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51. 巧みな生存戦略、地下で情報交換!?

今回は、地下で情報交換する植物の話題です。
経済学部4年の越川光です。

普段は経済学分野を研究している私ですが、植物や動物の進化は、子どもの頃からワクワクするテーマでした。その進化の文脈にも人間や社会があると考えているからです。

↓ポッドキャストもどうぞ。
学生メンバー越川&井田が、文系の視点で語ります。
今回、初の対話形式に挑戦しました。


今回ご紹介する研究は、地下茎でつながった植物の株同士がコミュニケーションを取ることを明らかにしました。

植物は、種で繁殖するものが多いですが、地下茎が分かれたり伸びたりすることで繁殖するものもあります。竹はよく知られた例ですね。竹のような植物は、周囲に地下茎を伸ばして広がっていくので、地上では無数の竹に見えても、実は地下で繋がっていて単一の個体である可能性もあります。こういった植物は、地下茎を通じて水や養分をやり取りすることが知られていますが、情報をやり取りする仕組みについては解明されていません。

そこで、名古屋大学と島根大学、新潟大学、東京大学、理化学研究所の共同研究グループは、竹のように地下茎で繋がるイネを使い、株同士の情報のやり取りについて調べました。

実験では、地下茎でつながった2つの株のうち、一方だけに栄養(窒素)を十分に与えました。すると、栄養欠乏状態のもう一方の株が「より多くの窒素を獲得せよ」と情報を発信し、栄養を与えらえた株はより多くの栄養を吸収したそうです。

ただ、その栄養はほとんど分配されず、栄養を与えられた株が大きく成長したそうです。不均一な栄養環境で、集団として生き延びるために柔軟に対応しているのですね。

研究を行った榊原均さかきばらひとし教授からのコメントです。

私は、植物が環境変化に巧みに応答して成長するしくみに興味があり、さまざまな側面から研究をしています。この研究は野生イネの写真を眺めているときに思いつきました。今回の発見は、植物が想像以上に高度な情報コミュニケーション能力を獲得していることを示した成果だと思います。私も感慨深く竹林を眺めるようになりました。

植物にはまだ解明されていない謎に満ちています。それらの解明が作物やバイオマス生産の向上に役立つので、これからも1つ1つ明らかにしていきたいと思っています。

今回は植物の不思議についてお話ししました。人間にはわからない方法でコミュニケーションを取って種を残す生存戦略。この研究は植物バイオマスへの応用などが期待されているなど、これからの人間にとって植物から学ぶことは多いなと感じました。

詳しくは、2022年2月4日発表のプレスリリースをご覧ください。

(文:越川光、丸山恵)

◯関連リンク

植物情報分子研究室(名古屋大学生命農学研究科)

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