お家でかぶるだけ!新たなうつ病治療装置を開発中
4月になりました。新生活が始まり、新しい場所や新しい人間関係でココロも少し疲れが出てきている方も多いのでは・・・
今回は、うつ病の治療に新しい可能性を見出した稲田俊也さん(医学系研究科 特任教授)、立花昌子さん(医学系研究科 病院助教)、伊藤美佳子さん(医学系研究科 講師)に最新の研究成果を伺いました。
稲田さんらが開発したのは・・・地磁気よりも弱い1~8 Hz で変動するわずか 10 μTesla(μT)の超低周波微弱パルス磁場環境(ELF-ELME)発生装置です!!
ドキドキしながら装着してみました。
── 軽いっ!!そして何も感じない・・・😮!!
(立花さん)そうなのですよ~、だから電池切れになってても気が付かなかった!って患者さんが仰るくらい、何も感じないです😊
── 装着している間は、じっとしていなければならないのですか??
(立花さん)そんなことはありませんよ。装着して2時間、お料理したりご飯を食べたりなんでもできます。激しい運動などしてずり落ちなければ何をしていても大丈夫なのです。電源はこのポシェットに入れて肩からかけてもらえばOKです。
── 装着しているだけ、すごく簡単な方法ですね。患者さんの負担は劇的に減るのではないでしょうか?
(稲田さん)うつ病の重症化患者さんは、多剤の薬物治療だけでなく、電気刺激によって脳にけいれんを誘発する修正型電気けいれん療法(ECT)や磁気によって脳内をピンポイントに刺激する経頭蓋磁気刺激(TMS)の治療が行われます。しかし、ECTは入院が必要で全身麻酔下で行われるし、TMSはバシッという電気刺激の音が大きく痛みもあり、どちらも副作用がある。おまけに受けられる医療機関が限られているので、患者さんの負担がとても大きい療法です。それに比べてELF-ELMEは2時間つけているだけ。患者さんの負担が圧倒的に減ります😌
── ELF-ELMEがうつ病にどのように効果的なのですか?
(伊藤さん)細胞を用いた実験で、ELF-ELMEによってミトコンドリアが活性化することが分かりました。脳内のミトコンドリアの機能異常がうつ病に関連があることが最近分かってきていて、うつ病モデルのマウスを用いて実験をしたところ、すごく改善効果が見られたのです🙂
── この磁場は、貼って肩こりを治すアレとは異なるのですか?
(伊藤さん)はい、アレは永久磁石で結構強いですが、今回の磁場はその1000分の1くらいの強さしかありません。地磁気よりも弱いのですよ。ぐるぐるっとコイルを巻いて作りました。
── そんなに微弱な磁場がミトコンドリアを活性化できるのですね?
(伊藤さん)そのくらい弱い磁場がパルス状に当たることが重要です。人でも同様の機構が起こっていると考えていますが、ELF-ELMEがミトコンドリアの何に影響して活性化させているのか、その詳細なメカニズムを今まさに実験しているところです。
── 今回の被検者さん達はどれくらい改善されたのですか?
(稲田さん)元々4名とも職場や学校に行けない日が多かったのが、今回の治療で出席日数が増え、復職に近い程度までは回復できましたよ。
── 劇的な改善ですね😀今後の研究はどのように進めていかれるのですか?
(稲田さん)現在、シート型ELF-ELMEを作成しています。枕の下に敷くことができるので、寝ている間に治療ができます。なので、次はシート型のELF-ELMEを用いた臨床試験を行っていきます。うつ病治療の現状が変わるんじゃないかな、と思ってますよ。
── ALL名大発のやさしさ溢れる治療器具でした。注目の研究成果だけでなく手作りというココロ暖まる制作秘話まで、ありがとうございました。
インタビュー・文:坪井知恵
◯関連リンク
論文:「Asian Journal of Psychiatry」に掲載。タイトル「Extremely Low Frequency, Extremely Low Magnetic Environment for Depression: An Open-Label Trial」