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【名大ニュース】「クリーン水素」で気候変動対策、多分野の専門家が集合/国際シンポジウム開催

名古屋大学未来社会創造機構は、製造過程で二酸化炭素(CO2)を排出しない「クリーン水素」の発展に向けた国際シンポジウムを3月15日に開催しました。国内、海外の研究者や企業関係者が参加し、クリーン水素を活用する上の技術的、社会的課題について報告。脱炭素社会を実現するための解決策を議論しました。

水素は燃やしてもCO2を出さず、資源として枯渇しないため、次世代エネルギーとして注目されており、すでに燃料電池や水素自動車などへ応用されています。製造時のCO2排出量を削減したものがクリーン水素と呼ばれ、排出されたCO2を回収・貯留するなどして実質のCO2排出を抑える「ブルー水素」、再生可能エネルギーを利用して作る「グリーン水素」に分類されています。

同機構・脱炭素社会創造センターの町田洋准教授は、水素の分類と評価基準について解説。現在最も普及している水素は化石燃料から作る「グレー水素」で、製造から消費の過程で多くのCO2を排出していることを説明した上で、「クリーン水素導入を進めるには、製造から使用までの各ステップにおける環境への負荷、経済的コスト、実用化までの進捗状況、という総合的な評価が必要だ」と指摘しました。

愛知工業大学の近藤元博教授は、化石燃料をできるだけ使わずクリーンなエネルギーを活用する「グリーントランスフォーメーション(GX)」を、国を挙げて推進している情勢を報告。2050年のカーボンニュートラル実現に向けた日本の水素戦略として、他のエネルギーとの価格差を埋める支援、輸送に関わる拠点整備への政策について説明し、「水素の需要が拡がっており、官民による支援や投資、新しい技術がどんどん導入されている。ここ5年が新たな勝負になる」と期待を寄せました。

パネルディスカッションでの町田洋准教授(左)

東邦ガスの小泉匡永氏は、水素とCO2から合成したメタンであるe-methane(e-メタン)を都市ガスの原料とする構想を紹介。「e-メタンをお客様が使うことで、お客様の“脱炭素”につながる。製造から消費までのサプライチェーン全体での脱炭素化を目指せる」と意義を説明しました。また、名古屋大学と連携して高効率にCO2を回収し再度メタン合成につかう技術の実証実験に取り組む意向を示しました。

同機構は、様々な研究分野の知を集めてカーボンニュートラルを達成するため、2022年4月に脱炭素社会創造センターを設立。センターには工学、生物学、宇宙科学など広い分野の専門家が参加し、地域再生や未来の環境に適応するような持続可能社会の構築を目指しています。すでに、CO2の回収、未利用熱の輸送、再生可能エネルギーの地域受容などの研究が進められています。

進行役を務めた脱炭素社会創造センター長の則永 行庸教授

本シンポジウムは、日本学術振興会 学術知共創プログラム「重層的アクターの協調を生み出す気候変動ガバナンスの構築-低炭素水素事業に着目して」(代表:名古屋大学大学院・国際開発研究科・石川知子教授)と連携して開催。クリーン水素に関する技術的な課題のほか、社会的な課題(経済、国際協力、国際法)に関しても討論されました。

同プログラムのチームメンバーで東京大学の藤原帰一客員教授は、「水素の導入については、各国が自国に有利な取り決めを作っていて、まだうまく統制されていない。専門分野や国を超えた協調によって、信頼できる制度を構築すべきだ」と強調しました。

【リンク】

・名古屋大学 未来社会創造機構
https://www.mirai.nagoya-u.ac.jp/

・国際シンポジウム「ネット・ゼロに向けたクリーン水素の技術的・社会的課題」の開催について
https://www.zcs.mirai.nagoya-u.ac.jp/news/event/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%80%8C%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%BC%E3%83%AD%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%9F%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC-2/

・名古屋大学 未来社会創造機構 脱炭素社会創造センター
https://www.zcs.mirai.nagoya-u.ac.jp/

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