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見えることが大事!イメージングで進化する先端がん治療 【43】

放射線を可視化する「放射線イメージング」という技術で、先端がん治療の効率化に挑む研究を紹介します。
理学研究科修士1年、宮田芙悠みやたふゆがお届けします。

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私の所属する研究グループでは、放射線イメージングを使って、エジプトにあるピラミッドの中を透かして見るということをテーマにしているので、とても親近感がわき、今回のトピックに選びました。

今回登場するのは、がんの放射線治療を行う装置です。放射線治療と言うと、痛みや副作用など、体へのダメージを避けられないイメージがありますよね。そこで、今新しく期待されている治療の一つがBNCT、ホウ素中性子捕捉療法です。

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BCNT(ホウ素中性子捕捉療法)装置

BNCTは、放射線の一種の中性子線を照射してがん細胞を破壊する治療法です。現在は、鼻や口、喉など頭頸部とうけいぶと呼ばれる部分のがんにのみ認められていますが、体への負担が少なく、がんの破壊力も高いため、将来的に有望視されています。

実際の治療では、中性子線を出す装置を使ってがん細胞を狙って破壊するために、あらかじめ、装置から中性子線が届く範囲と、そのエネルギーを測っておく必要があります。ですが、今の方法では、どうしても手間と時間がかかってしまいます。

そこで、名古屋大学の研究グループは、水を使って中性子線の通った跡を撮影する方法を開発しました。グループはこれまでに、放射線が水を通ると光を出すという現象を発見しています。

今回開発した方法では、まず、水に沈めたリチウムを含んだシンチレータに中性子線を照射します。シンチレータとは放射線で光る物質です。すると、そのリチウムから発生する別の放射線でシンチレータが光ります。それを、カメラで撮影し、中性子線の届く範囲を測定することに成功しました。

サムネイルの写真が、中性子線の鮮明な発光の様子です。その撮影時間はわずか0.5秒と驚くべき速さです。しかも、これまでの測定やシミュレーションの結果と良く一致し、高い精度を保てたそうです。

今回の成果が実用化され、患者さんを治療できる時間が増えたり、医療従事者の方の負担が軽くなったりするといいですね。また、医療の現場にとどまらず、さまざま分野で活用していけそうなイメージング技術だと思いました。

研究を行った山本誠一やまもとせいいち教授からコメントをいただきました。

私のやっている放射線照射で生じる発光イメージング研究では、これまでに、ほとんどすべての放射線のイメージングができていましたが、中性子は実現していませんでした。

今回、中性子のイメージングに成功し、大変うれしいです。今後、この装置を実用化し、多くの施設で使ってもらえるように研究を進めて行きたいと思っています。

詳しくは、2022年1月7日発表のプレスリリースもご覧下さい。

(画像提供:山本誠一教教授|文:宮田芙悠、丸山恵)

ベーシック線

◯関連リンク

医学系研究科 山本研究室(医療技術専攻 医用量子科学講座)

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