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新型コロナウイルス対策に朗報!数理モデルでクラスター発生確率が計算可能に!

新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、よく耳にしてきた「クラスター」という言葉。小規模な集団感染や、それによってできた感染者の集団のことをいいます。病院や学校などでクラスターが発生し、新型コロナウイルスに集団感染してしまった…!というケースは珍しくありませんね。

今回、感染者ごとのウイルス量の個人差を考慮した上で、新型コロナウイルス感染によるクラスターの発生確率を計算できるようになりました。
数学とウイルス学、公衆衛生学による、異分野融合研究の成果になります。
研究メンバーの岩見真吾いわみしんごさん(名古屋大学大学院理学研究科理学専攻 異分野融合生物学研究室 教授)に、詳しくお伺いしました。

岩見真吾いわみしんごさん
(理学研究科理学専攻 異分野融合生物学研究室 教授)

個人差ある「ウイルス量変化」を踏まえて

「今までは、感染した人が1人いたときに、その人が何人に感染させるかという指標である基本再生産数を基準にして、どれくらいの確率でアウトブレイクが起こるかっていう計算はあったんですけども、感染した人の体の中では日々、ウイルスの量が増えたり減っていくわけです。そういう体の内部の状態を考えながらアウトブレイクの確率を計算するというのは、難しくてできなかった。それが今回、できるようになったということです」

2021年にプレスリリースされた岩見さんのグループの研究では、同じ新型コロナウイルスに感染しても、体内で早くウイルスが増えて早く減る人もいれば、早く増えてなかなか減らないという人もいる、ということが明らかになっています。

今回はこのような、ウイルス量の変化の個人差を考えながら、クラスターの発生確率を計算することができるようになった…ということですね!

なぜ、体内のウイルス状態が重要?

クラスターの発生確率について考える際に、なぜ感染者の体内のウイルス状態を考えることが必要なのでしょうか。
 
抗原検査は、コロナ禍で行った人も多いでしょう。検査では、体内のウイルス量に応じて陽性か陰性かが決まっており、また、このウイルス量の変化には個人差があります。

そのため、抗原検査を利用した感染者スクリーニングが、クラスターの発生にどう影響するかを考えるときには、体内のウイルスの状態を理解する必要があるのだそうです。

「つまり、体内のウイルス量の変化を考えながら、クラスターの発生確率が計算できれば、抗原検査が陽性になるか陰性になるかを同時に計算できます。陽性になった場合、感染者は隔離されるので、その影響を反映したクラスターの発生確率が計算できるようになる、というわけです」

毎日の抗原検査によるクラスター発生確率の低減
この研究では、基本再生産数を1.5人程度と仮定して、オミクロン株の感染者に対して毎日抗原検査を行った場合、クラスターの発生確率は32%となりました。これは、抗原検査を行わない場合と比較すると、感染の広がりを20%程度防ぐことができることがわかりました(出典:プレスリリース)。

科学的根拠に基づく感染症対策の重要な一歩に

新型コロナウイルス感染症の流行は、「ウィズコロナ」の時代へ突入しています。クラスター発生のリスクを最小限に抑える方法は、特に病院や高齢者施設などで、依然として強く求められています。

「ただどれだけ抗原検査を頑張っても、クラスターの発生確率はゼロにならないので、他の対策も一緒にやることが重要です。」

コロナ禍では、さまざまな対策が提唱されました。抗原検査だけでなく、ステイホームやマスクの着用、ワクチン接種などなど…。しかしなぜそれが必要なのか、どういう効果があるのかが、いまいちよくわからないまま行なっているということも、珍しくありません。

「検査だけでなく他の対策を一緒に行うことの重要性を説明できたら、人々は納得して協力的になってくれると思います。」

もし今回のような根拠をもとに説明があれば、納得感を持って、主体的に感染対策に協力できる気がします。こうした意味でも、科学的根拠に基づいた公衆衛生対策というものが求められているということですね!

文:小島響子こじまきょうこ(サイエンスコミュニケーター@iBLab

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