見出し画像

就活の時から変わらない夢のために、これからもキャリアを積んでいく|アークレイ 桶谷真希さん

就活の頃から、「健康」と「世界」と「たくさんの人への貢献」という軸を持って活動され、それを実現できる会社に就職した今でもその気持ちを変わらず持ち続け、製品という形で達成を目指している桶谷さん。就活はなかなかうまく進まなかったこと、またそれを踏まえた今だからこそ就活生に聞いてほしいこと、医療機器メーカーでの開発職の仕事内容を含め、詳しくお話を伺いました。

桶谷 真希(バイオサイエンス研究科 博士前期課程2017.3修了)
奈良先端科学技術大学院大学では、小胞体ストレスに関する研究室に所属し、転写因子XBP1の遺伝子配列の研究に取り組む。博士前期課程修了後、アークレイ株式会社に入社。入社後は新商品部署で開発を担当。現在は部署が二度程変わり、主に欧州における薬事申請業務を行っている。

就職活動における3つの軸

就活の軸は、「健康」・「世界」・「たくさんの人に貢献」の3つを持っていました。ただ就活の軸はありましたが、今振り返ってみると、なるようにしかならないものだなと改めて思います。私自身は、就活の終盤でやっと製薬会社の品質管理に受かり、それでも迷っている時にたまたまご縁があり、アークレイを受け、内定をいただけたので入社しました。どんなに希望の会社で働きたくても、採用してもらえないと働くことはできない、でも諦めずに活動していたら最終的には自分用の道がひょっこり現れてくれると感じました。

私の場合、「健康」は医療機器で、「世界」は世界展開している所、「たくさんの人への貢献」はメーカーとして作った製品が多くの方に届く所が叶ったと思っています。M2の10月頃に内定が出ましたが、それまでに化学メーカーや製薬、化粧品等、様々な企業を受け、一次や二次選考で落ちていました。へこんだ時こそ、大学のキャリア支援室へ行き、どうするべきか相談いただいていました。、現在の会社を受けたきっかけも相談員の方と一緒に話していて、OBやOGがいる企業へ応募した方が、縁があるから行きやすいというアドバイスをいただいたことからで、本当に有難いです。他にもWebテストや面接練習等は、研究室の同期と情報を交換し合って対策していました。

面接時に思い出してほしいこと

私は本当にギリギリに内定をいただいたので、周りを見ていて面接時に「こうすれば、良かった」と思うことが2つあります。良ければこれから就活する学生には参考にしてもらいたいです。1つは面接官を凄い人だと思わないこと。私の会社では若ければ、8年目位の社員から面接官の対応をされていますが、その先輩自身もどんな風に接したら良いかなと困っていらっしゃったことがあります。そして、面接官になる社員は、その会社の人事が「この人はうちの会社らしいな、こんな人が増えたらいいな」と思って選んでいるようなので、「この子とならやっていけそうだ、働きたいな」と思ってもらえる必要はあるかもしれません。ただし、最終的には人なので、波長が合うこと、その日のコンディションで決まることも多いと思います。ですから、堂々と丁寧に対応していれば、問題はなく、無理に焦らなくて大丈夫です。2つ目は、質問への回答練習です。どんなに会社にあった方でも、面接は1回きりで、それまでです。調子が悪い日でも、限られた時間で自分を最大限伝えられるように練習ください。私の友人は、分厚い面接の質問集を購入し、パッと開いたページの質問にすぐ答える練習をしていて、良いなと思いました。やることをやれば、あとはやっぱり運なので、当日は気にせず臨んでほしいです。

会社選びのポイントと内定後にも勧めたいこと

入社する会社が決まれば、おめでとうと一息つきたくなりますが、落ち着いて最終決定してください。OBOG訪問や内定者懇談で社員が正直に話すとも限らないですし、転職サイトの口コミを確認したり、必要であれば、会社前で出入りしている社員の雰囲気を見て確認したりと、自身の目で見たことで判断するのも良いかもしれません。また、どうしても仕事や会社が合わないと思えば転職の道もあります。私の周りでは、同業界や同職種での転職が多いと感じます。

覚えていないくらいにバタバタしていた新人の頃

1年目から3年目までは新商品の開発、3年目の後半頃から6年目までが既存製品の改良や開発、6年目、2022年の11月から、薬事チームに異動して、今は薬事申請の対応をしています。

新人の頃は、全然覚えていないくらい、とてもバタバタしていました。新商品を出す時は、ステージを踏んで、初めにどういう製品を作るかという構想、次にどれくらい時間や費用がかかるかを考えて、製品を開発していきます。私が担当したことは最後の評価のところ。最後に作り上げたものを社内と社外で評価して、問題なく性能が出ると、販売していくという流れでしたが、正直まだまだ十分に理解できていない状態で評価して、もし問題が出た時には確認して…ということを行っていました。それでも、チームのみなさん、良くしてくださいますし、分からなかったら、すぐに教えてくれます。ただ、忙しそうな時は、後で聞いたり、自分で色々と考えたりするようには心がけていましたね。

3年経って徐々に感じてきた仕事の面白さ

1年目から3年目の頃は、会社の役に立ちたいと思うけれど、やっぱりなかなか役に立てる時期ではないと思っています。そのため、本当に始めはしんどいとしか思えなくて、その後、3年目から6年目になって、やっと「こういうことだった」と、段々と理解してきて、本当に面白みが出てきました。

弊社では尿や血液検査の機器、健康診断で使うような、検査キットから大きな装置まで開発しています。開発しようとしているものは、性能として、きちんと与えてくれるもの。例えば、同じ人を何回測ったとしても、同じ値が出る、誰が測ったとしても、同じように測れるなど、そのような性能が求められます。それを出すために、「論理的に、ここができていれば、ここもできるよね」、「性能を出すためには、どうしたらいいのか?」と、一つ一つステップを組み立てて考えていくことを先輩方に教えていただけました。学生まではバイオ系のため、よく分かっていなかった考え方だったので、同じように自分で考えられるように、3年目から異動した部署で、勉強できたことは面白かったです。

薬事チームで取り組んでいる業務内容

販売している製品を日本だけではなく、欧州、中国、アメリカにも販売したい時に、その国の法律を満たしていることが必要で、申請して通ってからでないと販売ができません。だから、その製品が国の定めた性能を満たしていることや、ユーザー様に渡った時に安全だと言えるリスクの面をしっかりと考えられているのかということを全部チェックし、開発の部署にも文書を作成していただいて、きちんと社内で管理することが現在の主な仕事になります。私の場合はヨーロッパ担当で、IVDR(欧州体外診断用医療機器規則)という法律があり、先輩方にも教えていただきながら、勉強していて、今は日本の動物も担当することになったので、それも勉強しているところです。申請が通らないということは許されないので、法律を解釈して「これが足りていないから、この評価をしていこう」というように、どう通すかを考えて進めています。

仕事において大事にしている2つのこと

大事にしていることは二つあり、一つはやっぱり明るい、朗らかな雰囲気を大切にすることで、もう一つは、上司への報告が論理的で、感情を挟まずに行うことです。

一つ目の笑顔がある雰囲気は、例えば、ブラックな研究室だとしても、そういう環境で自分を変えずに明るくすると、やっぱり周りの雰囲気も変わってきますし、味方が出てくると思うので、自分らしくいることは大切です。明るい雰囲気を作るだけで、笑顔があるだけで、仕事ができる人に見えると、最近、記事で読んだので、それは大事だなと改めて思っています。

もう一つの論理的にして感情を挟まないことは、状況にもよりますが、上司が忙しそうにしている時に、本当に今報告すべきことなのか、メールでも良いのか、後でも良いのかと考えることも大事ですし、みなさん忙しくしているので、近況であれば、簡潔にパッと報告する、問題が起これば、早めに報告するなど、自分の感情を入れずに淡々と行うべきかなと考えています。入社してすぐの人は難しいかもしれないですが、そういう報告をする時、問題が起こった時に、自分ならどう対応できるのか、例えば、「◯◯先輩に、ちょっと確認してみた方が良いですか?」、「何をするべきですか?」と提案できれば良いですね。

後輩も入ってきて感じた自分の変化

後輩が入ってくると、凄く嬉しいです。でも、2年目や3年目の時は、自分も全部見えているわけではないので、なかなか1年目の後輩に教える余裕がなく、あの時は凄くあたふたしていました。ちゃんと教えられなかったことが歯痒かったです。今であれば、5、6年目になると、2年目、3年目の後輩に対しても、焦らずに、どうしたら良いのかを教えたり、しょんぼりしていれば、何かあったのかを聞いたりできるようになったことは、少し余裕が出てきたのかもしれませんね。

会社の働きやすさとリフレッシュ方法

社員が働きやすくなるため、会社側で色々と制度を作ってくれているので、仕事がしやすくなっていると思います。例えば、今期から、定時で帰れるように会社が提案しているので、週に一度は定時で帰る日になりました。他にも、お祝い金がいただける制度もありますし、子育て支援のための整備も進めているみたいです。

もちろん仕事で疲れる時もありますが、平日に気分を変えたい時であれば、家に帰ってから、ゆっくりしますし、リフレッシュには、やっぱり自分がやりたいことをすることが良いかなと思います。京都に住んでいるので、たくさんのお寺や神社がありますし、美味しいものも揃っているので、散歩には困らないかなと。あとは、奈良先端大の頃から始めた茶道をまだ続けているので、それをして気分転換していますね。

変わらない夢と今後の課題

やっぱり会社で働き続けたいことが今の課題になっています。今は共働きが増えていますが、女性は出産や子育てがあって、仕事から離れていかないといけないことがいまだに多いと思っています。そういう時に、いかにご飯に困らないよう、自分のキャリアを積んでいくのかが大事だと考えています。

また、新入社員の頃からの夢は変わっていなくて、世界中に自分が作った製品を出していきたい、みんなが健康になってほしいので、会社の方針に沿いながら、製品をどんどん出していく手伝いができたら良いです。そこに対して、どうキャリアを積んでいくのか、自分で仕事ができる人になっていかなければ、雇用され続けてはもらえないと思います。特許の実績やTOIECの実績等が求められるので、今までやったことのないところで、どうやって頭を使って、成果を積み上げていくかが今後の課題ですね。

現役の奈良先端大生へのメッセージ

やっぱり自分が将来どうなりたいのかを早めに意識してほしいと思います。多くの社会人が言っていることですけれど、学生の間にしかできないことはあります。私の周りであれば、社会人になってから、定時後にプログラミングの講習を受けて、アプリ開発ができるようになったり、投資を学んだり、ワーキングホリデーに行ったり、毎日オンライン英会話を学んだりしている人達がいます。これらは社会人になってからでもできますが、海外へのインターンシップや留学、長期の旅行に行くために、社会人になってから、なかなか長期間休むことは難しいので、今できることはした方が良いと思います。

あとは、うまくいく時はうまくいくし、うまくいかない時はうまくいかないことが多々あります。まずは真剣にどうなりたいのかを自分で考えてみて、分からなくなったら、自分で動いて探してみて、そして、最後は流れに身を任すことも必要かなと思います。

奈良先端大を目指す学生へのメッセージ

高専や学部に行っている方はたくさん勉強していると思うので、全然問題はないと思いますが、修士の場合は2年間、博士の場合5年間、この時間は非常に短いので、そこで自分が何を勉強したいのか、自分が将来どうなりたいのかを意識しながら、学科を決めて、勉強してもらいたいと思います。

奈良先端大の研究室で印象に残っていること

研究室は修士と博士の学生を合わせて、全員で15人ほどで、留学生の方も2、3人いました。私は日本語しか喋れないので、留学生との普段のコミュニケーションは、アクションで何とかなっていましたが…。奈良先端大の仮装大会(マラソン大会)にみんなで出たり、池の周りでご飯食べたり、茶道部に入っていたので、お茶会の時に研究室のメンバーに来てもらったり、とても楽しかったですね。

奈良先端大で経験して、今も仕事で役に立っていること

研究を通じて、自分で試して結果を見て考えて、また試していくサイクルを回していたことは、入社後に担当していた開発職では当たり前のことだったので、前もって、それを学生時代に練習できたことは有り難いことでした。

※この記事に記載した内容は取材当時の情報になり、会社名や役職名等は現在と異なる場合があります。