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名古屋大学 研究フロントライン

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ポッドキャスト番組「名古屋大学 研究フロントライン」をテキストでお届けします♪ 名古屋大学の最近の研究の話題を、週に1回、柔らかめのトーンで紹介しています。
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#医学系研究科

研究者もなんとかしたい、つらい慢性疼痛

いつも体がだるく、あちこちが痛い、でも原因はわからない…。機能性身体症候群で悩む患者さんが多くいます。 効果的な治療法が確立されない中、原因を突き止め、患者さんを痛みから開放したいという研究者の挑戦は続いています。 機能性身体症候群の痛みの研究に長年取り組み、最近、原因究明への大きな一歩となる研究成果を発表した木山博資さん(医学系研究科 教授)にお話を伺いました。 ── 機能性身体症候群はどんな病気ですか? 機能性身体症候群は、臓器そのものに異常がないのに、強い疲労感

小児がんと卵巣がんの意外な共通点、研究留学で明らかに

医学の進歩で驚くほど予後が良くなった小児がんがあります。腎臓にでき、日本では年間100人が発症する「ウィルムス腫瘍」です。 「9割が治るがんってなかなかないと思います。」 このがんについて研究する宇野枢さん(医学系研究科 博士課程)は、発見が難しいにも関わらず、見つかってから治療しても予後が良いと話します。 それでも研究するのは、1割の患者さんは治療がうまくいかないから。治療がうまくいくケースといかないケースは何が違うのか、がん細胞を根気強く観察した結果見えてきたのは…

リハビリ界初、筋トレ効果をネットワーク解析

適度な筋力トレ―ニングが、健康づくりや老化予防にいいことはよく知られています。でも、なぜ筋トレっていいんでしょう?筋トレしている筋肉としていない筋肉では何が違うのでしょうか!? 「筋力トレーニングをすると、骨格筋に脂肪がたまりにくくなります。」 教えてくれたのは、飯島弘貴さん。理学療法士としてリハビリテーションの現場を経験したのち、リハビリテーション医学の研究者に転身。情報科学を駆使した新しい切り口の研究を展開しています。 「骨格筋に脂肪がたまると、筋力が落ちるだけでな

神経の病気「球脊髄性筋萎縮症(SBMA)」に、運動はよいか?

難病に指定されている球脊髄性筋萎縮症。SBMA(Spinal and Bulbar Muscular Atrophy)とも呼ばれ、国内に2000〜2500人の患者さんがいるといわれています。 日本のSBMA研究をリードする名古屋大学には、全国から200名ほどの患者さんが通院しています。ただ、根治治療が確立しておらず、現状の治療に課題を抱えています。このような状況下、臨床現場で患者さんに接する医師たちが、「運動療法」という切り口で挑んでいます。 SBMAの疾患モデルマウスを

「眼トキソプラズマ症」って聞いたことなくても、他人事ではない…!?

トキソプラズマという寄生虫が体内に入ることで感染する「トキソプラズマ症」。実は、日本の成人の20〜30%が感染しているといわれています。 「トキソプラズマ症自体は、眼科で診療していると結構遭遇します。ほとんどの方が気づいていないですね。」 そう話すのは、名大附属病院で眼科医を務める山田和久さん(医学研究科 大学院生)。トキソプラズマ症の症状が目に現れる「眼トキソプラズマ症」を研究しています。 医療体制が整った日本では、眼トキソプラズマ症が重症化することは多くありません。

心臓サルコイドーシスという病気を知っていますか?

10万人に数人といわれる原因不明の難病、心臓サルコイドーシス。 「実はもっと多いんじゃないかと思っています。」 そう話すのは、森本竜太さん(医学部附属病院 循環器内科 助教)。 これまで診断されなかった患者さんが診断されるようになり、患者数は増加傾向にあるといいます。 「心臓サルコイドーシスは、糖尿病のように一生つきあっていく病気として治療します。」 治療が必要かどうかは病状によりますが、必要な場合、基本はステロイド投与です。 「ステロイドが効かない患者さんには抗

魚の食べ過ぎ注意…その理由はヒ素!?

魚を1日1回以上食べる人は、血液のヒ素の濃度が高く、高血圧のリスクが高い──。日本人を対象とする疫学研究からの発表です。 魚はなるべく食べた方がいいんじゃないの? そんなギモンが浮かびませんか…? 実はこの知見、日本屈指の大規模コホート研究「J-MICCスタディ」に参加する約2700人の調査データからわかってきた根拠ある新事実。論文発表を行った加藤昌志さん(名古屋大学大学院 医学系研究科 教授)と香川匠(医学系研究科 博士課程)さんに詳しく聞きました。 ── ヒ素って有

現場ニーズが生んだ「感染症マネジメント支援システム」、もうすぐ始動!

「感染症」は治療の敵。 術後感染や院内感染は、患者さんや医療費に大きな負担をもたらします。ただ、全ての医師が感染症の専門知識を持つわけではなく、感染症専門医もごくわずか。コロナに限らず、病院での感染症問題は深刻です。 そんな感染症対応に翻弄する医療現場のニーズを掘り起こし、生まれたのが「感染症マネジメント支援システム」。患者さんが治療に伴う感染症を起こしてしまったとき、主治医が感染症専門医にアドバイスをもらえるシステムです。5年に及ぶ開発期間を経て、もうすぐリリースの段階

糖質制限、いいの?悪いの? J-MICC研究が検証

「糖質オフ」の食べものや飲みものが世間にずいぶんと出回るようになりました。なんだか糖質は制限したほうがいいような雰囲気が漂う今日この頃ですが、短期的にはメタボに一定の効果がある低糖質ダイエット、長期的に体に良いかどうかについては専門家の間でも議論が続けられています。 そんな中、日本全国で10万人以上を対象にして病気の原因を調べている日本多施設共同コーホート研究(J-MICC研究)から、このギモンに答える注目の研究結果が発表されました。 「炭水化物を食べる量が死亡リスクと関

続・患者さんに届け!──がん光免疫治療はコレでもっとスゴくなる

光と免疫反応で相乗効果を生む「近赤外光線免疫療法」。手術、放射線、化学療法、免疫療法に次ぐ「第5のがん治療」に位置づけられ、画期的な治療法として注目されています。しかし2023年現在、治療の対象は頭や首周辺のがんに限られています。 患者さんの負担を減らして治療効果を上げたい──。 対象とならない患者さんにもこの治療を届けたい──。 名古屋大学では、より多くの患者さんにより効果的な治療を届けるべく、模索を続けてきました。 研究をリードしてきた佐藤和秀さん(医学系研究科 特

52. ゲノムのコピー数の個人差がもたらす、多様な精神症状とは?

今回は、ゲノムのコピーの個人差がもたらす多様な精神症状についての話題です。文学部4年の井田明日香です。 私がこのトピックを選んだのは、ここ数年、「うつ病」や「大人の発達障害」といった言葉をよく耳にするようになったからです。最初は自分の親戚や友人などの狭い範囲での話だと思っていたのですが、最近はテレビやネットニュースなどで特集が組まれるほどメジャーな話題となっています。今回の配信を通じ、精神疾患について少しでも理解を深めたいと思い、取り上げました。 ゲノムとは、親から子へ受

子どものADHD、夜ふかしによる過剰診断には注意 【44】

今回は、子どものADHDと睡眠についての研究をご紹介します。 経済学部4年の越川光がお届けします。 ポッドキャストでもお届けしています♪ 実は私自身、夜中に寝付けなくて、朝起きるのが辛くなることが多々あり、睡眠に関心があってこのテーマを取り上げたいと思いました! 今回のメイントピックADHDは、注意欠如多動症ともいい、不注意や多動性、衝動性が特徴です。発症率は、大人が2.5%に対し、子どもは5%で2倍です。ADHDと診断される人の20〜50%が睡眠習慣に問題があるといわ

見えることが大事!イメージングで進化する先端がん治療 【43】

放射線を可視化する「放射線イメージング」という技術で、先端がん治療の効率化に挑む研究を紹介します。 理学研究科修士1年、宮田芙悠がお届けします。 ポッドキャストでもお届けしています♪ 私の所属する研究グループでは、放射線イメージングを使って、エジプトにあるピラミッドの中を透かして見るということをテーマにしているので、とても親近感がわき、今回のトピックに選びました。 今回登場するのは、がんの放射線治療を行う装置です。放射線治療と言うと、痛みや副作用など、体へのダメージを避

腸活、抗がん剤の副作用対策にも吉 【41】

腸活の効果は、健康づくりだけにとどまりません。 食道がん治療の現場で実証されました。 今回は、腸内環境を調えることで、がん治療の副作用の軽減を目指す研究をご紹介します。 ↓ポッドキャストでもお届けしています♪ 話題の腸活、みなさんは意識されていますか? 腸活は、ざっくり言えば、食べるもので腸内環境を調えることです。おすすめの食べものでよく聞くのが、プロバイオティクスやプレバイオティクスという言葉です。プロバイオティクスは善玉菌を含む食べもの、プレバイオティクスは腸の中