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名古屋大学 研究フロントライン

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ポッドキャスト番組「名古屋大学 研究フロントライン」をテキストでお届けします♪ 名古屋大学の最近の研究の話題を、週に1回、柔らかめのトーンで紹介しています。
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#生命農学研究科

樹上と地上、どっちがカエル(孵る)?

ユニークな産卵スタイルで知られるモリアオガエル。木の上に泡巣と呼ばれる白い泡をつくり、その中に卵を産みます。 「実は、地面にも同じように泡巣を作って卵を産むんですよ。天敵に狙われやすくなるのに。同じ種で二通りの行動をとるのがとても不思議です。」 そう話すのは、生来のカエル好き大学院生、市岡幸雄さん(生命農学研究科 博士後期課程3年)。 学部4年で始めたモリアオガエルの研究が、アオガエル進化の謎に迫るほど盛り上がりを見せています。インタビューを通じ、市岡さんのモリアオガエ

作物の生きるチカラを引き出すバイオスティミュラント誕生

バイオスティミュラント── 直訳すると生物刺激剤。植物や土の中の微生物を活性化し、より元気な作物を育てようとするもので、農薬ではありません。農業分野の最新テクノロジーとして、世界で注目を集めています。 「収量を上げる品種改良などが注目されがちですが、現場の一番の課題は作物の病気なんです。」 そう話すのは、植物病理学が専門の竹本 大吾さん(生命農学研究科 教授)。 ひと度病気が発生すると、農場全体が枯れてしまうケースが世界中で報告されています。農業生産のネガティブな側面を

沖縄のマンゴーを枯らす真犯人を特定

沖縄のマンゴー農園で、マンゴーの木が枯れる事態が起こっている──。一報を受け、森と生き物の関係を研究する森林保護学の専門家梶村恒さん(生命農学研究科 教授)が調査に乗り出しました。 梶村さんが特に気になったのは「木に穴が開いています」という情報。研究室に保管しているサンプルがすぐに思い浮かびました。 機械的に空けたような穴です。悪意を持った「人」のシワザなのでしょうか。ドキドキしながら真犯人特定について梶村さんに聞きました。 ── 一体全体、誰がこんな穴を…? この穴

デンキウナギで遺伝子実験!未知の生命現象を探せ

鬱蒼としたアマゾン熱帯雨林で、他の生物の遺伝子を使えるようになった魚や微生物が人知れず生まれているかも…? そんなロマンを感じさせる研究が発表されました。 デンキウナギの放電によって、ゼブラフィッシュの細胞に外からDNAが入ることを確かめたのは、飯田敦夫さん(生命農学研究科 助教)。ユニークな生物研究を生み出す、その“ぶっとんだ”着眼点に迫りました。 ── いったいどうしてこんな実験を思いついたんですか? 2020年、新幹線で京都から名古屋へ移動している34分の最中の

120年に一度の開花、結実、枯死… 森はどうなる!?

2016年から2017年にかけて、中部地方でササが一斉に花を咲かせました。実を付け、そして一斉に枯れました。古文書の記録をたどると、前回開花したのは120年前だったそうで、ニュースにもなりました。 「これは千載一遇のチャンス!」 名古屋大学・森林保護学研究室では、豊田市稲武町・野入町にある大学の森(もちろん、この森でもササが開花しました)で、詳しい調査を行いました。着目したのは、ササの種子を食べる「野ネズミ」です。 野ネズミは普段、ドングリなどの木の実を食べたり、冬を越す

79. 土壌の養分キープ力、カギは「落ち根」? それとも…?

こんにちは。経済学研究科修士2年の堀内愛歩です。 最近はだんだんと寒くなり、秋も深まってきましたね。秋といえば紅葉が挙げられますが、色づいた葉っぱは枯れて落ち葉となり、土の中にいる微生物たちに分解され、植物の養分になります。実は葉っぱだけでなく、根っこも枯れた後は落ち根と呼ばれ土に還ります。 今回は、普段見えない落ち根の研究を紹介します。 落ち根は土を肥やす? 落ち葉や落ち根などが土壌に還ると、それを微生物たちが分解して、土壌有機物が生まれます。これらは、マイナスの電

77. フグ毒って匂いがあるの?フグと毒の関係に、意外な発見

こんにちは。理学研究科修士2年、成瀬美玖です。 フグは毒を持っているという危ないイメージもありますが、私たち日本人にとって馴染み深い魚ではないでしょうか。今回は、そんなフグが持つフグ毒とよく似た物質の「匂い」に関する新発見を紹介します。 フグとフグ毒 フグが猛毒を持っているということはよく知られていますね。多くのフグはテトロドトキシンと呼ばれる、猛毒を持っています。このテトロドトキシン(tetrodotoxin, TTX)はフグが身を守るための役割だけでなく、フェロモン

61. 「入浴で脂肪が落ちる」 皮膚時計が関与

お風呂のダイエット効果というと、体温が上がって、汗をかいて、代謝がよくなるから…そういったイメージを持たれるかもしれません。でも実は… でも実は、皮膚にある体内時計が関与しているようだ…、自身の実験データからそう話すのは、生命農学研究科の小田裕昭准教授。運営する栄養生化学研究室は、名古屋大学では少ない栄養学を専門にする研究室で、時間栄養学などを専門に研究を行っています。 今回の実験では、脂質が多めのエサを食べて太ったラットを、1日10分、 10日間連続で入浴させました。湯

55. 朝食論争最前線 ―食べるべきか、抜くべきか―

第55回目の今回は、朝食を食べる意義について、体内時計の観点から切り込んだ研究を紹介します。理学部4年、髙山楓菜⟪たかやまふうな⟫がお送りします。 朝食、食べていますか?ダイエットや食欲がないという理由で朝食を食べない方もいらっしゃるかもしれません。私は朝食を食べるようにしていますが、どうしても時間がない時などは食べずに出かけてしまうこともあります。 そもそも、朝食は食べる方がいいのでしょうか?食べない方がいいのでしょうか? これについては長年の論争になっています。一般

53. 美味しいだけじゃない!サツマイモの強さの秘密

今回は、サツマイモが痩せた土でも育つ強さの秘密に迫る研究を紹介します。経済学研究科修士2年の堀内愛歩です。 みなさん、サツマイモは好きですか?小さい頃に芋掘りや焼き芋をしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?天ぷらやけんちん汁、大学芋にスイートポテト…。サツマイモ料理には人気メニューも多いですね。 サツマイモは、江戸時代の飢饉や戦中戦後の食糧難の時代に、痩せた土地でも育つ「救荒作物」として広く栽培されてきました。しかし、なぜサツマイモは痩せた土地でも育つのか、

あいちの人と大地が醸すお酒「なごみ桜」

桜の時季にできあがる日本酒「なごみ桜」。 名古屋大学で育てた酒米「若水」を、名大の桜からとった「名大さくら酵母」で、愛知の酒造メーカーが名大生と仕込んだ、ほのかに桜香る甘口のお酒です。誕生から今年で11年目を迎えました。 名大研究フロントラインでは、11年目のなごみ桜づくりを、米作りから取材。関わる人々の思いや言葉を、5分の動画にまとめました。 でも、5分では伝えられなかったことも多くあります。ここでは、動画で伝えきれなかった言葉をまとめました。 水野真也さん/名古屋

51. 巧みな生存戦略、地下で情報交換!?

今回は、地下で情報交換する植物の話題です。 経済学部4年の越川光です。 普段は経済学分野を研究している私ですが、植物や動物の進化は、子どもの頃からワクワクするテーマでした。その進化の文脈にも人間や社会があると考えているからです。 今回ご紹介する研究は、地下茎でつながった植物の株同士がコミュニケーションを取ることを明らかにしました。 植物は、種で繁殖するものが多いですが、地下茎が分かれたり伸びたりすることで繁殖するものもあります。竹はよく知られた例ですね。竹のような植物は

ウイルスはなぜコウモリからやってくる? 【30】

ヒトの細胞とコウモリの細胞を、ウイルスに感染させると…。 コウモリ特有のウイルス反応、なるほど〜とうなづける結果です。 今回は、コウモリとウイルスとの関わりについての研究を紹介します。 世界で2億人を超える感染者と、450万人を超える死者を出している新型コロナウイルス感染症。コウモリが持つコロナウイルスが、野生動物を通じてヒトに感染したと考えられています。以前に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)、エボラ出血熱など、ヒトにとって致命的な

消化管から胎盤を作った!?赤ちゃんを産むサカナのユニークな胎生のしくみ 【16】

みなさんは、卵ではなく、ヒトと同じように赤ちゃんを産むサカナがいるのをご存知ですか? 今回は、そんなユニークな生態のサカナの研究をご紹介します。 ↓ 音声でもお届けしています! この研究は、「ハイランドカープ」という、メキシコ原産のサカナを用いて行われました。ハイランドカープは、私たちヒトのように、お母さんのお腹の中で赤ちゃんを育ててから出産します。 胎内の赤ちゃんは、お腹のあたりから紐のようなものが何本も出ています。これらは「栄養リボン」と呼ばれ、お母さんから栄養を受