見出し画像

ミモザと彼女

SNSでミモザの写真を見かけるようになった。3月。春が来る。

黄色くて賑やかでかわいいミモザ。この花を見ると彼女のことを思い出す。


彼女には友人の紹介で知り合った。自宅やマルシェで雑貨と生地、自作の服を販売している年上の女性だった。
私が病気をして手先しか動かせなかったとき、リハビリを兼ねてチクチクちまちま作っていた刺繍のふきんを、私の代わりに販売してくれた。

「知らないうちに心臓と肺に水がたまってたの。ストレスってよく無いね。個人で仕事してるとなかなか体に注意がいかないから、定期的に健康診断行ったりして気をつけないとダメだね。ほんとに死ぬかと思った。私はなんとか生き残りました。」
なんて彼女に話して、出してもらったコーヒーを飲みながら作品作りの話なんかしたんだっけ。

ひとまわりくらい年上だけど、私はあまりものづくりの友達がいないから仲良くなれるといいなぁと思った。

それからも定期的に作品を委託販売してもらって、病気療養中の私にものづくりの力をくれる存在だった。

出会ってから1年くらい経った頃だったか、
「ちょっと体調がイマイチだからしばらく仕事を休む事にした。」
と彼女が言うので、「体が大事よ。しっかり休んで!」と話したのが最後になった。

彼女は大きな病気に気づくのが遅かったらしい。友達のほとんどに病気のこと、入院や命のリミットの話はしないまま、家族との時間を大切にして逝ってしまった。


たった1年ほどのお付き合いになってしまったけど、私が何かを作っている時に迷いが出たら彼女の言葉を思い出す。
「なるべくシンプルに。」


彼女の家の前にはミモザの木があって、この時期は真っ黄色のかわいい花が玄関を鮮やかに飾る。

そちらの世界でもおしゃれしてますか? 元気でいますか? 私はあの頃よりも少しは裁縫が上達してると思います。いつも見守ってくれてありがとう。


今年も春がくる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?