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コンクリートじゃない、コンクリーション化が地球を救う!?

5月の爽やかな気候の中、初めて名古屋大学の博物館へ足を運びました。自身が名大の学生だった頃、お恥ずかしいことに一度も足を運んだことがなく・・・🤫そんな私を温かく迎えてくださったのは、吉田英一よしだひでかずさん(名古屋大学博物館 館長/環境学研究科 教授)。

吉田英一よしだひでかずさん(名古屋大学博物館 館長/環境学研究科 教授)
名古屋大学博物館第31回特別展「球状コンクリーションの謎Ⅱ 化石生成プロセスと応用」が5/11まで開催されていました。行けなかった方、次回に乞うご期待です!!

コンクリーションとは何ぞや??という方、是非コチラをご覧ください!
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コンクリーションとは、炭酸カルシウムを主成分とした非常に緻密な「天然のコンクリート」です。その中心に生物(化石)を内包していることが最大の特徴です。

吉田先生のコメントより

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── 先生おススメのまん丸コンクリーション、重たいのですか?

持ってみてください😊

先生おススメのコンクリーション(博物館展示)を持ち上げようと必死な筆者
コンクリーションとは、炭酸カルシウムを主成分とした非常に緻密な「天然のコンクリート」です。その中心に生物(化石)を内包し、大きいものは直径最大5 mにもなる物もあるそうです。

── え😲😥。あれ、うそ!?持ち上がらない・・・

これで60 kgくらいの重さです。密度は2.7 g/㎤ですが、コンクリーションの出来方によっても組成が違うので重さが違ったりしますよ。

── こんなすごいモノが天然で出来上がるなんて驚きです😲。先生のご研究でこのコンクリーション化剤を開発されたのですか?

はい、積水化学工業(株)と共同開発を進め、液体タイプとマイクロパウダータイプを開発しました。

液体タイプ(左)とマイクロパウダータイプ(右)のコンクリーション化剤
(画像はプレスリリースより)

2剤ある液体タイプを混ぜ合わせると20分程でこんな感じのコンクリーションができます。

合成したコンクリーション(博物館展示)
とても軽く、硬いです。これ自体をコンクリートの代わりとして用いるわけではなく、
コンクリートの破断部分の「シーリング」として使うことが想定されています。

── このコンクリーション化剤はどのような場面で応用化できるのでしょうか?

放射性廃棄物や二酸化炭素などの「地下」への隔離に、このコンクリーション化剤はとても重要だと考えています。

廃棄物処分や二酸化炭素の貯蓄、トンネル、石油開発の井戸、などの地下での応用が可能です。
(博物館展示パネルより)

これらの隔離場所はコンクリートで作られますが、コンクリートって100年も経たずに朽ちてしまうんですよ。よく例えられるのは、軍艦島です。あと、地震での破断。地下にモノを入れた後に壊れてしまったら、どうするのか?今のところ、そのシーリング材も実はセメントしかないのです。

セメントはコンクリートの原料。石灰石などを焼成し、細かく粉砕して粉状にしたものをセメント、そしてコンクリートはセメントに砂・砂利・水を加えて混ぜてドロドロにして、それを固めたもののことです。

吉田先生のコメントより

──なるほど。 セメントでシーリングしてもまた100年経たずに朽ちてしまいますね・・・シーリング材って破断した箇所に後から注入するのですか?

コンクリートにパウダータイプを混ぜておけば、コンクリートが分解される際に発生する炭酸イオンやカルシウムイオンとコンクリーション化剤が反応してシーリングし補修してくれるのです。理論的には半永久的にシーリング効果が維持されます。

── 破断したら何回でも効果が維持されるのですか?

何回でも大丈夫。確かに日本は地震が多いですからね😁。
今回、実際に地下地盤・トンネルで地下水が湧出する亀裂を対象にコンクリーション化の実証実験を行い、その結果を数値化しました。

5月8日に吉田さんが世話人となり「第一回コンクリーション化勉強会」が名古屋大学にて開催されました。企業含め90人程の参加者が集い、コンクリーションについての最新の研究成果が共有されました。質疑応答では多くの参加者から質問が飛びかい、とても活発な勉強会でした。

──実際の結果と、理論値が一致したのですね。

そうなのです。これ、言葉で言うとすごく簡単なのですが・・・論文書くのすごく大変だったのですよ。定量的に示すことが本当に大変で、最終的には、当初論文を投稿した時の倍の量の文字数になっちゃって・・・投稿してからアクセプトされるまで1年以上かかりました。 

── それだけご苦労されて産み出された論文なのですね。心して拝読します😊。このシーリング材が応用されれば、二酸化炭素の地下貯蔵が可能となる日も近いのでは?

できるかもね。ネットゼロって聞いたことありますか?温室効果ガスの排出量を世界的にこれ以上増やさないようにしていく戦略です。コンクリーション化によるシーリング手法は、環境を守る為にもとても重要な働きをすると考えています。

── コンクリーション化の技術は環境問題も解決できる可能性を秘めているのですね。

そうそう。石灰からセメントの材料を作るだけでも二酸化炭素が出てしまう。石油も有機物を分解してエネルギーを取る時に二酸化炭素が出てしまう。すべての人間活動は二酸化炭素を生み出し、地球にとってマイナスになってしまうので、ネットゼロを続けていくよう、がんばる。そうすれば1万年後の地球にも人がちゃんと住める・・・かもしれないね。

── コンクリーションがネットゼロにも貢献できるとは、まさしく自然に学ぶモノつくり、ですね。数多くの場所でコンクリーション化技術が光り、1万年後の地球の救世主になる日は遠くないように思いました。吉田さん、ありがとうございました。

インタビュー・文:坪井知恵


◯関連リンク

  • プレスリリース「地震後の地下岩盤亀裂の急速シーリングに成功!(世界初)~化石ができる仕組み応用、放射性廃棄物やCO2の地下貯留も可能に~」


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