遠洋に出た春が帰ってこない・3月の写真
ぼくは夏が好きだから冬にはたいへん塞ぎ込むけども、3月になるとすごく気分がよくなってくる。暖かさの予感がある。漁に出た父親がラッコの上着を持ってもうすぐ帰ってくるような気がする。べつにぼくの父親は漁師じゃないけど…。とにかく、ほんとうはずっとずっと身近にいてほしい存在、けれど消息不明の存在が、ついに帰ってくるのではないかという高揚した予感がある。
しかしこれがなかなか帰ってこない。帰ってくる気配だけ漂わせておいて、そのじついつまでも不在なのである。ほんとに春は来るんだろうか