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63. 線虫さん、ちょっとそういう遺伝子ありませんか?

怖い、悲しい、仕方ない、考えたくない…
そのように思われがちな老化や死について、先日の名大カフェ「1ミリの虫に問う 仕組まれた老化と死のシナリオ」で、脳の老化を研究する野間健太郎のまけんたろう准教授(理学研究科)にお話を伺いました。

今週配信のポッドキャストでは、その内容をダイジェストでお届けしてします。


トークの中で、「死や老化は、仕方がないっていうことじゃなくて、生き物の設計図に仕組まれてるんじゃないか」と語る野間教授。それを説明する3種類の線虫を、顕微鏡をつないでライブで見せてくれました。

注)ニョロっとした動きや虫が苦手な方は、閲覧ご注意ください!

↑大人になりたての線虫です。きれいなカーブを描きながら元気に動いています。

↑大人になって11日目の線虫です。線虫の寿命は2~3週間なので、寿命にだいぶ近づいた線虫です。動きの鈍さは一目瞭然ですね。

↑設計図の一部(インスリン受容体の遺伝子)を壊した線虫の11日目です。先ほどと同じ日齢なのに、若い成虫と同じように動けています。なんと、この線虫は、1ヶ月以上(通常の2倍)も長く生きるそうです。

設計図を壊すと生体にとって悪い影響がありそうですが、むしろ長生きするとは不思議です。これは、逆に返すと、設計図の壊した部分に「2〜3週間で死になさい」という情報が含まれていると解釈できるのだそうです。

そして、話は脳の老化へ。
脳機能の老化を調べるときは、線虫がエサの匂いに引き寄せられる行動(化学走性)を見るといいます。

黒い小さな点々の一つ一つが線虫です(提供:野間健太郎准教授)

若い線虫はエサに集まるのに、たった4日でエサに反応しなくなるそうです。この脳機能の老化を起こす遺伝子を、「線虫さん、そんな遺伝子ありませんか?」と問うように探す「遺伝子スクリーニング」を取り入れ、野間准教授のグループは老化のメカニズムを理解しようとしています。

研究が進み、脳の老化の設計図を理解できれば、人の脳の老化に対しても根本的な対策がとれるようになるかもしれないとのこと。その対策とは、薬なのか、食事なのか、運動なのか、脳トレなのか……、野間准教授は食事の重要性について少し触れていましたが、今後の研究にも注目していきたいですね。

イベント全編の動画は、7月中旬にこちらで公開予定です。過去のイベント動画も公開中です。

(文:丸山恵)

◯関連リンク
Noma Worm Lab
名大ハカセの虫めがね(名大×松坂屋名古屋店 包括連携協定サイト)

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