食卓の身近な成分を難病治療に!?【14】
今回は、魚の油に含まれる“あの有名な成分”が、難病の自己免疫疾患を改善する可能性を発見した研究を紹介します。
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その成分とは、EPAです。DHAとセットで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。サプリメントの成分としてもよく取り上げられていますよね。EPAはエイコサペンタエン酸の略称で、脂肪のなかまです。悪玉コレステロールを下げる薬として使われるなど、体に有益な働きで知られています。
今回、EPAの自己免疫疾患への効果を検証したのが、名古屋大学の環境医学の研究グループです。自己免疫疾患とは、細菌やウイルスなどの外敵から自分を守るはずの免疫系が、自分自身の体を攻撃してしまう病気です。自己免疫疾患の多くは難病指定されており、根治療法が確立されていません。
全身性エリテマトーデスもその一つです。発熱、全身倦怠感などの症状と、関節、皮膚、腎臓、肺、中枢神経など全身の臓器において多彩な症状が一度に、あるいは経過とともに起こります。若い女性に多い病気で、日本には6〜10万人の患者さんがいるといわれていますが、詳しい原因や病気が進行するメカニズムはよくわかっていません。
全身性エリテマトーデスは、遺伝要因と環境要因が関与しています。ただ、食事などの環境要因については、これまであまり焦点が当てられてきませんでした。
そこで研究グループは、EPAを混ぜたエサを全身性エリテマトーデスを発症するマウスに与えました。すると、免疫の暴走の原因となる抗体の増加が抑えられるなど、病態が改善しました。このメカニズムとして、抗体をつくる細胞自体が減ることもわかりました。
EPAは食事からも摂れますし、既にコレステロールを下げる薬などとして、安全性も確認されています。全身性エリテマトーデスの新たな予防法、治療法への可能性に期待したいですね。
研究を行った菅波孝祥教授と伊藤パディジャ綾香助教からのコメントです。
「多くの免疫学者が長年に渡り自己免疫疾患の治療法開発に尽力していますが、未だ根本的な治療法が見つかっていません。今回の我々の発見によって、これまでとは異なる全く新しい観点で自己免疫疾患を理解することが可能になると考えています。今後、安全な治療法や新しい食生活の提案に繋げていきたいです。」
詳しくは、2021年6月17日の名古屋大学研究プレスリリースもご覧ください!
制作協力:堀内愛歩(名古屋大学経済学研究科修士1年)
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