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麗し秋田 神来月旅 その1 紅葉が彩り添える剛毅 角館 イイ・ヤシロ・チvol.55

行楽シーズンに観光地に行くのは、久々だった。が、旅友たちとの長年かけた物部巡りの最終目的地となっている、秋田県の唐松神社に参拝するために、降雪を避けるギリギリが11月の文化の日と判断した。

相変わらずの参拝メインの弾丸スケジュールなので、秋田での宿泊は一泊だけ。

はじめましての秋田県、空港と唐松神社の周辺でブランを組み立てると、初日は角館にお泊りがベストとなった。

枝垂れ桜の名所だから、秋の人出はどうかしら?と思ったけれど、あにはからんや、すばらしい錦秋美景の角館に出逢えた。これは僥倖だ。

頭に雪を載せている日本アルプスを見るのも初めて


大阪空港を離陸して、眼下に薄い雪化粧の日本アルプスを眺めて到着した秋田空港

そこから直ぐに車で角館、田町武家屋敷ホテルに向かう。まだ日の入りには十二分に時間があるのにもかかわらず、車窓からの景色は、関西とは異なるセピアな空気感を漂わせていた。それを口にすると、旅友はわたくしを宥めるように、「緯度の違いは大きいね」と解説してくれる。

道路両側に赤い印のついた白色ポールが珍しいと言うと、雪が積もった時の除雪車のための目印なのだとドライバーが説明下さる。

また別の旅友が「ニュースで熊の被害が聞かれますけど、多いですか?」と尋ねれば、「熊は日常茶飯事に出てくるけど、特に朝早くが多いのと、柿の木にやってくるね」とのこと。

「昔は熊は人間を見たら逃げてくれたのが、今は襲ってくるようになった」とも。

その変化は何故なのか、熊は怒っているのか、今どきは、人間を襲うほうが熊にとってメリットがあるのだろうか?などと熊の気持ちを推し量りながら、秋田の山里の風景を眺めているうちに、家並みが整う有名な川沿いの桜並木が見えてきた。

東北の町並みを目にするのも初めてで、角館は、今まで訪れたどの場所よりもシックで骨太な美しさを纏った処だと知った。 

宿も同様で、大規模でないものの、落ちついた包容感があり、エントランスの大樹の趣きも素晴らしい。

田町武家屋敷ホテル

この日の気温は驚くほど高く、最高が20℃を超えていた。チェックイン後、日が暮れるまでの散策を、と元気に出発。雪深い冬の家内業として発達したという、樺細工。その展示がある、伝承館を目指して屋敷町を歩く。

思いもしなかった鮮やかで美しい紅葉が黒板の塀に映え、立派な門構えの大規模な格式ある家々がゆったりとした道に面して並び立つ。

邸宅内の木々が驚くほど立派
色とりどりの紅葉と黒塀の組み合わせが絶妙

本当に素晴しい景観であり、これが桜の頃にはどれほど人々を惹きつけるか、容易に想像できた。

道々の土産物などのリサーチもしつつ、伝承館に到着。こちらは洋風な屋根や開口部の曲線がお洒落で、その中に伝統工芸と歴史が大切にしまわれているという玉手箱のような建築物である。


殆どの観光客は入口の紅葉した枝垂れ桜とツーショットを撮るだけで、入館はしない。おかげで、わたくし達の貸し切りとなった。

薄く削いだ樺(桜)の樹皮を何枚も張り合わせて丹念に磨く作業は根気と集中力を要するだろう。そのエネルギーの賜物が軽くて丈夫で美しい細工物に仕上がっていく。実演される職人さんの手仕事を見学して、更にその大切さを実感できた。

翌日、たまたま通りかかった↓の専門店でもじっくりと品定めできたのは、この資料館の見学で得た知識や鑑賞した作品群の予習があってこそ。見学時には予想し得なかったのだけれど、三人それぞれが満足のいくお買い物ができたのは、初日のこの体験のおかげである。

https://denshiro.jp/


それからの散策で、ふと思い浮かんだのは、「剛毅木訥仁に近し」 初めての秋田は不思議な空気感に包まれた晩秋の美しさに輝く深い文化の保管庫のようだ。

帰り道に立ち寄ったのは、当地の菓子店「くら吉」。わたくしのお目当ては、生もろこし。店頭での試食で、茶道をたしなむ旅友は「これはお抹茶と最高な組み合わせになる!」と大喜びで購入。甘酒や季節限定の栗などいくつかの種類もあり、全員が土産にと買い求めた。

あとは、とっぷりと日暮れた街をそのまま戻り、宿に到着。改めて入館すると、居心地満点な設えに居室で一息休憩ができた。夕食は、穏やかなお国言葉と優しさ溢れる給仕で呈された料理の数々。器も素材も上等な、優しい美味しさと健康的な献立が心身を喜ばせてくれる洗練されたものだった。 

秋田のおいしいと美しさが満載の前菜に思わずため息がこぼれる

過不足のない接客が心地よく、食後ひととき居室で寛いだ後に、小さな路地を通って近くの温泉に出向くのは、楽しい夜のお散歩だった。湯冷めの心配もなく、そぞろ歩きの往復になったのは、季節外れの温かさのお陰である。

温泉で温まり、ぐっすりと眠った一夜が明けてみると、前日とは打って変わったように、雷雨と竜巻注意報の朝だった。が、やはり気温は温かく、朝食を済ませて外に出れば、激しい雨足でこそあれ、紅葉は洗われて鈍色の空と黒壁を背景に一層艶やかで、落葉も絨毯のように綺羅びやかだった。人通りもないために、自分たちだけに金色の秋景をプレゼントされた心持ちになった。

息を呑む美しさとはこのこと

龍神がきれいに洗って町並みを見せてくれてるのかしらね?などとのん気に話しながら、雷雨のもと、三千坪の規模を誇る青柳家を目指す。

http://www.samuraiworld.com/

展示物の充実ぶりもさることながら、武家屋敷の中を庶民のわたくし共がくまなく見学できるのは、時代の生まれあわせが最高に良かったと思う他ない。

入場時に喫茶券も併せて購入しておいた、邸内のハイカラ館1階の喫茶室で、アップルパイと紅茶でしっかりとお茶休憩を取った。このあとは、荷物を預けたホテルに戻り、いよいよメインの神社巡りに出発することとなった.。

その2に続く。

角館のお土産に生もろこしを購入。上品な甘さが抹茶やコーヒーに良く合った

最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。


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