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まるでかぐや姫⁉ 竹で育つ虫、育てる微生物 【31】

謎多き昆虫の生態…。
竹に住み、微生物から栄養をもらう昆虫がいるそうです!
今回はそんな昆虫と共に生きる微生物にクローズアップします。

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僕たち人間はいろんなものを食べるとはいえ、木を食べることはありません。ほとんどの哺乳類も木を食べません。なぜかというと、木材の大部分は、セルロースやリグニンなど分解されにくい大きな物質でできていて、僕たちの消化酵素では消化できないからです。このような成分を、分解が難しいと書いて「難分解性成分」と呼びます。

ただ、昆虫の中には木材を食べることで栄養源にするものもいます。とはいっても、自分で食べて消化しているわけではありません。微生物と共生して、栄養摂取を手助けしてもらっていると考えられています。その一方で、微生物自身が木材のどのような成分を栄養としているのかは、未知のままでした。

そこで、昆虫と微生物の共生を専門とする名古屋大学の研究グループは、「ニホンホホビロコメツキモドキ」という日本固有種の昆虫と共生する微生物について、実験を行いました。

この昆虫は、竹の中で生まれて、竹の中で育ちます。メスは、竹の空洞に卵をうみつける時に、微生物である酵母菌も植え付けます。酵母菌は、竹の成分をエサにして増殖します。孵化した幼虫は、増えた酵母菌を食べて成虫になります。

グループはまず、次の3種類の竹に着目しました。

① 酵母菌がいない竹
② 酵母菌が増殖した竹
③ 酵母菌が増殖し幼虫が育った竹

もし酵母菌が竹の難分解性成分をエサにしているなら、酵母菌がいる竹は難分解性成分が減っているはずです。

ところが実際はそうではありませんでした。イオン交換クロマトグラフィーという分析方法で詳しく調べると、どの竹も難分解性成分は減っていませんでした。

では、酵母菌は何をエサにしているのでしょうか? 

データからは意外な事実が見えてきました。グルコースやフルクトースなど、ヒトでも消化できるような小さくて分解されやすい成分の量が、ぐんと減っていたのです。酵母菌は、難分解性成分をエサにできるにも関わらず、分解しやすい成分を食べて増殖し、昆虫の栄養となっていたのですね。

研究を行なった土岐和多瑠ときわたる講師からコメントをいただきました。

「野菜をうまく育てるには、畑の土の状態はとても重要です。ニホンホホビロコメツキモドキは、竹の空洞を畑にして酵母菌を育てる、まるで農業をしているユニークな昆虫です。どんな竹だと酵母菌がよく育ち、そして幼虫が大きく育つのか、今回の研究で見えてきた気がします。」

僕も昆虫と微生物が共生する関係にあることは本で読んだことがありますが、具体的な物質のやりとりに着目していることが非常に新鮮に感じました。

この研究について詳しくは、2021年10月1日発表の名古屋大学プレスリリースをご覧ください。

画像提供:土岐和多瑠講師
制作協力:遠山祥史とおやまよしふみ(理学研究科 修士1年)

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◯ 関連リンク

 ・森林保護学研究室

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