流れに沿って、箱ひげ図や散布図などの図表を読み取り、考察や解釈を行う問題が多く出題されました。
本番の共通テストでは、データを収集、整理、分析、結果を表現する一連のプロセスの中で、より広く「データをどう活用するか」を問うような問題も入ってくるのではないかと考えています。

情報Ⅰの共通テストを前にして、データの活用の分野は、出題傾向にあった教材が特に足りていない状況です。

(少し話が脱線しますが、データの活用以外では、「情報デザインとコミュニケーション」や「モデル化とシミュレーション」などの学習内容も、情報関係基礎での出題は少なめです。)


最後に

情報Ⅰの共通テストが始まるまであと1年と少し。
弊社ライフイズテックでも、得意としている体験・実践的な学びを土台にしながら、共通テストにも自信をもって挑めるよう教材開発に取り組んでいます。

なんだかまとまりに欠けるまとめ記事になってしまいましたが、ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


ご案内
ライフイズテック サービス開発部では、気軽にご参加いただけるカジュアルなイベントを実施しております。

イベントの開催予定は connpass のグループ にてご案内しておりますので、興味をお持ちいただけたましたら、ぜひ、ご参加いただけると嬉しいです!






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?