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「失礼ですがお年は?」と聞かれるようになった

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これは私が1年前に書いたnote。

この頃は割と冷静でいられた。30歳になるんだな、20代前半の頃は恐れていたけれど自分の中では大きな変化はないだろうと思っていた。

しかし、世間の目はそういうわけにはいかなかった。

大学卒業後1~2年で訪れた第一次結婚ラッシュはお祭り気分だった。友人たちの結婚の報告を「おめでとー!」と素直に祝福できた。28歳前後で訪れた第二次結婚出産ラッシュは未婚の友人たちと「わー、残っちゃったねえ。」なんてお酒を乾杯したものだ。

アラサー未婚の男女がそれまでに全く恋愛経験がないかと言われるとそうではなくて、それでも結婚までたどり着く関係性を構築できなかった自分はまるで欠陥品であるかのような気がしてきた。

28歳で当時付き合っていた彼とお別れをして、29歳でお見合いをした。

母親から「〇〇ちゃんのお母さんからお見合いの話が来ています」というLINEを見た瞬間にくらくらとめまいがした。自分の好きなように生きてくれればいいと言いつつ、両親は名古屋で一人暮らしで未婚歴を更新する娘が心配なのだ。6歳上の長姉が30歳で結婚、数年後に妊娠報告があったとき母は泣いて喜んでいたなあと思い出す。

大多数の人が通る道からそれている娘。せめて結婚をして落ち着いてほしいという気持ちが母にはあるのだろう。

お見合いの話が来て「ついにこの日が来たか」と焦った私は友人に相談「いいじゃん」「私はお見合いしたことがあるよ」と案外肯定的だったので、そんなものかとお見合いを受けることにした。

ただし、心のどこかで私はこのお見合いを受けたら結婚を断れないんじゃないかという恐れがあった。「ガッチガチのお見合いならしたくない。2人で会って話をする程度ならいいよ」と条件付きで私はお見合いを受け入れた。

結論から言うと私は30歳の今も結婚はしていない。

お見合い相手は本当に結婚をしたいと考えている人だった。そんな結婚に対して真剣な人の相手が私でいいのだろうかと怖くなって「お断りでお願いします。お見合いは二度としません!」と母にLINEをした。

お見合いは二度としないと伝えていたが、その後も母からは数回お見合いの話がLINEで流れて来た。お見合いの話が来るうちが女性として花だろうか?今、ここで決めておかないとあとで後悔するんじゃないかしら?そんな不安が押し寄せてくる日は夫婦仲の良い結婚生活を送っている人に話を聞いてもらうのだった。

そして、変に焦らなくていいからと慰めてもらうのだった。

30歳のプレッシャーがここまで大きいなんて思いもしなかった。去年の後半は毎月結婚式の招待があった。うれしい、ご祝儀貧乏というやつだ。


「失礼ですがお年は?」

「しほさんの周りで適齢期の方がいたら婚活イベントに誘ってください。」


遠まわしに何かを伝えられているんじゃないかと深読みしてしまう。そんなふうに感じる自分がどす黒く歪んでいく気がしてなんとも言えない気持ちになることがある。

結婚というシステムを否定しているわけでも、これから一生したくないわけでもない。

むしろ、家族を作りたいと思う。

自由気ままな一人旅と違って自分一人ではどうにもできないことがあるのだ。

だから、私から話すとき以外はそっとしておいてほしいと思う。

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